こんにちは、おっさんです。

昨夜23時過ぎに緊急地震速報のアラートで

飛び起きました。

おっさんの住んでいる地域では

それほど揺れも強くはなかったのですが

愛媛県では結構な揺れだっそうで

いつ自分たちにも災害が襲ってきてもおかしくないですね。

早めにいろいろ備えておかあなければと思いました。

 

セレクト過去問集-民法5

の結果は、24問中、14もん

 

 Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア 甲の引渡しの履行期の直前に震災によって甲が滅失した場合であっても、Bは、履行不能を理由として代金の支払いを拒むことができない。

イ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。

ウ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

エ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。

オ Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ

 

正解4

ア 誤り。当事者双方の責めに帰することができない事由(本肢では震災)によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができます(債務者主義。536条1項)。

イ 正しい。買主が追完請求権又は代金減額請求権を行使しても、415条の規定による損害賠償の請求並びに541条及び542条の規定による解除権の行使をすることができます(564条)。

ウ 誤り。買主が、履行の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる場合とは、①履行の追完が不能であるとき、②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、③契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき、④①~③に掲げる場合のほか、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき、の4つの場合です(563条)。本肢は、上記のいずれにも該当しないため、Bは、そのAに対して、直ちに代金の減額を請求することができません。

エ 誤り。契約不適合が買主の帰責事由によるものであるときは、買主は、代金の減額の請求をすることができません(563条3項)。

オ 誤り。買主が種類又は品質に関する契約不適合の場合に「その不適合を知った時から1年以内に売主に通知する」旨の規定はありますが(566条本文)、売主に対し請求権を行使する旨の規定はありません

 以上により、誤っているものは、ア・ウ・エ・オの4つとなり、4が正解となります。

 

 

 契約類型に応じた契約解除の相違に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。

2 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。

3 賃貸借契約において、賃借人の賃借物に対する使用方法が著しく信頼関係を破壊するものである場合には、賃貸人は、催告を要せずにただちに契約を解除することができる。

4 委任契約において、その契約が受任者の利益のためにもなされた場合であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、また、そのような事情がないときでも、委任者が解除権自体を放棄したとは解されないときは、委任者は、自己の利益のためになお解除権を行使することができる。

5 建物の工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合には、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。

 

正解2

1 妥当である。本肢のような負担付贈与には、双務契約に関する規定が準用され(553条)、受贈者が義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができます(最判昭53・2・17)。

2 妥当でない。買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、契約の解除ができません(557条1項)。したがって、売主は自ら履行に着手していても、買主が履行に着手していない場合であれば、手付の倍額を現実に提供して解除することができます。

3 妥当である。判例は、賃借人が賃貸人との間の信頼関係を破壊し、賃貸借契約の継続を著しく困難にした場合は、賃貸人は、催告をすることなく、将来に向かって賃貸借契約を解除することができるとしています(最判昭27・4・25)。

4 妥当である。判例は、受任者の利益のためにも締結された委任契約である場合、受任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事情があるときはもちろん、やむをえない事由がなくても、その契約において委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情がある場合には、委任者は、民法651条に則り契約を解除することができるとしています(最判昭56・1・19、651条2項2号参照)。

5 妥当である。①注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、または、②請負が仕事の完成前に解除されたときにおいて、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなします。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(634条)。したがって、既施工部分については仕事が完成したものとみなされ契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎないことになります。

 

 

 Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ 

 

正解2

ア 誤り。判例は、建物賃借人は、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできないとしています(145条、最判昭44・7・15)。

イ 正しい。乙建物の所有権をAからBが譲り受ける際に、賃借人Cの承諾は不要ですが、乙建物についての移転登記をしなければ、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできません(605条の2第3項)。したがって、Bは、Cに対して賃料を請求することはできません。

ウ 誤り。AB間の甲土地の賃貸借契約において、Cは弁済をするについて正当な利益を有する第三者であり、Aの承諾がなくとも、甲土地の賃料をBに支払うことができます(474条2項反対解釈。最判昭63・7・1)。

エ 正しい。判例は、賃借地上の建物の売買契約が締結された場合には、特段の事情のない限り、売主は買主に対し敷地の賃借権をも譲り渡したことになるとしています(最判昭47・3・9)。したがって、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲渡することができない(612条1項)ので、本肢においてAは、Bの承諾を得る必要があります。

