俺だ!ジャックだ!
今日はみんなに俺の休日の過ごし方を聞いてもらう。

こう見えて俺は釣りが好きだ🎣
意外だったか?
昔は妻のテリーとよく近くの湖に出掛けたもんさ

今日は一人で海釣りに行ったときの話だ。


その波止場は地元では有名な釣り場で、ネットでも釣果情報が頻繁に更新される場所だ。
橋を渡った先の埋め立て地にあるため、対岸には本土の町並みが見える。




タイタニックに出てくるような大型の豪華客船が対岸の岸壁に停泊していて、
その奥には町のシンボルタワーと観覧車が港を見下ろすようにそびえ立っている。

実はここは夜に来るのもおすすめだ!
夜景が抜群に綺麗だからだ✨
観覧車に映し出されたイルミネーションが、海面にゆらゆらと反射してとても幻想的なのだ。




俺はそんな風景を眺めながらいつもの定位置に付き、使いなれたロッドをサッと振りだした。


お気に入りのルアーをセッティングし、真っ青な大海原に向かってキャスティングをする。


ヒュルルルルルゥとルアーは放物線を描き、およそ100m先に着水する。
リールのハンドルを回転させながら、ロッドを小気味良くシャクっていく。

すると、人工物である小魚のイミテーションは、命を与えられたかのようにヒョコヒョコと泳ぎだすのだ!
そうして何度かキャスティングを繰り返していると…


ガツン‼️


突然ロッドに衝撃が走る❗
アタリの大きさは魚の大きさにおおよそ比例する。
強烈な当たりにロッドは大きく弧を描き、トラグはギュルギュルと悲鳴をあげている!

リールに巻かれたラインが一気に引き出される❗
これ以上走られるわけにはいかない、ドラグをきつく締め直し、戦闘体制に入る!


ロッドを握る手に魚がグイグイと頭を振っている独特の感触が伝わってくる。
間違いない、青物だ
しかもかなりの大物。




すぐに隣の釣り人が近寄ってくる。
うっすら伸びた無精髭、使い古された釣り着
名前は恐らくボブだ。
ボブが俺に話しかけてくる


「お、掛かりましたねぇ、青物ですか?」


「ああ、そうだ、こいつはかなりの大物だ!
こいつを逃がすわけにはいかない、今取り逃がしたら二度と捕まえることが出来なくなる!
頼む!手を貸してくれボブ❗」


大きな獲物が掛かったときは単独行動は危険だ。
できるだけ応援を呼んだほうがいい。


「クロエ❗俺だ、ジャックだ❗
潜伏していたテロリスト(🐟)を見つけた、今手がかりを追っている、すぐに戦術チームを送ってくれ❗
なに?支部長に睨まれていて動かせない?」
クソーっ!なんてことだ‼️
せっかく奴を追い詰めたと言うのに!


こうなったら仕方ないボブと協力してやるしかない
ロッドをしならせ、リールを巻いて魚を引き寄せようとするが、寄せた分以上に魚が走ってラインが引き出される!


無理をすればラインが切られる
ここは持久戦に持ち込むしかない。
魚を引き寄せることは一旦諦め、引き出されるラインを最小限にする努力をしながら相手の体力が少しずつ削られていくのを待つ。


10分くらいはそんなやり取りが続いただろうか
気が付けば俺とボブの周りには20人ほどの人だかりが出来ていた。
今日は休日だ、ファミリーもたくさん来ている。
小さな子供たちもどんな魚が上がってくるのか目をキラキラさせて俺のことを見ているのだ!


バラすわけにはいかない!
大勢のギャラリーの期待が俺の肩に掛かっているのだ❗
こんなプレッシャーを味わうのは久しぶりだ。
だが、俺はジャックバウアー
みんなの期待に応えなければ❗


漸く力を使い果たしたのか、抵抗が少なくなり
少しずつリールを巻くことが出きるようになってきた。
すると一瞬、水面近くに魚の背鰭が見えて、奴の正体が判明した!

ブリだ❗

かなりでかい、70~80cmはあるだろう。
弱っては来ているがロッドに伝わる重量感は相当なものだ。
カーボン製のロッドもチタン合金のリールもギリギリと音を立て、そしてなにより俺の腕の筋肉が悲鳴をあげている。


見知らぬ少年がいつの間にか俺のすぐそばまできて応援してくれていた。
名前はそう、おそらくカールだ!
カールありがとう、お前も力を貸してくれるんだな❗





ゆっくりと、だが確実に奴はこちらに近づいてきている、もう少しだ!


しかし、勝利を確信した俺の目にとんでもない光景が飛び込んできた!


巨大な船が近付いてきている!
おそらく海外へ荷を運ぶ貨物船だろう。
まっすぐにこのポイントへ向かってきている!


そうなのだ、ここはそういった大型の船の停泊所にもなっていて、時折船が出入りしている。
といっても一日にそう何度もあることではないので、運悪くそのタイミングに当たってしまったのだ!


「クロエ❗俺だ!
港に貨物船が接近している、このままでは奴に逃げられそうだ❗すぐ州警察に連絡を入れて船を止めてくれ❗
何?支部長にマッサージをやらされていて手が放せない?」
クソーっ‼️なんてことだっっ‼️



こうなったら、ボブとカールと協力して何とかするしかない。



貨物船は刻一刻と近付いてくる
俺は波止場の先端から船と逆方向に向かって走り出した!

ギャラリーの一団とサビキ釣りを楽しんでいるファミリー、他にも大勢の釣り人が竿を海に向けている。
「すまない!道を開けてくれ❗
本当にすまない❗俺はCTUのジャックバウアー
緊急事態だ❗通してくれ❗」


状況を察した釣り人たちはすぐに竿を上げて道を譲ってくれる、ありがたい。


ここまでくれば大丈夫だろう、貨物船は先端辺りで停止している。
ボブとカールも後を追ってきてくれている。


ボブの手には玉網が握られている
さすがボブだ、いつの間にか取り込みの準備をしてくれていたのだ。


いよいよ、目の前に奴が浮いてきた。
20分を越える死闘で奴の体力もほとんど残ってないのだろう。
観念したのかほとんど抵抗することもなく口をパクパクさせている。


ザァッ

ボブが玉網を海中に突っ込み一気に奴を掬い上げる!
ついに奴を確保することに成功した‼️

「お、重いっ」
ボブは網を引き上げようとするが、その重さに苦戦していた。
すぐにカールも手を貸して一緒に引き上げる。




周りのギャラリーから歓声があがる
このサイズのブリが波止から上がることは滅多にない。
みな写真を撮ったり、子供たちはツンツンペタペタ触ってみたりしている。

カールも持ち上げようとするが獲物が少し大きすぎたようだ。


みんな、協力してくれてありがとう❗
本当に助かった!
特にボブとカール、君たちがいなかったらこいつを確保することは出来なかっただろう。


ボブは歯をむき出しにしてニヤけてみせる
カールも親指を立てて、任せてくれと言わんばかりだ。


こうして俺の魚釣りは幕を閉じた。
小さな波止場でさえ、戦場にしてしまう
それがジャックバウアー
俺の生き方だ!

また会おう‼️