こんにちは、おっさんです。

昨日は暑くてTシャツになったおっさんは

暑いので布団もしまい込み、何も掛けずに寝ると

夜中、めっちゃ寒くてそれでもかけるものがなく

はげしく後悔しました。

今日は薄手の掛け布団を奥さんに出してもらおうと思います。

 

セレクト過去問集-民法1

の結果は、19問中、12問正解でした。

 

 権利能力、制限行為能力および意思能力に関する次の記述のうち、民法および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。

2 失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。

3 成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

4 成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。

5 後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

 

正解5

1 妥当でない。胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなされます(721条)。ただし、判例は、胎児が生きて生まれることを停止条件として、権利能力があるものとみなされるとの見解(停止条件説)をとり、胎児の母は、胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができないとしています(阪神電鉄事件。大判昭7・10・6)。

2 妥当でない。失踪宣告を受けると、不在者は、死亡したものとみなされます(31条)。これは、失踪宣告を受けた者の従来の住所を中心とする法律関係について死亡した場合と同様の扱いをするということであり、失踪宣告によって不在者が権利能力を喪失するわけではありません。また、失踪宣告が取り消された場合、失踪の宣告後その取消し前に「行為の当事者とともに善意でした行為」の効力に影響を及ぼしません(32条1項、大判昭13・2・7)。

3 妥当でない。後見人は、正当な事由があるときは、「家庭裁判所の許可」を得て、その任務を辞することができます(844条)。成年被後見人の許諾を得ても、その任務を辞することはできません

4 妥当でない。成年被後見人の法律行為の取消しは、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、成年後見人も成年被後見人もすることができます(9条、120条1項)。後見開始の審判が取り消される必要はありません。

5 妥当である。後見開始の審判を受けるまでは、成年被後見人ではないので、制限行為能力を理由として法律行為を取り消すことはできません。意思能力のない者のした行為は無効ですが(3条の2)、その無効を主張する者が、意思能力の不存在を立証しなければならないと解されています

 

 

 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

 

1 未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。

2 保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。

3 家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

4 被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。

5 制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。

 

正解4

1 正しい。未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに、後見が開始します(838条1号)。

2 正しい。被保佐人が一定の行為をするには、その保佐人の同意を得なければなりません(13条1項)。そして、家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(876条の4第1項)。

3 正しい。家庭裁判所は、第15条1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます(17条1項)。そして、家庭裁判所は、第15条1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(876条の9第1項本文)。

4 誤り。制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は被補助人に対して、一定の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされます(20条4項)。したがって、「追認したものと擬制される」とする本肢は誤りです。

5 正しい。制限行為能力者が、制限行為能力者であることを黙秘していた場合でも、他の言動とあいまって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたときは、詐術に当たりますが、単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術に当たりません(21条、最判昭44・2・13)。

 

 

 制限行為能力者と取引をした相手方の保護に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 制限行為能力者が自己の行為を取り消したときには、相手方は受け取っていた物を返還しなければならないが、相手方は、制限行為能力を理由とする取消しであることを理由に、現に利益を受けている限度で返還をすれば足りる。

2 制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、1か月以上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することができ、その期間内に確答がなければその行為を追認したものとみなされる。

3 制限行為能力者が成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品を売却した場合であっても、成年被後見人は制限行為能力を理由として自己の行為を取り消すことができる。

4 制限行為能力者が被保佐人であり、保佐人の同意を得なければならない行為を被保佐人が保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにした場合において、被保佐人が相手方に対して行為能力者であると信じさせるために詐術を用いたときには、制限行為能力を理由としてこの行為を取り消すことはできない。

5 制限行為能力者が被補助人であり、補助人の同意を得なければならない行為を被補助人が補助人の同意を得てした場合であっても、相手方は、制限行為能力を理由として被補助人の行為を取り消すことができる。

 