オ 正しい。判例は、土地の賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情のない限り、土地の賃貸人は解除をもって賃借人の所有するその土地上の建物の賃借人に対抗することができないとしています(最判昭38・2・21)。

 以上により、誤っているものはア及びウの二つであり、2が正解となります。

 

 

 Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し(以下、この賃貸借を「本件賃貸借」という。)、その際、BがAに対して敷金(以下、「本件敷金」という。)を交付した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

 

1 本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。

2 BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金から控除すべき額を控除した額を返還しなければならない。

3 BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

4 BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。

5 AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

 

1 妥当でない。賃借人は、「必要費」については、賃貸人に対して、直ちに償還請求をすることができますが(608条1項)、「有益費」については、「賃貸借の終了時」に、貸主の選択に従い、その支出した金額又は増価額の償還を請求することができます(608条2項)。

2 妥当である。賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または、②賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければなりません(622条の2第1項)。

3 妥当でない。賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができません(613条3項本文)。

4 妥当でない。賃貸人の承諾のある転貸借において、賃貸借契約が賃借人(転貸人)の債務不履行を理由とする解除により終了した場合には、転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する履行不能により終了するとしています(613条3項ただし書参照。最判平9・2・25)。したがって、賃貸人は、転貸借が期間満了前でも、転借人に明渡しを求めることができます。

5 妥当でない。目的不動産の所有権が移転し、新所有者が賃貸人の地位を承継した場合には、旧賃貸人に差し入れられていた敷金は、未払賃料があれば当然に充当され、残額があれば新賃貸人に承継されるとしています(605条の2第4項。最判昭44・7・17)。

 

 

 AはBのためにある事務処理を行った。これが、①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 

ア Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。

イ Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。

ウ Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、②の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。

エ Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、②の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。

オ Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。 

 

1 ア・イ

2 ア・オ

3 イ・エ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解1

ア 正しい。委任では事務の処理の費用の前払い請求が可能ですが(649条)、事務管理では費用の前払いを請求することはできません。

イ 正しい。委任では、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができますが(650条1項)、事務管理では、管理者は、本人のために有益な費用についての、その償還を請求することができます(702条1項)。

ウ 誤り。委任も事務管理も、本人を代理する権限は、法律上当然には認められていません。

エ 誤り。委任では、受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければなりません(646条1項前段)。また、事務管理でも、委任の規定が準用されています(701条)。

オ 誤り。委任では、受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(645条)。また、事務管理でも、委任の規定が準用されています(701条)。

 以上により、正しいものはア・イとなり、1が正解となります。

 

 

 AのBに対する不当利得返還請求等に関する次のア~オの記述のうち、判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

 

ア Aは、Bに対する未払い賃料はないことを知りつつ、Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができる。

イ Aは、賭博に負けたことによる債務の弁済として、Bに高価な骨董品を引き渡したが、その後、A・B間でBがこの骨董品をAに返還する旨の契約をした。この場合に、Aは、Bに対し、この骨董品の返還を請求することができる。

ウ Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕義務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

エ Aは、Bとの愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得としてこの建物の返還を請求することができる。

オ Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの法律上または事実上の関係のないDに貸付金を交付させたところ、Bが強迫を理由にAとの当該金銭消費貸借契約を取り消した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ 

 

正解2

ア 正しい。債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができません(非債弁済。民法705条)。しかし、705条が適用されるためには、給付が任意になされたことが必要であり、本肢の場合は給付に任意性がなく、705条は適用されません(大判大6・12・11、最判昭35・5・6)。

イ 正しい。判例は、不法原因給付に該当し、返還請求することができないものであっても、不法原因契約を合意の上で解除してその給付を返還する特約をすることは、民法708条に違反しないとしています(最判昭28・1・22)。

ウ 正しい。建物賃借人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に不当利得の返還を請求することができるのは、建物所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られます(最判平7・9・19)。本肢の場合、賃借人の無資力を理由に建物所有者に不当利得の返還を請求する場合に当たらない(BはCから得ることができた権利金の支払いを免除するという負担をしています)ので、Aは、Bに対し、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできません。

