昔、「秘伝必殺 鉄砂掌」という本があって、当時高校生だった私は「すげぇ、必殺だ!やってみてぇ!」と思わず買ってしまいました。
「バイオレンスにはバイオレンスの哲学がある」、「へぬるい」といった聞きなれない言葉と異様な風貌の著者(本人いわく50代前半)の写真が随所に掲載されている、非常に過激でインパクトの強い本でした。

ちなみに今でもその本は持っていますが、今見直すと写真の細かい動きがきちんとしているのに驚きます。
相手の拳を受けた後の崩しやその角度、踏込の角度、進入角度などなど。
当時あった「○○拳入門」的な本とは一線を画しています。

で、鉄砂掌。
私の流派である、詠春拳で鉄砂掌を練習している人は少ないかもしれません。
※砂袋 (Wall Bag)を打つのはどこの道場でもやっているかと思います、念のため。
ここは鉄砂掌はパチンコ玉のような鉄砂が入った帆布を叩く練習という意味とさせてください。

僕自身は鉄砂掌を14年程度練習しています。
ただし、学んだのは詠春拳の師からではなく、詠春拳の道場で知り合った仲間からです。
彼は既に洪拳のインストラクターでしたが、詠春拳に惹かれて道場に通っていました。

その時に基本的な鉄砂袋の打ち方と、練習前後に手に塗る漢方薬酒「跌打酒(Dit Da Jow)」の処方を教えてもらいました。
「え、それって秘伝じゃないの?」という方もいらっしゃるでしょうね。
人によっては聞けば教えてくれますよ。ちなみに僕の場合は「お前、いいやつだから教えてやる」というものでした。
※一応、友情の印という事で教えてもらったんで、処方の内容は公開してません。

で、効果はあるのか?
結論からいうと…残念ながら僕には一撃で人を殺める事ができるような技量は多分ありません(笑)
ただし、一部の人たちがいう「鉄砂掌の練習は無駄」という意見には「?」です。
理由としては、
・リラックスした状態で砂袋を打ち抜くコツを短期間で学べる。
・姿勢や体の動きを調和させた状態で動くコツをつかみやすい。
・手が丈夫になる。(そりゃそうだよね、パチンコ玉の入った袋をバンバン叩くわけだから)

で、実際の威力は?
道場でPak Daの練習をしている最中に、パクサオで相手の下腕を打って、その人の肘を脱臼させたことがあります。
ですので、それなりにきちんと練習すると効果のある練習ではあるかと思います。
なお、その時で鉄砂掌歴は2年、詠春拳歴は5年でした。で、「本当に鉄砂掌の練習だけでその威力が得られたか?」ですが、断言はできないものの、他の同じくらいの詠春歴の道場生でそういう事が出来る人はいなかったんで、「多分、鉄砂掌の練習結果」と思います。

ただし!
次の様な弊害もあるので、やりたい人は自己判断で行った方が良いかと。
・目が悪くなる…私はこれ理由は分かりません。でも毎日鉄砂掌を練習していたら実際に目が悪くなりましたので、今は週一回だけしかしていません。(知人の話では鉄砂掌の練習は肝気と腎気を損なうからとの事でした)
※週一回の練習に切り替えてから目はほぼ元に戻りました。
・漢方薬が高い…日本では手に入らない生薬もある事。また、そもそも生薬が日本では高いので、強くなる前にお金が厳しくなるかもしれません。
・エッチできない…私はもうオッサンなのでそこまで「ヤリたい」と思いませんが、練習日の前と後ろはエッチ禁止です。つまり、毎日練習すると毎日エッチできません(笑) なお、このルール破ると手の痛みが慢性化したり、体への弊害が結構でる気がします。
はい、以上の弊害は私の経験でございます(笑)

ただし、鉄砂掌の練習から得られる効果は確実にあります。
じゃ、弊害を避けつつ鉄砂掌の効果をある程度得るにはどうしたら良いか。
結論から言えば、僕は砂利の入った帆布の袋を叩き、跌打酒は日本でも手に入る生薬で自分で作ってやれば十分だと思います。
それで、必要な威力は十分に得られると思いますので。

最後に。
僕は鉄砂掌を週一回練習していると書きましたが、ここまで読んで「鉄砂掌なんて面倒なモノやらんでも良いのでは?」と思う人もいるかと思います。

まあ、仰るとおりです。
私が知っている鉄砂掌や鉄布衫功をガンガンやっていた先生方(詠春門ではない)は結構60歳前後で亡くなっている方が多いです。
鉄砂掌を練習している皆さんそうだとは思いませんが、やっぱり過度に体を痛めつけるのは良くないと思います。
昔は戦で殺されるか、戦って生き残るかという世だった訳で、鉄砂掌のような過激な練習をしてでも生き残る事が必要だったんでしょうね。

そうです、今の世では必要ないでしょう。

では何故、僕は継続して鉄砂掌を練習しているか。
僭越だけれども、文化としての古流格闘芸術を維持する事に貢献できればという思いからですかね。
今は生徒に教えていませんが、数年後に会社を定年退職したら一緒に練習する仲間に伝えていきたいと思っています。

同じような思いで練習されている方がいらっしゃれば是非、情報交換させて下さいね。