正解4

1 誤り。「制限行為能力者」が制限行為能力を理由に自己の行為を取り消した場合、その行為によって現に利益を受ける限度(現存利益の限度)で返還すればよいですが(121条の2第3項)、相手方が制限行為能力を理由とした取消しをする際に現存利益の限度で返還すればよいわけではありません。

2 誤り。相手方は、未成年者が未成年である間は法定代理人に対して催告する必要があります(20条2項)。未成年者は意思表示の受領能力がないからです(98条の2)。

3 誤り。成年被後見人の法律行為は、原則として取り消すことができますが、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができません(9条)。身の回りの最低限の行為については、本人の自主性を尊重しようという趣旨です。

4 正しい。制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(21条)。このような場合、制限行為能力者より相手方を保護する必要があるからです。

5 誤り。被補助人が補助人の同意を得なければならない行為を補助人の同意を得てした場合には、その行為は取り消すことはできません(17条4項)。また、制限行為能力を理由とする取消しは、制限行為能力者を保護するためのものであり、相手方は、制限行為能力を理由として取り消すことはできません(120条1項)。

 

 

 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

 

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

 

1 ア・イ 

2 ア・オ 

3 イ・ウ 

4 ウ・エ 

5 エ・オ

 

正解4

ア 誤り。家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任します(843条1項)。一方、成年後見監督人については、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を「選任することができる」にすぎません(849条)。したがって、「成年後見監督人を選任しなければならない」とする本肢は誤りです。

イ 誤り。家庭裁判所は、本人・配偶者・保佐人などの請求により、被保佐人が民法13条1項に定められている行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます(13条2項本文)。

ウ 正しい。家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(876条の4第1項)。ただし、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければなりません(876条の4第2項)。

エ 正しい。家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができますが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(15条1項、2項)。

オ 誤り。後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならないため(19条1項)、本肢前段は誤りです。一方、本肢後段は正しい記述です(19条2項)。

 以上により、正しいものの組合せはウ・エとなり、4が正解となります。

 

 

 民法上の住所に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

 

ア 住所が知れない場合において、居所を住所とみなすことはできない。

イ 日本に住所を有しない外国人は、日本における居所をその者の住所とみなすことはできない。

ウ ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

エ 住所が複数ある場合には、本籍地を住所とみなす。

オ 住民票に記載されている住所と本籍地が異なる場合には、住民票に記載されている住所を民法上の住所とみなす。

 

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ

 

正解1

ア 誤り。住所が知れない場合には、居所が住所とみなされます(23条1項)。

イ 誤り。日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所がその者の住所とみなされます(23条2項本文)。

ウ 正しい。ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所が住所とみなされます(24条)。

エ 誤り。「住所」とは、その人の生活の本拠をいいます(22条)、本籍は戸籍の所在場所のことであり、住所とは別の概念です。住所が複数ある場合に、本籍地が住所とみなされることはありません。

オ 誤り。このような規定はありません。また、住所と本籍は関係がありません。

 以上により、正しいものはウのみであり、1が正解となります。

 

 

 Aが自己の所有する甲土地をBと通謀してBに売却(仮装売買)した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 

ア Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCは、A・B間の売買の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。

イ Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを対抗することができる。

ウ Aの一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができる。

エ Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

オ Bの一般債権者FがA・B間の仮装売買について善意のときは、Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であっても、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

 

1 ア・イ

2 ア・ウ

3 ア・オ

4 イ・エ

5 イ・オ

 

正解5

ア 妥当である。虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗(主張)することができません(94条2項)。しかし、善意の第三者が無効を主張することは可能です

イ 妥当でない。虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗(主張)することができません(94条2項)。この場合、仮装譲渡人Aも仮装譲受人Bも、A・B間の売買の無効を善意のCに対抗することができません

ウ 妥当である。無効は誰でも主張できるのが原則です。したがって、一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができます。

エ 妥当である。虚偽表示による仮装譲受人が譲り受けた不動産に抵当権を設定した場合、抵当権者は94条2項の第三者にあたります(大判大4・12・17)。したがって、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができません。

