3/27 金曜午後 大正ロマンめる喫茶 46日目 | さむの御帰宅日記

さむの御帰宅日記

ネットの海の枯れ珊瑚のあぶく

 

 前日の夜、ようするに昨晩、めるBDテーマ「大正ロマン」から、自分が「大正期の文化/宗教思想」の専門家であったことを思い出した。身近な皆さんは知っていると思う。じつは、いいオジサンであるにも関わらず、ぼくは「学生」である。より精確にいえば、あと三日ほどは、博士課程の院生である。4月からは、晴れて「指導認定・単位取得満期退学」という肩書きがつく。ようするに「無職」という意味でしかない。幸か不幸か、そのまま京都の大学の非常勤講師となる。

 

 話がそれた。「大正ロマン」である。めるさんのおかげで、自分には博士論文執筆の義務があることを思い出した。だから、昨晩は、ぼんやりと大正時代に関するwikiを読みあさったり、今日、行きしなは、大正期の小説『女給』を読んだりしていた。

 

 作家・細井和喜蔵は、プロレタリア文学の人であり、『女工哀史』で有名な人である。それ以外は知らなかったが、読んでみて面白かった。現代よりも遥かに劣悪な労働/社会環境の中で、女性がキャッフェーで働くにいたる顛末を瑞々しくも生々しく描いた作品である。誇張もあるだろうが、現在に通じるところもある気がする。また、それでいて下品ではないのは、時代と作家の筆致のなせるわざかもしれない。興味があれば、以下リンクから一読されても良いだろう。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000371/card2578.html

 

 とまあ、何だか自分の仕事(義務)と関わるBDテーマなので、うきうきしながらの行きしなとなった。コロナのせいか、雨の大阪は人出も少ない。先に、古本屋に立ち寄り、買うつもりはなかったが『折口信夫全集』『京都民俗志』を購入した。

 

 

 御帰宅し、会員セットを注文。じつは、今日来た大きな目的が「ナポリタン」である。ぼくが大好きな小説に『異世界居酒屋のぶ』というものがあるが、同作品がアニメ化する前に、e-maidと統合したVillAngeで、作品のイベントがあった。小さな規模の催しだったが、とても和気あいあいとした空間で、ぼくにはそれがまるで「のぶ」のような空間だった。そして、その日、ぼくが食べ損ねたメニューこそ、ナポリタンなのである。

 

 以来、ずっと食べ損ねて来ていて、今日やっとついに「ナポリタン」を食べたのだ。だから、凄くうれしかった。またナポリタンにメロンソーダ、フルーツミルフィーユというのも、たしかに「レトロ」な印象があり、大変よかった。

 

 なお「レトロ」とは、懐古趣味という意味であるが、だいたい皆がどのあたりの時代を思い浮かべるのか、気になって聞いてみたところ、意外に「明治」が多く、また先の「万博」が多かった。日本史における大変革の後、歌うような陽気さのイメージがそこにはあるのかもしれない。明治維新の後、戦後の復興を遂げた後の社会的空気。ぼくらが、そのような時代の空気を味わうのは、何年後になるのだろうか。

 

 とまあ、そんあことを考えていたら、Jrさんが隣に来てくれたので、なんだかんだとお喋り。ゆっくりと人生の悲喜交々について話せたので、大変楽しい時間を過ごせて良かった。コロナ云々はあるし、今後、日本における爆発的感染は不可避であるが、そのようなことの前に、こうして笑える日常を確認できることは良いことだと思った。

 

 一度、雨降る外に出て、別の古本屋へ。今度は、弔辞の社会学、教養の伝統、のような本を100円で見つけ、また柳田國男論集を350円で見つけたので購入し、再度御帰宅。ホットドッグをコーラで齧っていたら、再びJrさんと相席。ぐえーちゃんや、他の常連さんの御顔もちらほら。

 

 

 主役のめるさんの鴨川チェキを手に入れた。京都の三条大橋の下で暮らしているので、場所を特定してしまった。我ながらキモいオタクである。めるさんが愛らしいのは当然ながら、かなり多めに入っていたメイドさん方もそれぞれに可愛らしかった。個人的には、ワンピース?というのだろうか。さりさん、るりかちゃん、ぐみ氏の来ていた、あの感じの服装が、大変よかった。無論、それぞれにお揃いの衣装に身を包んでおられた皆さんも、僕の中では『大正野球娘』的に変換されて、あ^~心がぴょ(ry となっていた。

 

 混雑してきたので、チェキはお任せして出立。帰りの電車混雑を避けるために、2号店に顔を出してみた。折りよく18時開始とのことである。20時頃までいて、恵美須町駅から地下鉄へ。様々なことが思い出されて胸を衝く思いがこみ上げてきて、少し泣きそうになった。

 

 ナポリタンを食べたからかも知れない。VillAngeの頃から数年がたって、ぼくも春からは肩書きだけが少し変わる。少しずつ、ちょっぴりと。ほんのり、わずかながらも前へ前へ。そういえば、鴨川の桜が咲き始めていた。この雨と温もりは、桜を散らすのではなくて、むしろつぼみを開く力になっていくのだろう。

 

 明日明後日は通常通りの仕事日である。その後は、2020年度開始。論文を書き、本を作り、次なるステップへと着実に進みたい。

 

 「大正ロマン」という時代は、江戸幕藩体制から「近代日本」を作るための大変革を成し遂げた明治のあとに、文化が大樹の枝のように分岐し繁った時期だった。約100年後の今から考えてみれば、五輪初参加、タイタニック号沈没、日活映画の登場、汽船、鉄道、ロシア革命、相対性理論、第一次大戦、スペイン風邪、アニメ、新聞、雑誌、ラジオ、都市化と格差、世界恐慌、大地震など、21世紀へと続くインフラの原型がほぼ完成しつつある時代だった。この100年で日本は何を得て、何を失ったのか。連続と切断は、問いの数だけ答えとなるだろう。

 

 近代の後と呼べるか否かは判らない。しかし、ぼくの時代が2045年までだとしたら、もう少しだけやることがあるのだろう。めるさんBDに、遠き百年前の残り香を感じて、春めく雨に傘をさし、一歩踏み出してみよう、そんな思いを得た「大正ロマンめる喫茶」だった。

 

 めるさん、誕生日、おめでとうございました!新たな一年に神様の祝福を祈ります!