エ 誤り。愛人関係を維持するための給付は不法原因給付に当たり、贈与者は、その給付の返還を請求することができません(708条)。未登記建物の引渡しは、「給付」に当たるので、Aは、Bに対し、不当利得として返還請求することはできません(最大判昭45・10・21)。

オ 誤り。本肢において、Bに不当利得があるというためには、BがAの給付によってDに対する債務を免れるなどBとDとの間に何らかの法律上又は事実上の関係があることが必要ですが、BとDとの間には、何ら法律上又は事実上の関係がありません。したがって、Bには利得が存在せず、AはBに不当利得返還請求権を行使することができません(最判平10・5・26)。

 以上により、誤っているものは、エ及びオの二つであり、2が正解となります。

 

 

 不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

 

ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Iの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはIに対して求償することができる。

エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。 

 

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・ウ

4 ウ・エ

5 エ・オ

 

正解4

ア 誤り。使用者は、損害の全額を賠償したとしても、損害の公平な分担という見地から「信義則上相当と認められる限度」において、被用者に対し求償の請求をすることができるにすぎません(最判昭51・7・8)。したがって「全額を求償することができる」とする本肢は誤りです。

イ 誤り。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、動物の種類及び性質に従い相当な注意をもって動物を管理していたときは、責任を負う必要はありません(718条1項)。本肢の場合、飼主Dは飼育する犬を相当な注意をもって管理することを証明できなかったので、Fに対する損害賠償の責任を免れることができません。この場合、E社製の飼育檻の強度不足による賠償請求については、DがE社に対して行使できるものですが、このことと、Fに対する責任とは異なるものです。

ウ 正しい。土地工作物等の所有者が、その損害を賠償した場合、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、所有者は、その者に対して求償権を行使することができます(717条3項、2項)。したがって、所有者Gは、請負業者Iに対して求償権を行使することが可能です。

エ 正しい。被用者が使用者の事業の執行につき第三者との共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が過失割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に求償することができます(最判昭63・7・1)。

オ 誤り。使用者は、被用者と第三者との共同過失により、惹起された交通事故により被害者に対してその損害を賠償したときは、第三者に対して求償権を行使することができ、この場合の第三者の負担部分は、被用者と第三者との過失割合に従い定められるとするのが判例です(最判昭41・11・18)。したがって、Nは、「Qに求償することはできない。」とする本肢は誤りです。

 以上により、正しいものはウ及びエとなるので、4が正解となります。

 

 

 不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

 

ア Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

ウ A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

エ Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。

オ Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、5年で消滅時効にかかる。

 

 

1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解1

ア 妥当である。不法行為による損害賠償について、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができます(722条2項)。夫の運転する被害自動車に妻が同乗していた場合、夫婦の婚姻関係が既に破綻しているなど特段の事情のない限り、夫の過失は被害者側の過失として考慮されます(最判昭51・3・25)。

イ 妥当である。数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(719条1項前段)。連帯債務の場合、免除は他の連帯債務者に対してその効力を生じません(相対的効力)。したがって、共同不法行為者のうちの一人の損害賠償債務を免除しても他の共同不法行為者の損害賠償債務に影響しません。

ウ 妥当でない。使用者は、損害の全額を賠償した場合でも、損害の公平な分担という見地から「信義則上相当と認められる限度」において、被用者に対し求償の請求をすることができるにとどまります(最判昭51・7・8)。

エ 妥当でない。線路(軌道施設)は土地工作物に当たり、見通しが悪く、交通・列車回数が多く、過去数度に及ぶ事故のあった電車の踏切に保安設備(警報機)が欠けている場合は、土地工作物に瑕疵があったことになります(最判昭46・4・23)。したがって、被害者は、鉄道会社に土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することができます(717条1項)。

オ 妥当でない。不法行為により受傷した被害者が、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想し得なかった治療が必要となり、その費用の支出を余儀なくされたときは、損害賠償請求権の消滅時効は、後日その治療を受けるまで進行しません(最判昭42・7・18)。したがって、「事故により直ちに発生し、5年で消滅時効にかかる」とする本肢は妥当ではありません。

 以上により、妥当なものはアとイであり、1が正解となります。

 

 

