アイドルは好きだけど、アイドルについて語ったり論じたりするのはどうも苦手だ。理由は単純。その時々でいちばん輝いている女の子には、たとえ何千、何万もの言葉を尽くしても容易にはかないっこないから。だからこそ私は、同時代のトップアイドルの魅力を的確に伝えて余りある作品を尊敬する。たとえば、能地祐子によるインタビュー集『モーニング娘。×つんく♂』(ソニーマガジンズ、2002年)がそうだし、もっとさかのぼれば、かつて「NHK特集」の枠で放送された『山口百恵 激写/篠山紀信』(1979年)もそうだった。全編が篠山紀信撮影の写真で構成されたこの番組を、10年前に再放送で見たときはぶっ飛んだものだ。
この手のアイドル・ドキュメンタリーとしては、この年明けにもNHKで、アイドルグループAKB48の昨年1年間の動きを追った「ドキュメンタリーオブAKB48~1ミリ先の未来~」が放映されている。オンエア中、Twitterのタイムラインを見ていたら、いままでAKBに興味のなかったような人が番組を見ながらツイートしていたりしてなかなか面白かった。なかでも、“AKBの良心”ともいわれる高橋みなみのリーダーぶりに感心している人が多かった気がする。
「Love Letter」「スワロウテイル」などで知られる岩井俊二が製作総指揮を、監督を岩井の弟子筋にあたる寒竹ゆりが務めた同番組に続き(ちなみに岩井はこれより前、AKBの「桜の栞」のプロモーションビデオを手がけている)、1月22日には、同じスタッフ陣による映画『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 「10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?」』も封切られ、目下公開中である。
もともとテレビ版は、この映画を撮るために回した1000本以上ものテープをもとにつくられたものだという。それなら、映画版はテレビ版の内容をふくらませたものなのだろう……と思って観に行ったら、構成も、使われている映像もまったくと言っていいほど違った。テレビ版が1年間のできごとをあれもこれもととりあげていたのに対し、映画版では“1年間のドキュメント”の部分はあくまで背景で、それよりもAKBというグループの本質を掘り下げることに重点が置かれている。
また、テレビ版ではAKBのメンバーによるナレーションがついていたけれど、映画版では一切なかった。字幕による説明も少なめなので、熱心なファン以外には初めはちょっととっつきにくいかもしれない。
たとえば、前半ではやたらとステージ上でメンバーが泣いているのだが、私も当初その意味がよくわからなかった。それも観ているうちにだんだん、チーム再編(AKBは3つのチームに分かれて、秋葉原にある劇場での公演を行なっている)で大幅にメンバーの入れ替えが実施されるため、旧チームでの公演が終わりを迎えたからだということがわかってくる。
ここで、「グループが解散するのでもメンバーが卒業するわけでもないのに、みんな泣きすぎではないか?」などと思ってはいけない。AKBの各チームは長い時間をかけて体制を整え、その間に結束を固めていった。それゆえ、チームが再編されるというのは、彼女たちにとって大事件なのである。そのことは、旧チームK(現在はチームB)所属の河西智美の証言などからよく理解できた。
この映画では、河西をはじめ主要メンバーに密着取材した映像が随時挿入される。そのなかで、指原莉乃は久々に訪れた郷里・大分の祖父母の家にて、AKBでの自分の写真をたくさん見つけて涙ぐみ、柏木由紀はやはり郷里の鹿児島で、地元の親友たちと一緒にお好み焼きを食べながら談笑する。宮澤佐江は、落ち葉が積もった公園を黒いマフラーを巻いて颯爽と歩き、渡辺麻友はイラストをカメラの前でさらりと描いてみせる。北原里英は古本屋で本を物色し、峯岸みなみはキャラづくりのためメガネをかけることを思いついたと語る。さらに、板野友美は大好きな焼肉を食べながら一通り話をしたあと、突然われに返ったように「何、語ってるんだろ」と照れ、小嶋陽菜は、陽の光があふれる部屋でほんわかと語る……というぐあいに、メンバーたちそれぞれの横顔が浮かび上がる。
面白いのは、ほぼ全員が、AKBに入った当初はどちらかといえば引っ込み思案で、自分から進んで前に出ていくことが苦手だったと語っていること(プロデューサーの秋元康はあえてそういう子たちばかりを選んだのではないかとすら思えてくる)。その点では、昨年の「総選挙」におけるトップ3である大島優子、前田敦子、篠田麻里子も同じだ。が、後半に登場するこの3人へのインタビューは、それまでに出てきたメンバーとはちょっと空気が違った。AKBに入ったときから常に「卒業」を意識していると語る大島をはじめ、グループのなかでも一歩前に進んでいるように感じられた。
そんな大島・前田・篠田をして、「あの人には絶対かなわない」「尊敬する」と言わしめるのが高橋みなみである。
インタビューの席に高橋は、トレードマークである大きなリボンに、AKBのときとほぼそのままの服装で現れる。驚くべきことにリボンも含めすべて私服だという(さすがにリボンは最近では街を歩くときにはつけないと言っていたが)。
その衣装からして、公私関係なく常にAKBであり続けようというポリシーを感じさせる高橋は、チームAのキャプテンというだけでなく、いまやAKB全体を引っ張るグループのシンボル的存在だ。映画のなかでもそれを裏づけるように、メンバーを叱咤激励したかと思えば、メンバーから抱きつかれるなど慕われる様子が次々と映し出される。それまで、各メンバーによって語られてきた、AKB48という“場所”が彼女たちにとってかけがえのない存在であるということが、最後に高橋とメンバーたちの関係を通じてあらためて強調されたところで、映画はエンディングを迎える。
どんなに練習がハードであろうと、そんな苦労をはるかに上回る喜びや楽しさがAKBのメンバーにはあるということが、「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued」からはこれでもかとばかりに伝わってくる。観終わったあと私が、メンバーを恋人にしたいとかプロデュースしたいとかではなく、自分もAKBのメンバーになりたい! と思ってしまったのもしかたのないことであった。
(エキサイトレビューより)