オ 妥当でない。仮装譲受人Bの一般債権者Fは、94条2項の第三者に該当しないため、Aは、虚偽表示の無効をFに対抗できます。なお、Fが甲土地を差し押さえた場合には、Fは94条2項の第三者に該当するため、Aは、虚偽表示の無効を善意のFに対抗できません(最判昭48・6・28)。

 以上より、妥当でないものの組合せはイ・オとなり、5が正解となります。

 

 

 AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。

2 Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。

3 この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。

4 Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。

5 Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

 

正解4

1 妥当でない。精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者でも、後見開始の審判を受けていなければ成年被後見人ではありません(7条、8条)。したがって、Aは「当然に成年被後見人」となるわけではなく、制限行為能力者であることを理由として譲渡契約を取り消すことはできません。

2 妥当でない。被保佐人は、民法13条1項各号に掲げられている行為については、保佐人の同意が必要であり、同意を得ていない場合には取り消すことができます。しかし、それ以外の行為については、原則として、被保佐人が単独ですることができます。したがって、保佐人の同意を得ていない場合に常に譲渡契約を取り消すことができるわけではありません

3 妥当でない。第三者(鑑定人)の詐欺によってAが動産を譲渡する意思表示をした場合、相手方Bがその事実を知り、又は知ることができたとき(悪意又は有過失)に限り、Aは、その意思表示を取り消すことができます(96条2項)。

4 妥当。心裡留保による意思表示は、原則として有効です(93条1項本文)。表意者は、真意ではないことを知って意思表示をしているので保護する必要がないのに対し、表意者の真意を知らない相手方を保護すべきであるからです。

5 妥当でない。虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません(民法94条2項)。この場合の第三者は、善意であれば保護され、無過失である必要はありません(大判昭12・8・10)。

 

 

 意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。

2 契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。

3 契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。

4 意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

5 意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

 

正解2

1 妥当でない。相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(97条2項)。この「到達」に関して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されましたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付された場合、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく内容証明郵便を受領することができたなどの事情の下においては、当該意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められます(最判平10・6・11)。したがって、「意思表示が到達したものと認められることはない」とする本肢は妥当ではありません。

2 妥当である。意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができます(98条1項)。公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされます。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じません(98条3項)。

3 妥当でない。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(到達主義。97条1項)。したがって、「承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する」とする本肢は妥当ではありません。

4 妥当でない。意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられません(97条3項)。ただし、契約の申込みの場合は、申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない、こととされています(526条)。したがって、「その申込みは、その効力を有しない」であり、「契約を取り消すことができる」わけではありません。

5 妥当でない。意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったとき(被保佐人及び被補助人は該当しません。)は、その意思表示をもってその相手方に対抗することができません。ただし、①相手方の法定代理人又は②意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方がその意思表示を知った後は、その相手方に対抗することができます(98条の2)。したがって、被保佐人や被補助人を含んだ「制限行為能力者であったとき」とする本肢は妥当ではありません

 

 

 虚偽表示の無効を対抗できない善意の第三者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

2 AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。

3 AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者Cのために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

4 AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

5 AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できない。

 

正解1

1 妥当でない。虚偽表示による意思表示は無効とされ(94条1項)、その無効は、善意の第三者に対抗することができません(94条2項)。「第三者」とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいいます(最判昭45・7・24)。本肢における土地の仮装譲受人が土地上に建築した建物を賃借したCは、仮装譲渡された土地について法律上利害関係を有する者とは認められません(最判昭57・6・8)。したがって、Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できます。

2 妥当である。善意の転得者Dは、民法94条2項の善意の第三者に該当します(最判昭45・7・24)。したがって、Aは、虚偽表示の無効を善意のDに対抗できません。

3 妥当である。仮装譲受人から抵当権設定を受けた善意のCは、民法94条2項の善意の第三者に該当します(大判大4・12・17)。したがって、Aは、虚偽表示の無効を善意のCに対抗できません。

