☆~湧き水の里の家から~☆

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きくさんとまなピー☆
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フツ達はアシタカの浜から突き出た半島の海岸沿いに南へと向かった。


「この大きく突き出た半島はイヅと言って、遥か昔に南の海からやって来て、こちらの陸地にぶつかりました。あの白い山はそうして生まれ出でた山なのです」


アシタカの集落で聞いた話だ。


南の海から来たのはイヅ以外にもあるという。


フツはその巡り合わせが、あの美しい山を生み出したことに感動していた。


そしてイヅという地の山々の連なり、樹の多さとそのエネルギーはフツ達を圧倒させた。


「私達の国は広大さがあるが、この国は樹や川が何と多いのだ」


「海もずっとあって、食べていくのには困らないのでしょうね」


「そして森も山も谷も深い」


「ええ、本当に」


浜辺からすぐに山がある。
海と山の近さに更に感動するフツ達だった。


「この半島をぐるりとまわると、今度は北東方向に向かいます」


船は最南端の岬をぐるりと陸に沿って回り、半島の東側へ出た。


青海原が広がる遥か先に水平線が見える。


若者達の中にはここまで来たのだなぁ~と、感慨にふける者もいた。


やがて船が再び東に向きを変えると、海に迫るように続いていた山は途切れ、川の河口とともに平野が見えてきた。


だがそれもすぐに海に迫った山が現れる。


それでもしばらく進むと、お椀を伏せたようなコマの山がその終わりを告げ、その麓から東側に先程よりも更に広い平野を見せてくれた。


コマの山の麓に一筋の川が流れている。


「この川がアシタカの集落で聞いた、アの山から流れる川ですよ」


案内人はその川の河口に船を止めさせた。


「ほら、川の正面に三角の形がきれいなアの山が見えますよ」


アシタカの集落で、東のコマの山の麓では川の正面に白い山と似た形のアの山があり、更に東の大きな川からはアの山と白い山、アシの山が並んで見える場所があると教えてもらった。


「コマの山はアの山の入口なのです。この川を遡ればアの山に着きます」


と案内人が付け足した。


そして仲間の何人かがアの山の探索を申し出た。


彼らの向かう先に、彼らと出自を共にする仲間がいることを、この時はまだ誰も知らない。
全国を交易しながら飛び回る案内人すら、その事実をまだ知らないでいた。


仲間と別れてフツ達を乗せた船は、コマの山から北東方向に進路をとった。


目指す白い山への入口とされる川の河口があるのだ。


「西の方を見て下さい。白い山の南側にアシの山、北側にアの山が並んで見えますよ」


フツ達が西の方角を見ると、確かに南の海側からアシの山、白い山、アの山が並んでいるように見えた。


3つの山の間にも山々の連なりは続いていたが、それでも3つの山は目立っていた。


「今日は河口の集落で一泊していきましょう。その集落はサの里と言って、白い山の人達が、山が噴火するとこの里に避難してくるので、中にはそのまま住みついた人もいるので、何か話が聞けるかもしれませんよ」


案内人の話にフツ達は沸き立った。


「いよいよですね」


「うん、この瞬間をどれ程待ち望んだことか。いよいよ白い山のことがわかるんだ」


フツもアーシャも興奮が隠せない。


船はサの里の海岸に停泊した。


「この辺りはずっと昔は海だったので、人が住むにはまだ適していないとかで、里の人達はみな丘の上に集落をつくって暮らしています」


フツ達は丘の上に登り、西の方を見た。


白い山が先程より大きく見える。


アシの山の東側にはコマの山もよく見えた。


「やあ、ようこそお出で下さいました」


「ここは3つの山が並んで見えて、素晴らしいところですね」


「もう見られたのですね。素晴らしいのはそれだけではないのですよ。季節ごとに太陽があの3つの山に沈む光景も見ることができるのです」


「季節ごとに太陽が?」


「春と秋には龍の山に沈み、夏にはアの山に、冬にはアシの山に沈むのです。ここからはその光景を見ることができるのです」


「それは素敵ですね。見てみたいです」


アーシャはそのような光景を是非見てみたいと思った。


フツもアーシャと同じように思ったが、気になることがあるようだ。


「龍の山というのは、何故そう呼ばれているのですか?」


「あの白い雪をかぶった山は、地底にある龍の宮の入口なので、私達は龍の山と呼んでいるのです」


「地底の入口!?


フツとアーシャは驚き、顔を見合わせた。


「私達の国にもシャンバラという地底の国の言い伝えがあります」


「地底への入口はこの世界のあちこちにありますよ」


フツ達の会話に割り込んできた人達がいた。


「おお、今龍の山の話をしていたところですよ。フツさん、こちらは元は龍の山の麓に住んでいて、山が噴火した際にこの里に避難して来られて、そのまま移住された方達です」


フツ達と話をしていた里の住民が、龍の山の麓から来た人達に、フツ達がこの里を訪れた理由を説明してくれた。


「ほう、蓬莱島を探して。そうですか」


龍の山の人達はそれ以上フツ達とは話さなかった。
そして里人に何か耳打ちしてから、彼らの家の方に戻って行ってしまった。


フツ達は受け入れられてはいないのだろうかと不安になった。






~続く~