→*@ニフティニュースより←*


自分のために笑い、食らう。仲間のために怒り、戦う。
戦い終わったら、また笑って食らう。
まっすぐに「侠気」を描き続けるモンスターコミックの正体を、作者が語る。


どーん!

と、285万部。


12月4日に発売された、漫画『ONE PIECE(ワンピース)』56巻。漫画単行本としては史上最多という(初版)発行部数を記録した。


1997年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まってから12年、累計発行部数1億7600万部はあの『ドラゴンボール』を超え、ジャンプ連載中の漫画では『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に次ぐ長期連載だ。


「まだストーリー的には、半分くらいなんです」


と語るのは、作者の尾田栄一郎さんである。


仲間全員に見せ場作る



海賊が活躍する、架空の時代の話だ。麦わら帽子にすそのよれた半ズボン。海賊というよりガキ大将そのものの少年、ルフィが主人公。彼が率いる「麦わらの一味」が伝説の宝「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」をめざし、海賊が集まる「偉大なる航路(グランドライン)」を冒険する。


巻を追うごとに増えていく仲間は現在、9人。ルフィだけでなく、仲間一人ひとりにエピソードや見せ場を作る。ストーリーは長くなるが、ファンの心は離れない。なぜなら、いつだってワンピースは「熱い」から。


SMAPの木村拓哉に、水泳金メダリストの北島康介、元モー娘。の矢口真里……。ファンを公言する著名人が、男女を問わず多い。子どもから大人まで楽しめる「国民的コミック」、それが、ワンピース。そんな見立てに異を唱えるのは、作者である尾田さん本人だ。ワンピースは少年のもの。連載当初からそう考え、描きつづけてきた。


「いろんな人が読んでくれているというのは、想像を超えていますね」

大人になったら、青年漫画や小説を読むのが当たり前と思う。それでも幅広い年齢層が「ワンピース」を読むのは、「少年心は老若男女が持っていますから。みんな、懐かしくなるんじゃないでしょうか」


なぜ、海賊なのか。

「冒険漫画を描きたかったんです。冒険を描ける、イコール海賊。僕の中では直結してます」

海賊アニメ「小さなバイキングビッケ」が、海賊好きの原点だという。


ルフィは「肉食系男子」


海賊=悪、だから少年漫画にふさわしくない。そんな考えは、まったくなかった。主人公のルフィは、盗みや暴力といった海賊稼業の負の側面を「どーん」(作中で多用される擬音語)と吹き飛ばす「子どもど真ん中」なキャラクター。身勝手で大食らい、やりたいことは、絶対にやる。


「やりたくてもやれないことがたくさんある子どもたちは、ルフィを見てすっきりするんだと思うんです」(尾田さん)

少年ながら海賊団のリーダーであるルフィは、仲間のためには勝ち目のなさそうな敵にも立ち向かう。口癖は、「俺は仲間がいねえとなにもできねえ」。


「本当にそういう『侠気』のある男には、強い女も、男だって惚れてしまうんです。ルフィはいまどき珍しい肉食系男子なんです」(尾田さん)


今月に公開されたワンピースの映画「ストロングワールド」では初めてストーリーを担当した。敵に捕らわれた仲間を助けにルフィら一味が敵の宮殿に乗り込むシーンは、映画「清水の次郎長」をモチーフにした。

「任侠の世界を、今の世界によみがえらせたかったんです」

侠気こそ、子ども心を震わせるカギ。それを描き切るために、いくつもの制約を持つ。

ひとつ、恋愛を描かない。子どもが興味ないから。

「女性のファンも多くて、恋愛シーンがほしいというリクエストも来ますけど、応えません」


これが最後の長編です



もうひとつ、死ぬ、殺すシーンをなるべく描かない。残酷描写もしない。

「刀で斬るにしても、ざっくり刃の入ったシーンはなるべく描かないようにしてます」

そのためにルフィには、体を自由に伸び縮みさせる能力を身につけさせた(その代わり、彼は泳げない)。伸縮性を利用してパンチを連打する「ゴムゴムのガトリング」といった必殺技や、体をふくらませて相手の攻撃を跳ね返す戦闘シーンは、尾田さんが考える理想の絵柄だ。

「アクションスターでたとえるなら、ブルース・リーじゃなくてジャッキー・チェン。どんなにかっこいい理由で敵につっこんでいっても、間抜けっていうのが面白い」

戦闘が終わったら、必ず仲間やその島の住人たちと「宴」が始まる。尾田さんが必ず描きたいシーンなのだという。


「仲間や敵が死んだりしたら、楽しい宴のシーンが描けないでしょう」

お気に入りの仲間キャラは、気弱でうそつきな狙撃手・ウソップ。

「ダメな子ほどかわいいというか、活躍の場を与えないと人気がどんどん落ちていきますから」

最終回のイメージを連載当初から頭の中に描いているから、長期連載にありがちな話の破綻や混乱がない。ルフィの祖父、父、兄も登場し、ストーリーは尾田さんの思い描くエンディングに向けてきっちりと進んでいっている。


3日でストーリーを考え、3日で絵を描く。休みはない。ワンピース以外の長編作品は、もう描かないと決めている。


「体力的に、次の長期連載をやるのは無理だと思うんです」

だから、全力投球。その全力が、日本、いや世界中の「子ども心」をがっちりとつかんでいるのだ。

そんな尾田さんにも、つかめない心がある。娘の心だ。

「僕の漫画よりも、『プリキュア』(女児に人気のアニメ作品)が好きなんですよ」

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