4  妥当である。仮装譲受人名義となった不動産を差し押さえた仮装譲受人の善意の一般債権者Cは、民法94条2項の善意の第三者に該当します(最判昭48・6・28)。したがって、Aは、虚偽表示の無効を善意のCに対抗できません。

5 妥当である。仮装債権の善意の譲受人Dは、民法94条2項の善意の第三者に該当します(大判昭13・12・17)。Aは、虚偽表示の無効を善意のDに対抗できません。

 

 

 無効または取消しに関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。

 

ア BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。

イ BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。

ウ BがAから絵画を購入するに際して、Bに錯誤が認められる場合、その取消しは誰からでも主張することができるから、Bから当該絵画を譲り受けたCも当然に、AB間の売買契約につき錯誤による取消しができる。

エ BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。

オ 未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。

1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ 

 

正解4

ア 妥当でない。錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができます(120条2項)。保証人は、いずれにも該当しないので、主たる債務者の行為を取り消すことができません。

イ 妥当でない。Bは、詐欺による意思表示の取消しを、善意・無過失の第三者Cに対抗することはできませんが(96条3項)、詐欺を行ったAとの契約を取り消すことはできます(96条1項、3項)。

 なお、「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部の譲渡」については、追認をしたものとみなされますが(法定追認。125条5号)、本肢のBはAの詐欺に気づく前にCに転売しているため、法定追認には該当しません。

ウ 妥当でない。錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができます(120条2項)。したがって、「取消しは誰からでも主張することができるから」とする本肢は妥当ではありません。また、Bから当該絵画を譲り受けたCが錯誤による取消しを主張することが可能だとしても、本肢の場合、Bには「錯誤」が認められるだけであり「重要な錯誤」とはされていないため、「当然に」取消しができるわけではありません。

エ 妥当でない。追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、取消権は、時効によって消滅します(126条前段)。追認があったものと推定されるわけではありません。

オ 妥当である。制限行為能力を理由に契約が取り消された場合、制限行為能力者は、原状回復義務を負いますが、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負います(121条の2第3項)。

 

 

 Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 AはBの強迫によって本件売買契約を締結し、Aは強迫を理由とする当該契約の取消しができることを知っていたが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

2 AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。

3 AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。

4 AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、知らなかったことにつき過失がなかった場合でも、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

5 Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。 

 

正解1

1 妥当である。取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します(126条前段)。この「追認をすることができる時」とは、取消し原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時を意味します(124条1項)。本肢において、畏怖の状態が続いている間は、取消しの原因となっていた状況が消滅しているとはいえないため、Aの取消権は消滅せず、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができます。

2 妥当でない。詐欺による意思表示の取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができません(96条3項)。この場合、第三者は善意・無過失であれば保護され、登記を備えている必要はありません(最判昭49・9・26)。

3 妥当でない。強迫による意思表示は、第三者が強迫した場合には、常にこれを取り消すことができます(96条2項反対解釈)。

4 妥当でない。第三者の詐欺により意思表示をした場合、表意者は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたとき(悪意又は有過失)に限り、その意思表示を取り消すことができます(96条2項)。したがって、相手方Bが善意・無過失の場合には取り消すことができません。

5 妥当でない。制限行為能力者が単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術に当たりません(最判昭44・2・13)。本肢において、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことができます。

 

 

 Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した(以下「本件売買契約」という。)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 Aが死亡してBが単独相続した場合、Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。

2 Bが死亡してAの妻DがAと共に共同相続した後、Aも死亡してDが相続するに至った場合、Dは本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。

3 Aが本件売買契約につき追認を拒絶した後に死亡してBが単独相続した場合、Bは本件売買契約の追認を拒絶することができないため、本件売買契約は有効となる。

4 Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。

5 Aが死亡してBがAの妻Dと共に共同相続した場合、Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。

 

正解3

1 妥当である。本人Aが死亡し、無権代理人Bが単独相続した場合、本人Aが自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位がBに生じること、あるいは本人Aの地位に就いた無権代理人が追認を拒絶することは信義則に反することなどを理由に、本人Aを単独相続した無権代理人Bは、追認を拒絶することはできないとしています(最判昭40・6・18、大判昭17・2・25)。

