患者仲間に希望もらう
「つばめの会に参加してみたら?」と両親に勧められたのは、切除手術から一カ月がすぎたころでした。
つばめの会とは、物を食べたり飲み込んだりする嚥下(えんげ)機能に障害がある患者の会で、入院先の愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)で毎月開かれていました。
当時の私は、鼻からチューブで栄養剤を入れるのが食事のスタイル。一食に二時間かかりました。声を発することもできず、「ブギーボード」という電子メモパッドで筆談していました。お昼の栄養剤をチューブで入れながら家族と一緒に会場に行きました。
舌を切除した患者さん仲間と会ったのはこれが初めて。まず驚いたのは、楽しそうにおしゃべりをされていることでした。ここまで回復するんだと感激しました。
うち一人の患者さんは「いつも常食(普通のご飯)だよ」と言います。えっ、舌がないのに、普通のご飯が食べられるの? どうやって? ブギーボードで質問すると「だって、歯があるもん」。すごい。このうえない衝撃でした。
会には、院内の摂食・嚥下障害看護の認定資格を持つ看護師や、歯科衛生士、管理栄養士、調理師も参加していました。管理栄養士からは流動食の作り方などを教えてもらいました。
嚥下障害の患者は摂取カロリー量が少なくなりがちなので、カロリーの高いオリーブオイルや生クリーム、マヨネーズを使う▽調理に手間をかけないように、缶詰やレトルト食品も活用する-などとても具体的でした。試食用のおかゆ、煮込み、汁物なども用意してありました。私は食べることができないので、両親や妹たちが代わりに味見をしました。その中で、味付けの話題になりました。
「舌がないんだから、味付けなんて必要ないのでは?」と尋ねたら、歯科衛生士の長縄弥生さんが「味はわかるよ。喉の奥でも味は感じるんだよ」。またまたびっくり。食べることが大好きな私にとって、大きな喜びでした。
