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62/10/27(土)第12日
-後に暗黒の土曜日と言われる一日が始まる-

(フルシチョフ第二書簡)

ケネディ大統領 :今朝の提案がフルシチョフの考えだと仮定しよ
う。事情が変ったのかも。
バンディ大統領補佐官 :一晩で提案を変えるとは、彼は難しい状況にあ
りそうだ。
ケネディ大統領 :これが彼の最新の立場だ。
バンディ大統領補佐官 :私なら「昨夜の提案に応じる」と答えます。
ケネディ大統領 :そこが思案のしどころだ。新しい提案が彼の真
意なら難しい。
ケネディ大統領 :トルコ問題については?
バンディ大統領補佐官 :トルコと直接話さないと決めたのではないです
か。
ボール国務次官 :トルコと話せばNATOに提議され米国の立場
が悪くなります。これはソ連の知るところとな
るので。トルコはこの問題に感情的です。メン
ツの問題ととらえています。
バンディ大統領補佐官 :NATO加盟国は米国が同盟国を売り渡したと
考えます。ばかげた話ですが、いかんともし難
い事です。

(ジュピターミサイル旧式化)

ケネディ大統領 :冷静に考えると交渉で撤去させるのは無理だ。
だがアメリカはトルコから撤去しなくてはなら
ない。トルコ条項を公にした以上、ソ連は交換
条件なしに撤去を呑まない。トミー、ソ連は呑
まないよ---
トンプソン前駐ソ大使 :私は同意しません。前の線で行けます。
ケネディ大統領 :フルシチョフが引き下がると?
トンプソン前駐ソ大使 :彼は一度キューバ不侵攻で手を打つと言ったの
ですから。
ケネディ大統領 :しかし第二提案が公式な姿勢では?
トンプソン前駐ソ大使 :これはただの圧力かも知れません。
トンプソン前駐ソ大使 :フルシチョフにとって肝要なのはキューバ侵攻
を阻んだのは自分だと言えることなのです。

(ドブルイニン大使によれば、弟のロバートたちとの接触を通じて、アメリカ
はトルコからのミサイル撤去に応じるかもしれないとの感触を得た)

(U-2がキューバからの地対空ミサイルによって撃墜された)

マクナマラ国防長官 :U-2が撃墜されました。
ロバート・ケネディ司法長官:何だって?搭乗員は死んだのか。
テイラー統合参謀本部議長:キューバ東部の地対空ミサイル上空で撃墜され
ました。
テイラー統合参謀本部議長:搭乗員の遺体は機体の中です。地対空ミサイル
の仕業であることは明らかです。
ケネディ大統領 :ソ連はエスカレーションしてきたな。

(ギル・パトリック国防次官に撃墜に関する大統領声明をまとめるように指示
しただけ)

マコーンCIA長官 :分かりました。それならどうして取引きをしな
いのですか。
ボール国務次官 :トルコのミサイルを撤去すればトルコは報復を受
けずに済むでしょう。でも他の場所が報復されま
す。それではトルコのミサイルをみすみす無駄に
取り除いたということになる。
マクナマラ国防長官 :待ってください。私はトルコが攻撃を受ける可能
性が減ると言っただけです。
ボール国務次官 :ベルリンや他の場所が攻撃されたら、どんな得が
あると言うのかね。
マクナマラ国防長官 :もしトルコにミサイルがないとしたらソ連は他の
場所を攻撃して来ると言うのですね。私はそう思
いません。
ジョンソン副大統領 :ボブ、もしトルコのミサイルを撤去する気がある
なら、なぜ取り引きして人命を失わずに済ませな
いのだ。
マクナマラ国防長官 :反対なのではありません。キューバを攻撃せざる
を得なくなった時にトルコにミサイルがあること
を避けたいのです。我々はどんどんその方向へ進
んでいます。
トンプソン前駐ソ大使 :彼らは突然、値段をつり上げられると思いついた
節がある。だから我々はトルコには一切触れずに
前の提案に引き戻すべきなのです。ただトルコの
ミサイルのことは後で対処しなければなりません。

[フルシチョフ宛、ケネディ書簡]
(大統領の指示を受けロバート・ケネディ司法長官とソレンセン大統領特別補
佐官の二人はフルシチョフの第一提案を大筋で受諾する草稿をまとめていまし
た)

ケネディ大統領 :あさって判断すべきだ。もし明日、彼らが発砲
し書簡への回答もなければ攻撃を受けたことと、
「攻撃に反撃する」という声明を出そう。それ
から地対空ミサイル基地を壊滅させるのだ。

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62/10/28(日)第13日
[フルシチョフ最終書簡]
(クレムリンはキューバでの建設作業をやめ、ミサイルを撤去するように訓令
しました)



ケネディ大統領 :極限状態に至れば、誰しも核使用の誘惑にから
れてしまう---
だが核を使う決断をしてしまえば事態を統御す
ることは、もはやできなくなる。

(翌年、ダラスで凶弾に倒れ46才の生涯を終えました)