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出版権拡張の法改正に潜む危険性

最近法改正が現実味を帯びてきた出版権の拡張について解説しつつ、個人的な見解を述べていきます。

著作権という権利が発生する対象は著作物です。


著作物というためには、創作的表現でなくてはなりません。


〔著作権法 第2条1項1号〕
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。


創作とはあなたオリジナルのものであるということです。


著作物が文章や絵の場合の表現とは、あなたが創作した内容を

実際に紙などに書(描)くことと前回説明しました。


そして、頭の中のアイディアや企画段階では

著作権法では評価されないと述べました。


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ここで「企画段階」と「表現すること」はどこで区別されるかがなかなか理解しくいと思います。


そこで、その区別を最近話題になったニュースを例にして考えてみます。


最近、著作権関係のニュースで一番賑わっているのが佐村河内守氏のゴーストライター起用の事件でしょう。


この事件では佐村河内氏の様々な疑惑について様々な憶測がされていますが、ここでは佐村河内氏が作曲の際にゴーストライターの新垣隆氏に手渡したとされる指示書について取り上げます。


図形譜面とも言われているこの指示書では、佐村河内氏の考える曲の構成やイメージが、図形ともに説明されたオリジナリティ高い内容となっています。


この指示書を文章や絵として見た場合、そのオリジナリティの高さから著作物性があることにほぼ間違いはありません。


一方、音楽として見た場合の著作物性はどうでしょうか。


音楽の著作物での表現とは、

・実際にそのフレーズを音に出した

・そのフレーズを録音した

・楽譜にして音楽的知識のある人が読めば同じ内容の演奏ができるようにした

・音楽演奏プログラムを組んで実行させればその音楽を奏でる状態にした

とかの行為でなければなりません。


このような観点から例の指示書を考えると

例の指示書には音符が描かれておらず、

これを見た他人が同じ演奏ができるようなものとは思われません。


したがって例の指示書は音楽の著作物としては成立していません。

佐村河内氏は、作曲という点では共作(共同著作者)にはならないといえます。


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なお、この指示書についてはテレビニュースに映った指示書の映像を画像化して多くの個人サイトで佐村河内氏に無断でアップされているようです。


上述のとおり、あの指示書には文書や絵としての著作物性があります。

したがって佐村河内氏はあの指示書の(文書や絵としての)著作権を所有しています。


指示書をニュースで取り上げる分には著作権法上、権利侵害の問題はありまえせん。

(報道で取り上げる場合の著作権侵害にならない特例:著作権法第41条)


しかし、それを画像化して個人ブログなどに貼り付ける行為は

その個人が自分のブログで糾弾している(であろう)当の相手である

佐村河内氏の著作権を侵害していることになりますので

注意する必要があります。