2 妥当である。無権代理人Bを本人Aが妻Dと共同相続した後、本人Aも死亡してDが相続した場合、いったん無権代理人Bを相続しているため、相続人Dは、本人Aの資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人Aが自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるとしています(最判昭63・3・1)。したがって、Dは無権代理行為の追認を拒絶することができません。

3 妥当でない。本人Aが生前に無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、無権代理人Bが本人Aを相続した場合、判例は、本人Aの追認拒絶によって無権代理行為の効力が本人Aに及ばないことが確定するため、無権代理行為は有効とはならないとしています(最判平10・7・17)。

4 妥当である。判例は、本人Aが無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義則に反しないので、Bの無権代理行為はAの相続により当然に有効となるものではないとしています(最判昭37・4・20)。ただし、無権代理人が民法117条により相手方に債務を負担していた場合には、本人は、追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、その債務を免れることができません(最判昭48・7・3)。

5 妥当である。無権代理人Bが本人Aを相続したが、他にも共同相続人Dがいる場合において、判例は、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効とはならないとしています(最判平5・1・21)。

 

 

 Aの子Bが、Aに無断でAの代理人としてA所有の土地をCに売却する契約を結んだ。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 CはAが追認した後であっても、この売買契約を取り消すことができる。

2 Bが未成年者である場合、Aがこの売買契約の追認を拒絶したならば、CはBに対して履行の請求をすることはできるが、損害賠償の請求をすることはできない。

3 Aがこの売買契約の追認を拒絶した後に死亡した場合、BがAを単独相続したとしても無権代理行為は有効にはならない。

4 Aが追認または追認拒絶をしないまま死亡してBがAを相続した場合、共同相続人の有無にかかわらず、この売買契約は当然に有効となる。

5 Cが相当の期間を定めてこの売買契約を追認するかどうかをAに対して回答するよう催告したが、Aからは期間中に回答がなかった場合、Aは追認を拒絶したものと推定される。

 

正解3

1 妥当でない。無権代理の相手方は、本人が追認をしない間は、無権代理人との契約を取り消すことができます(115条本文)。しかし、本人が追認したときは、相手方は取消権を行使することはできなくなります。

2 妥当でない。無権代理人が制限行為能力者であるときは、相手方は、履行の請求も損害賠償の請求もすることができません(117条2項3号)。

3 妥当である。本人が生前に無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、無権代理人が本人を相続した場合、本人の追認拒絶によって無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定するため、無権代理行為は有効とはなりません(最判平10・7・17)。

4 妥当でない。本人が無権代理行為を追認または追認拒絶をしないまま死亡し、無権代理人が本人を単独相続した場合には、無権代理行為は当然に有効となりますが(最判昭40・6・18)、共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理行為は有効となりません(最判平5・1・21)。

5 妥当でない。本人が、相手方が相当の期間を定めてした催告に対して確答をしないときは、追認を拒絶したものと「みなされます」(114条後段)。「推定される」ではありません

 

 

 代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

2 未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人である母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行ったCとの間の当該建物への抵当権設定契約は、自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する。

3 A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったときには、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。

4 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買った場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。

5 Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張することはできない。

 

1 妥当でない。権限の定めのない代理人は、①保存行為、②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為に限り、することができます(103条)。Bの行為は、②の利用行為であり、代理権の範囲内の行為であるため、その効果はAに帰属します。

2 妥当でない。母Bが自己の債務のため、未成年者である子Aの建物に抵当権を設定する行為は「利益相反行為」となり、親権者の利益相反行為については、特別の規定があり、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません(826条1項、最判昭37・10・2)。本条に違反して、親権者が代理行為を行った場合、当該行為は無権代理となります(最判昭46・4・20)。

