☆~湧き水の里の家から~☆ -4ページ目

☆~湧き水の里の家から~☆

きくさんとまなピー☆
2人で気の向いた時にブログを書いていきます。
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フツは何処からか大型の船を手に入れてきた。


「立派な船ですね」


「長い船旅になるから、船にたくさんの物資を運び入れなきゃならないし、人手もいるからね」


「人手がいるとなると、人を探さなければなりませんね」


「うん。君や僕の村がある長川流域には、大国によって滅ぼされた国や村が幾つもあり、暮らしていた土地を追われて、行くあてもなくさ迷っている人達もいるだろうから、僕は彼らの中から一緒に行きたいと志願してくれた人達も共に連れて行こうと思うんだ」


「きっとみんな喜びます」


「でも一緒に行けるのは若者だけなんだ。この旅はあまりにも未知すぎる。年老いた人や幼い子にはきつすぎると思う」


「それでいいと思います。私達もそう思って若い人だけで旅に出たのです」


「僕達は同じような考えをしていたんだね」


フツとアーシャが話していると、語り部のおばばがやって来た。


「フツや、行くのかい? お前さんがまだほんの子どもの頃に、東の海の中にあるという蓬莱島の話をした時、いつかはこうなるだろうと思ったよ。私が話してきた子ども達の中で、お前さんが一番瞳をキラキラと輝かせていたからねぇ」


「おばば様。この旅に出たら、僕はもうこの村には帰って来れないかもしれません。これがお別れになるかもしれないのです」


「いいんだよ。それでもお前さんが行くと決めたのなら行くがいいさ。お前さんの目には覚悟が見えるよ」


「おばば様・・・」


フツは幼い頃からおばばの話を夢の糧にしてきた。
その思いが溢れそうになるのを感じていた。


「これは今まで誰にも話したことがないんだけどね。今のお前さんになら話せるから話そうと思う。アーシャや、お前さんにも是非聞いてほしい」


「何でしょう? おばば様」


おばばはフツとアーシャの顔を見て、それから遠くを見るような仕草をした。


「もう何千年も昔のこと。世界が海で満たされた時代があった。東の海の中にあるという蓬莱島も大半が海に満たされ、そこに住んでいた人々の一部は海へと繰り出し、この長川流域に移り住んだ。私らの村もアーシャの村も、その人達が築いた国に存在していたんだよ。いつしかその国もそこに暮らした多くの人々も、何処かへ行ってしまったが、残った人々によって私らの村は今に続いてきたと言われている」


「えっ!? おばば様それって、僕達は蓬莱島から来た人々の子孫てことですか?」


「そうなるねぇ~」


長川流域には世界が海に満たされた時代の痕跡が幾つも残されている。


おばばは語り部だからといって、人々に全てを話してきたわけではなかった。


「おばば様、何故僕達にこの話をしてくれたのですか?」


「お前さんが蓬莱島を探しに行くというのでね。このことは知っておいた方がいいと思ったんだよ。いや、私らの歴史を知っておいてほしかったんだねぇ」


フツにもアーシャにもおばばの気持ちは理解できた。自分達がその立場なら、きっと同じようにしただろうと思ったからだ。


「僕達はこれから先祖の地を探しに行くことになるのか」


「私の祖母のそのまた祖母の国が、長川流域に暮らす人々共通の先祖の国だったなんて、とても驚いてしまいました」


「何だか僕達は導かれているみたいだね」


「ええ」


フツとアーシャは感慨深くなると同時に、未知の国へのときめきを感じていた。




いよいよ出港の時である。


おばばはフツに穀物の種を持たせた。


「これは私らのご先祖様が、蓬莱島から持ってきた種を長年かけて改良し、たくさんの人々が食べていけるようにしたものだよ。お前さんなら栽培の仕方はわかるね」


「はい」


「これを持ってお行き。きっとお前さん達を助けてくれるから」


「おばば様、ありがとうございます。行ってきます」


フツは家族や村の人達と別れの挨拶を交わし、長川流域の村々から集めた若者達と共に船出した。


フツやアーシャ達が故郷の地を踏むことは二度となかった。


彼らは無事に蓬莱島に辿り着くことができるのだろうか。


若者達の目の前には、ただ大海原が無限のように広がっているだけであった。






~続く~