 AはBから中古車を購入する交渉を進めていたが、購入条件についてほぼ折り合いがついたので、Bに対して書面を郵送して購入の申込みの意思表示を行った。Aは、その際、承諾の意思表示について「8月末日まで」と期間を定めて申し入れていたが、その後、契約の成否について疑問が生じ、知り合いの法律家Cに相談を持ちかけた。次のア~オのAの質問のうち、Cが「はい、そのとおりです。」と答えるべきものの組合せは、1~5のどれか。

 

ア 「私は、申込みの書面を発送した直後に気が変わり、今は別の車を買いたいと思っています。Bが承諾の意思表示をする前に申込みを撤回すれば、契約は成立しなかったということになるでしょうか。」

イ 「Bには、『8月末日までにご返事をいただきたい』と申し入れていたのですが、Bの承諾の意思表示が私に到着したのは9月2日でした。消印を見るとBはそれを9月1日に発送したことがわかりました。そこで私は、これをBから新たな申込みがなされたものとみなして承諾したのですが、契約は成立したと考えてよいでしょうか。」

ウ 「Bからは8月末を過ぎても何の通知もありませんでしたが、期間を過ぎた以上、契約は成立したと考えるべきでしょうか。実は最近もっとよい車を見つけたので、そちらを買いたいと思っているのですが。」

エ 「Bは、『売ってもよいが、代金は車の引渡しと同時に一括して支払ってほしい』といってきました。Bが売るといった以上、契約は成立したのでしょうが、代金一括払いの契約が成立したということになるのでしょうか。実は私は分割払いを申し入れていたのですが。」

オ 「Bの承諾の通知は8月28日に郵送されてきました。私の不在中に配偶者がそれを受け取り私のひきだしにしまい込みましたが、そのことを私に告げるのをうっかり忘れていましたので、私がその通知に気がついたのは9月20日になってからでした。私は、Bが車を売ってくれないものと思って落胆し、すでに別の車を購入してしまいました。もう、Bの車は要らないのですが、それでもBとの売買契約は成立したのでしょうか。」

 

1 ア・ウ

2 イ・エ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 エ・オ 

 

正解3

ア 答えるべきでない。承諾の期間を定めてした契約の申込みは、申込者が撤回する権利を留保したときを除いて、撤回することができません(523条1項)。

イ 答えるべき。申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができます(524条)。Aが遅延した承諾を新たな申込みとみなして承諾すれば、契約が成立したことになります。

ウ 答えるべきでない。申込者が承諾期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは効力を失います(523条2項)。期間を過ぎた以上、契約は成立しなかったことになります。

エ 答えるべきでない。承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされます(528条)。Bが代金一括払という条件で承諾しているので、その承諾は新たな申込みとなりますが、Aがこれに承諾しなければ契約は成立しません。

オ 答えるべき。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(97条1項)。判例は、通知の到達について、通知が相手方の支配圏内に置かれることをもって足りるとしています(最判昭43・12・17)。Aの配偶者が承諾の通知を受領していれば通知は到達していることになり、契約は成立したことになります。

 

 

 契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

 

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

 

1 ア・エ

2 イ・ウ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ

 

正解5

ア 妥当でない。Aの火の不始末により当該建物が焼失したことにより履行不能となるため、Bは、催告をすることなく、直ちに当該契約を解除することができます(542条1項1号)。

イ 妥当でない。引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していないため履行遅滞となるので、Bは、相当の期間を定めてその履行を催告した後でなければ当該契約を解除することができません(412条、541条本文)。しかし、判例は、期間を定めずに催告しても、催告後相当期間が経過すれば解除することができるとしています(最判昭2・2・2)。

ウ 妥当である。当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができます(544条1項)。Cが、当該売買契約を解除するためには、AとBに対して解除の意思表示をしなければなりません。

エ 妥当でない。当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負います。ただし、第三者の権利を害することはできません(545条1項)。この場合、第三者Cが保護されるためには、悪意であってもよいのですが、登記を得ている必要があります(最判昭33・6・14)。

オ 妥当である。契約の解除により、買主は原状回復義務を負うことになります(545条1項本文)。判例は、解除の場合の原状回復について、買主は、当該契約の解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならないとしています(最判昭51・2・13)。

 以上により、妥当なものは、ウ・オとなり、5が正解となります。