3 妥当でない。代理人Bが自ら買主となることは、「自己契約」に該当し、債務の履行又は本人があらかじめ許諾した場合以外は無権代理行為とみなされ、その効果は本人Aに帰属しません(108条1項)。

4 妥当である。代理人は行為能力者である必要はありません(102条本文)。代理人Bが未成年者であっても、Aは、Bが未成年であることを理由に売買契約の取消しをCに主張することはできません。

5 妥当でない。代理人が詐欺を行った場合には、本人がそのことについて善意・無過失であっても、相手方は、代理人との契約を取り消すことができます(96条1項)。

 

 

 代理人と使者の違いに関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。

2 代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。

3 代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理人の相手方に対してした意思表示の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。

4 代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が取り消される可能性がある。

5 代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。

 

正解3

1 妥当でない。代理には直接法律の規定によって代理権が生ずる「法定代理」と本人の意思に基づいて代理権が生ずる「任意代理」があります。「任意代理」は、委任契約に限らず、組合契約、雇用契約などによっても発生します。

2 妥当でない。代理人は代理権授与のときに意思能力は必要ですが、行為能力は不要です(102条本文)。一方、使者は、その選任のときに、意思能力も行為能力も不要です。

3 妥当である。代理人は本人のために自ら法律行為を行うため、代理人が相手方に対してした意思表示の瑕疵は、代理人について決します(101条1項)。一方、使者は本人の意思決定を伝達するにすぎないため、意思表示の瑕疵は、本人について決します

4 妥当でない。代理人が与えられた権限の範囲を逸脱して法律行為を行った場合、本人が追認すると契約の時にさかのぼって本人に対して効力を生じます(116条)。また、追認がない場合でも表見代理が成立することによって本人に対して効力が生ずる場合があります(110条)。これに対し、使者が本人の真意と異なる意思を伝達した場合、錯誤の問題として、その意思表示が取り消される可能性があります。

5 妥当でない。法定代理では、代理人は本人に無断で復代理人を選任することができますが(105条前段)、任意代理では、代理人は本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができません(104条)。これに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないため、原則として本人に無断で別の使者を選任することができると解されています。

 

 

 代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 代理人が代理行為につき、相手方に対して詐欺を行った場合、本人がその事実を知らなかったときであっても、相手方はその代理行為を取り消すことができる。

2 無権代理行為につき、相手方が本人に対し、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告を行った場合において、本人が確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

3 代理人が本人になりすまして、直接本人の名において権限外の行為を行った場合に、相手方においてその代理人が本人自身であると信じ、かつ、そのように信じたことにつき正当な理由がある場合でも、権限外の行為の表見代理の規定が類推される余地はない。

4 代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合において、復代理人が代理行為の履行として相手方から目的物を受領したときは、同人はこれを特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負う。

5 無権代理行為につき、善意の相手方はこれを取り消すことができるが、この取消しは本人が追認しない間に行わなければならない。

 

正解3

1 妥当である。代理人による詐欺は、本人による詐欺と同視できるので、相手方は詐欺による意思表示を取り消すことができます(96条1項)。なお、本肢については、民法101条の適用はありません。

2 妥当である。無権代理行為につき相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなします(114条)。

3 妥当でない。判例は、「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずるものと解するのが相当である。」と判示する(最判昭44・12・19)。したがって「表見代理の規定が類推される余地はない」とする本肢は、妥当ではありません。

4 妥当である。判例は、「復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負い、もし復代理人において代理人にこれを引渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務もまた消滅するものと解するのが相当である。」と判示します(最判昭51・4・9)。

5 妥当である。代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、善意の相手方が取り消すことができます(115条)。相手方の取消しは本人が追認しない間に行わなければなりません。

 

 

 時効の完成猶予・更新の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

 

1 債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効の更新があった場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効の更新の効力を否定することはできない。

2 物上保証人Aに対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者Bに送達した場合には、被担保債権について消滅時効の完成が猶予される。

3 要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新したときは、時効の更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

4 甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の更新をすれば、時効の更新の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

