バッハのインベンション第13番を“持ち歌”のように自分のレパートリーにしたいと思い、そのためにもまずはしっかりと弾けるよう、改めて練習に取り組むことにしました。
バッハといえば、やはり私の中では鈴木優人さんの存在が大きく、もし自分が鈴木優人さんになりきって演奏できたら、きっとこの曲もより魅力的で洗練されたものに仕上がるのではないか——そんな想像をして少しワクワクしました。
そこで YouTube Music で鈴木優人さんによるインベンションの演奏を探してみたのですが、残念ながら見つけられませんでした。かわりに、複数のピアニストによる演奏をいくつか聴き比べてみることにしました。
すると、テンポやアーティキュレーション、フレージングの取り方などが演奏者によって驚くほど異なり、同じ曲にもかかわらず受ける印象がまったく変わってくることに気づきました。おかげで、バッハは「こう弾くべき」という固定的な解があるわけではなく、演奏者の解釈次第でさまざまな色合いに変わる奥深い音楽なのだと改めて感じました。
つまり、いわゆる“正解”や“お手本”に縛られる必要はなく、自分が心地よいと思える演奏を目指していいのだと気づきました。そこで私は、自分の感性に素直に、自分の好きなように弾こうと決めました。
これまでバッハには、厳かで落ち着いた、どこか格式の高いイメージを持っていたのですが、今回はそのイメージにとらわれず、もっと表現豊かで生き生きとした演奏に挑戦してみたいと思っています。
まずはその第一歩として、曲全体の流れをつかむために、どの部分が盛り上がり、どの部分が静かに沈むのか、実際に弾きながら大まかな構造を確認していくところから始めようと考えています。こうして曲の骨格が見えてくれば、自分らしいインベンション第13番が少しずつ形になっていくのではないかと期待しています。
