「行きづらい」と「行きずらい」、どちらが正しいのでしょうか?
「行きづらい」と「行きずらい」の違いを言語的・心理的な側面から解説しつつ、人がなぜ「行きづらい」と感じるのか、その心の背景にも迫っていきます。
「行きづらい」と「行きずらい」の違い
まず、最も多く見られる疑問がこの点です。
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「行きづらい」=正しい表記
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「行きずらい」=誤り(俗用)
「づ」と「ず」は、発音上ではほとんど違いがなく、聞き分けにくい言葉のひとつですが、日本語として正しいのは「づ」を使う「行きづらい」です。
なぜ「づ」が正解なのか?
これは日本語の動詞の活用や送り仮名のルールに基づいています。
「~づらい」は、動詞の連用形+「づらい」で構成され、「~しにくい」「困難である」という意味を持ちます。
【例】
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書き+づらい → 書きづらい
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説明し+づらい → 説明しづらい
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行き+づらい → 行きづらい
一方、「ずらい」という表記は口語での音のまま書かれたものであり、文法的には正しくありません。
「づらい」の意味とニュアンス
「~づらい」は、「行く」「話す」「動く」などの行動に対して、「物理的・心理的にやりにくい」「困難さを伴う」というニュアンスを持ちます。
物理的な困難
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「この椅子、座りづらい」→形や安定感が悪くて座りにくい
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「ドアが重くて開けづらい」→物理的に開けにくい
心理的な困難
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「職場に行きづらい」→人間関係などのストレスで足が向かない
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「話しかけづらい雰囲気」→空気や相手の態度で話しかけにくい
つまり、「行きづらい」という言葉は、単に“行くことが困難”というだけでなく心理的・感情的な背景を含んだ表現であることが多いのです。
なぜ「行きづらい」と感じるのか?心の背景を探る
1. 人間関係の摩擦
「同僚と気まずい」「先生に叱られた」など、対人トラブルが原因で、その場に行くことに抵抗感を抱くケース。
2. 過去の嫌な経験
「前に失敗した」「恥をかいた」といった経験がフラッシュバックし、その場所への足が重くなる。
3. 自己肯定感の低下
「自分はここにいていいのか」「またダメ出しされるかも」という不安が、行動を鈍らせる要因に。
4. 空気や雰囲気が重い
特定の空間にいるだけでストレスを感じる、沈黙が多い、ピリピリした職場など、環境そのものが「行きづらさ」を生むことも。
「行きづらい」ときの対処法
● 気持ちを整理する
なぜ行きづらいのかを、自分の中で言葉にしてみましょう。
紙に書く、信頼できる人に話すことで、客観的に状況を見られるようになります。
● 自分にご褒美を用意する
行くことがストレスでも、「終わったら美味しいものを食べる」「カフェで一息つく」など、自分への報酬を用意してあげると気持ちが軽くなります。
● 無理に行かなくてもいい選択肢を持つ
どうしても心がついていかない時は、距離を置くことも選択肢の一つ。
「行かない」「避ける」ことは逃げではなく、自分を守る行動です。
● 第三者の視点を取り入れる
心理カウンセラーや信頼できる相談窓口に話すことで、自分では気づかなかった原因や解決策が見えてくることもあります。
「行きづらい」は心の防衛本能
「行きづらい」と感じることに対して、「自分は弱いのかもしれない」と思ってしまう人もいるかもしれません。
ですがそれは、心が「このままだと無理をするよ」と教えてくれているサインです。
生きていく中で、すべての場所が心地よいとは限りません。
しかし、自分の心の声に気づいてあげられる人こそ、人生を丁寧に歩む力を持っているのです。
まとめ|「行きづらい」は正しい表記。「ずらい」ではなく「づらい」を使おう
「行きづらい」という言葉は、心理的・感情的な困難を表す、繊細で奥深い表現です。
そして正しい書き方は「づらい」であり、「ずらい」は誤り。
日常で何気なく使う言葉にも、その人の思いや背景が反映されています。
自分や誰かが「行きづらい」と言ったとき、それをただの言葉で終わらせるのではなく、そこに込められた感情に目を向けること。
それが、優しさや気遣いの第一歩になるのではないでしょうか。