5 A所有の甲地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、Bについてのみ時効の完成の猶予があったときは、Bの取得時効のみ完成が猶予され、Cの取得時効の完成は猶予されない。 

 

正解4

1 正しい。判例は、物上保証人が、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効の更新の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、許されないとしています(最判平7・3・10)。

2 正しい。担保権の実行としての競売は、「強制執行等」に該当し、時効の完成猶予事由にあたります(148条1項3号)。この手続については、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の完成は猶予されません(154条)。物上保証人に対して債権者が競売申立てをして、その後競売開始決定がされ、債務者にその決定正本が送達された場合、この「送達」が通知に当たり、被担保債権についての消滅時効の完成は猶予されます(最判昭50・11・21)。

3 正しい。要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生じます(292条)。Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を更新しても、時効更新の効力はA・B・Cの3人に及びます。

4 誤り。共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、効力を生じません(284条2項)。したがって、Dは、A・B・Cの全員に対して時効の更新をしなければその効力は、A・B・Cの3人に及びません。

5 正しい。時効の完成猶予は、当事者及びその承継人の間においてのみ効力を有します(相対的効力。153条)。したがって、Bについてのみ時効の完成猶予があったときは、Bの取得時効のみ完成が猶予され、Cの取得時効の完成は猶予されません。

 

 

 AのBに対する甲債権につき消滅時効が完成した場合における時効の援用権者に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものの組合せはどれか。

 

ア Aが甲債権の担保としてC所有の不動産に抵当権を有している場合、物上保証人Cは、Aに対して債務を負っていないが、甲債権が消滅すれば同不動産の処分を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

イ 甲債権のために保証人となったDは、甲債権が消滅すればAに対して負っている債務を免れる地位にあるため、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

ウ Bの詐害行為によってB所有の不動産を取得したEは、甲債権が消滅すればAによる詐害行為取消権の行使を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

エ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、Aの後順位抵当権者Fは、Aの抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当しないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

オ Aが甲債権の担保としてB所有の不動産に抵当権を有している場合、同不動産をBから取得したGは、甲債権が消滅すれば抵当権の負担を免れる地位にあるが、このような利益は反射的なものにすぎないため、甲債権につき消滅時効を援用することができない。

 

1 ア・イ 

2 ア・エ 

3 イ・オ 

4 ウ・エ 

5 ウ・オ

 

ア 正しい。物上保証人Cは、被担保債権の消滅時効の援用をすることができます(145条カッコ書)。

イ 正しい。保証人Dは、主たる債務の消滅時効の援用をすることができます(145条カッコ書)。

ウ 誤り。被保全債権における詐害行為の受益者Eは、消滅時効の援用をすることができます(最判平10・6・22)。

エ 正しい。後順位抵当権者Fは、先順位抵当権者Aの被担保債権の消滅時効を援用できません(最判平11・10・21)。

オ 誤り。抵当不動産の第三取得者Gは、甲債権につき消滅時効の援用をすることができます(145条カッコ書)。

 以上により、誤っているのはウ及びオとなり、5が正解となります。

 

 

 Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。

 

1 Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間

2 Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間

3 Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間

4 Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間

5 Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

 

正解3

1 時効取得できる。Aが善意無過失で10年間占有しているので、Aの占有のみを主張し、甲不動産を時効取得できます。

2 時効取得できる。AがBの18年間の占有と自己の2年間の占有を併せて主張すれば、Aは甲不動産を時効取得できます。

3 時効取得できない。AがBの占有期間を併せても、悪意で10年間にしかならないため、Aは甲不動産を時効取得できません。

4 時効取得できる。AがBの占有期間を併せると、善意無過失の10年間になり、Aは甲不動産を時効取得できます。

5 時効取得できる。AがBの占有期間を併せると、善意無過失の10年間になり、Aは甲不動産を時効取得できます。なお、善意無過失の判断は、占有開始時点で判断すればよいこととされています(最判昭53・3・6)。

 

4月15日現在

終了レッスン数:504

総学習時間:107時間5400