先日、トマトパスタを食べました。シンプルなのに深い味わいで、口に運ぶたびに幸せな気持ちになりました。


ふと、「もしこの美味しさを音楽で表現するとしたら、どんな調になるのだろう」と考えてみました。私は作曲の才能があるわけではありませんが、こうして身近な出来事を音に置き換えてみると、少しだけ音楽が自分に近づいてくるように感じます。


そこで参考にしたのが、スクリャービンの色階表です。彼は五度圏に沿って色が変化するように、12の長調それぞれに色を割り当てました。


ハ長調は赤、
ト長調はオレンジ、
ニ長調は黄色、
イ長調は緑、
ホ長調は青、
シ長調は藍色

嬰ヘ長調は輝くような青、
嬰ハ長調は紫、
嬰ト長調はバラ色、
嬰ニ長調は銀色、
嬰イ長調はスチール色、
ヘ長調は深紅


というように、どの調にも一つの色が対応しています。これは長調を基準にした体系で、もし短調に置き換えるならば、その色に少し黒が混じったような、やや陰りのある色合いになると考えられています。


さて、私が食べたトマトパスタを思い出すと、真っ赤というより、どちらかといえばオレンジがかった明るい赤でした。太陽の光を吸い込んだような、あの熟したトマトの優しい色味です。そうすると、ハ長調の鮮やかな赤よりも、ト長調のオレンジに少し近い気もします。


スパゲッティに絡めたときの明るさを考えると、ハ長調の印象も捨てがたいとも思えてきます。そこで、ハ長調を基調にしつつ、四度の和音である「ド・ファ・ラ」を多めに使えば、少しト長調寄りの、柔らかな赤みを帯びた響きになるのではないかと想像しました。


さらに、ほうれん草も少し入っていました。あの緑色を音にするなら、スクリャービンの色階表ではイ長調が緑に対応します。ということは、途中でイ長調に転調してみるのも面白いかもしれません。赤と緑、温かさと爽やかさがところどころで混ざり合い、一皿の料理のように立体的な音になるかもしれない、と想像して楽しみました。


私は残念ながら、インスピレーションが自然に湧き上がるタイプではありません。鍵盤に手を置いたところで、急にメロディーが流れ出すわけでもありません。むしろ、何をどう形にすればいいのか分からずに手が止まってしまいます。


けれど、このように理論や色を手がかりにして考えると、音の世界に入りやすくなる気がします。芸術的センスがなくても、何かしらの道具を使えば、自分なりの音楽に近づけるのかもしれません。そんな小さな希望を感じさせてくれたのが、今回のトマトパスタでした。