ふるさと納税について、今、全国の自治体が、制度の本当の役割や活用の仕方を考えなければならない状況にある。

 

返礼品の見直しを中心に総務省から各自治体へ通知が行われるようになってから、多くの自治体が適切な返礼品の選び方に悩まされている。

しかし、ふるさと納税制度は前向きに考えればプラスになる部分はまだまだあり、上手く活用していくべき場面は多くある。

 

そのことから、ふるさと納税制度をより有効的に、効果的に活用していく方法について、共有していくための団体が昨年設立されている。

それは、「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」。

27団体でスタートした連合であるが、現在では加盟団体が75団体にまで拡大している。

 

そこで今回は、

1.「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」とは?

2.ふるさと納税自治体連合に表彰を受けた事例

3.ふるさと納税は何のためか

以上3点についてお話ししてみたい。

 

1.「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」とは?

「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」とは、ふるさと納税制度の本来の趣旨・目的を、全国の自治体や国民に広く伝え、ふるさと納税制度を正しく地域活性化に役立てることを目的として活動する連合である。

また、連合がどういった意思を持って、どのような活動目的を持っているのかは、次のように示している。

設立趣旨

・ふるさと納税制度は地方から始まった取り組みであることから、自治体が中心になって健全な発展を推進しなければならない

 

・寄付者の想いに沿った施策の実現により、本当の意味での地域活性化につなげなければならない

基本的な考え方

◎ふるさと納税連合が考えるふるさ納税制度の趣旨

1)ライフサイクル・バランス税制

 【地方】 

 税金によって育てた子供たちが、税金を納められるようになる年齢になると都市部へ

 【都市部】

 子供たちが育つ過程でかかる医療費などの費用の負担なしに、多くの税金を得ることになる 

 ⇒ふるさと納税は、この地方と都市の間における税政のアンバランスを改善する

 

2)納税者主義

 納税者が自ら寄付先を決めることで、寄付先の自治体がどのような政策を行い、寄付金がどのように活用されているかを自分から知ろうとする良い機会。

 

3)自治体政策の向上

 地方自治体は、寄付金をどのように活用し、どのような効果が出たかをアピールする中で、自らの政策を常に振り返り、見直す機会を得ることができる。

目指すところ

1)ふるさと納税制度を本当の意味で地域活性化へつなげる

2)常に寄付者目線で考え、寄付金の活用方法やその効果について情報開示に努める

3)都市の理解も得られるような運用

4)寄付文化の醸成、地方と都市がともに発展するような運用への改善

5)ふるさと納税制度の趣旨・理念の再認識、ふるさと納税の健全化へ

 

*参照:「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合 設立趣意書」(福井県HP)

*参照:「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合 基本的な考え方」(福井県HP)

 

2.ふるさと納税自治体連合に表彰を受けた事例

昨年、ふるさと納税自治体連合は、ふるさと納税の健全な運用を推進するべく、ふるさと納税の活用により地域活性化へつなげた事例を全国から募集し、表彰を行う取り組みを実施した。

これは、ふるさと納税が、寄付者の思いの通りに活用され、本当の意味で地域活性化に活かされた事例を全国に共有することで、ふるさと納税制度の在り方を指し示す取り組みである。

ここでは、その表彰を受けた事例を紹介する。

長野県白馬村

◎地元高校存続につながった「国際観光科」新設と生徒の全国募集

 ・数々のオリンピック選手を輩出した白馬高校が統廃合の対象に…

  ⇒地域ぐるみでの支援へ動くきっかけに

 ・公営塾の運営

  ⇒放課後や土曜日に学ぶ場所へ

 ・国際観光課の設立により白馬高校をアピール

         

*参照:「白馬高校魅力化プロジェクト」ウェブサイト

*参照:「教育で地域を活性化する~白馬高校魅力化プロジェクト~」(ふるさとチョイスHP)

高知県越知町

◎地域おこし協力隊の定住・起業(ゲストハウス開設)の支援

 ・観光資源は多いが宿が少ない越知町

  ⇒日帰りではなく宿泊までしてもらえるようにゲストハウス開設へ

 ・古民家を改修して、古き良き日本の田舎をコンセプトにゲストハウス開設

         

*参照:「標高400mの山奥で“古き良き日本の田舎を感じるゲストハウス”を完成させたい(ふるさとチョイスHP)

石川県輪島市

◎輪島塗職人による熊本地震被災陶器の再生プロジェクト

 ・地震によって歴史的重要物も破壊

  ⇒「金継ぎ」の技術を使って修復作業へ

 ・かつて輪島市も能登半島地震で被害にあったが多くの支援を受けた経験

         

*参照:「熊本地震で壊れた陶器を「金継ぎ」で甦らせる!“復興への想い”を込めた器で、被災地同士の絆と未来をつくりたい」(ふるさとチョイスHP)

 

3.ふるさと納税は何のためか

         

 

ふるさと納税というと、やはり「返礼品」の内容や、税の優遇などに注目が集まってしまう。

それはもちろん大切な要素であるし、返礼品の内容や優遇される税の額について、見直しが必要だという声が大きくなっていることも納得は出来る。

実際に返礼品の内容については、すぐには無理でも見直しが必要な場合も多く見られており、全国的に改善への取り組みが行われていることも事実だ。

 

しかし、やはり何を考えるにしても、何を改善するにしても、一番に立ち返るべきことは「ふるさと納税制度がなぜあるのか」や、「ふるさと納税制度は何の為の制度か」という根本的な趣旨である。

 

ふるさと納税制度は、はじめは、都市部に集中している税収を地方にも分配する必要があると思った上での取り組みだったかもしれない。

また寄付者側としても、ご当地ものの返礼品、あるいはご当地ものでなくても豪華な内容の返礼品がもらえるという「カタログ」感覚だったり、少額ではあっても税金の優遇があることに対する「お得感」だったりが良かったのかもしれない。

 

しかし今となっては、そのふるさと納税制度への考え方は大きく変化してきている。

ふるさと納税によって、もっと自分の地域を知ってもらいたい、自分の地域をアピールしたいという考え方で自治体や地域団体が動く。

そして寄付者側も、「この事業に役立ててほしい」とか「自分の寄付がどのように活用されているのかが知りたい」とか、さらにプラスアルファの思いを持って寄付をするようになる。

そういった両者の思いの変化に適応していかなければならない。

だからこそ、上記でご紹介したような「クラウドファンディング型のふるさと納税」が、今は流行していると言えるのだろう。

 

「ふるさと納税は何の為の制度なのか」

そういった視点から関わり方を変えれば、自ずとふるさと納税制度の在り方は変化してくる。