こんにちは、おっさんです。

今朝は、いつもより早く起きたので

その分はやめに勉強を始めました。

 

セレクト過去問集-憲法1

の結果は、16問中、12問正解でした。

 

 私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

 

1 私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

2 私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。

3 性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない。

4 自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。

5 企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることはできない。

 

正解4

1 誤り。最高裁判所は、私法上の法律関係については、「間接適用説」をとるので、「私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼす」ことはできません(三菱樹脂事件。最大判昭48・12・12)。

2 誤り。最高裁判所は、私法上の法律関係については、「間接適用説」をとるので、「学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。」とする本肢は誤りです(昭和女子大事件。最判昭49・7・19)。

3 誤り。最高裁判所は、私法上の法律関係については、「間接適用説」をとるので、性別による差別について、「民法90条の規定により無効である。」としています(日産自動車事件。最判昭56・3・24)。「憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになる」とする本肢は誤りです。

4 正しい。判例は、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けないとしています(百里基地事件。最判平元・6・20)。

5 誤り。最高裁判所は、「企業者は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」としています(三菱樹脂事件。最大判昭48・12・12)。したがって、「労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されない」とする本肢は誤りとなります。

 

 

 憲法13条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。

2 幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。

3 プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。

4 プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。

5 憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。

 

 

正解3

1 誤り。通説は憲法に規定されていない「新しい人権」といわれるものも、13条を根拠として具体的権利性が認められると解しています。そして判例も13条に基づいていわゆる「肖像権」などを認めたりしているので(最大判昭44・12・24)、「新しい人権」について13条を根拠とした具体的権利性を認めていると考えられます。したがって、「プログラム規定だという立場をとる」とする本肢は誤りです。

2 誤り。本肢は、「人格的利益説」に関するものであり、「一般的行為自由説」に関するものではありません。

3 正しい。プライバシーの権利については、消極的側面と並んで、自己に関する情報をコントロールする権利も認めている見解が重視されています。

 

4 誤り。プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつという点は「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義する(「宴のあと」事件。東京地判昭39・9・28)などから正しい記述といえます。一方、自己決定権とは、私的事項について公権力の干渉を受けずに自ら決定できる権利と解されているため、「公法上」だけでなく、「私法上」の問題を取り扱うこともあります。

5 誤り。最高裁判所はプライバシー権について定義したことはありませんが、地方裁判所の判決では、プライバシーの権利を個人の私的領域への干渉を排除するという自由権的・消極的側面を重視して、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義しています(「宴のあと」事件の第一審判決。東京地判昭39・9・28)。したがって、1970年(昭和45年)以降に初めて私法上の人格権が認められたわけではありません。

 

 

 次の文章のうち、そこで想定される「実質的意味の憲法」の理解の仕方が、憲法学における伝統的な分類に従えば、他とは異なっているものはどれか。

 

1 権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、憲法をもっているとはいえない。

2 固有の意味での憲法を論ずるには、古代憲法、中世憲法、近代憲法、現代憲法の順で、社会の基本構造を歴史的に叙述する必要がある。

3 日本の憲法の歴史は、大日本帝国憲法の制定につながる、西洋諸国に対する「開国」を出発点として、叙述されなくてはならない。

4 近代立憲主義が定着したフランス第三共和制においては、その体制の基本を定める法律を「憲法的」と形容して、憲法的法律と呼んでいた。

5 絶対君主制とは区別された意味での立憲君主制が、19世紀ヨーロッパの憲法体制では広く普及し、明治時代の日本もこれにならった。

 

正解2

1 立憲的意味の憲法の意味。「権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、憲法をもっているとはいえない。」としているため、立憲的意味の憲法の意味として理解されています。

2 固有の意味の憲法の意味。「固有の意味」や「古代憲法」などは立憲主義に基づいていないことから固有の意味の憲法として理解されています。

3 立憲的意味の憲法の意味。「西洋諸国に対する「開国」を出発点として、叙述されなくてはならない」としているため、立憲的意味の憲法の意味として理解されています。

4 立憲的意味の憲法の意味。「近代立憲主義」から、立憲的意味の憲法の意味として理解されています。

5 立憲的意味の憲法の意味。「絶対君主制とは区別された意味での立憲君主制」から、立憲的意味の憲法の意味として理解されています。

 

 

 外国人の憲法上の権利に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

 

1 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されず、また、この自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される。

2 日本に在留する外国人のうちでも、永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特に緊密な関係を持っている者に、法律によって地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与することは、憲法上禁止されない。

3 普通地方公共団体は、条例等の定めるところによりその職員に在留外国人を採用することを認められているが、この際に、その処遇について合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることは許される。

4 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国はその政治的判断によって決定することができ、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たって、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。

5 外国人は、憲法上日本に入国する自由を保障されてはいないが、憲法22条1項は、居住・移転の自由の一部として海外渡航の自由も保障していると解されるため、日本に在留する外国人が一時的に海外旅行のため出国し再入国する自由も認められる。

 

正解5

1 妥当である。判例は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、同条(13条)の趣旨に反して許されず、また、右の自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される」と判示しています。しかし、「外国人登録法の指紋押なつ制度は、外国人の居住関係及び身分関係を明確にするための最も確実な制度であり、その立法目的には合理性・必要性があり、憲法13条に違反しない。」とも判示しています(指紋押捺拒否事件。最判平7・12・15)。

2 妥当である。判例は、法律によって地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与することは、憲法上禁止されないと判示しています(外国人地方選挙事件。最判平7・2・28)。

3 妥当である。判例は、普通地方公共団体が合理的な理由に基づいて日本の国籍を有する職員と在留外国人である職員について、異なる取扱いをしても憲法14条1項に違反しないと判示しています(東京都管理職試験事件。最大判平17・1・26)。

4 妥当である。判例は、本肢のような社会権については、外国人に基本的人権の保障が及ばないとしています(塩見訴訟。最判平元・3・2)。

5 妥当でない。判例によれば、海外渡航の自由は、憲法22条2項によって保障されます(帆足事件。最大判昭33・9・10)。しかし、我が国に在留する外国人は、外国へ一時旅行する自由を憲法上保障されておらず、再入国の自由認められていません(森川キャサリーン事件。最判平4・11・16)。

 

 

 外国人の人権に関する次の文章のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

 

1 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。

2 わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。

3 政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。

4 国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。

5 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。

 

正解1

1 妥当でない。判例は、「何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有し、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反し許されず、また、右自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される」と判示しています(指紋押捺拒否事件。最判平7・12・15)。したがって、「外国人にまで及ぶものではない」とする本肢は妥当ではありません

2 妥当である。判例は、「わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由保障されているものではない。」と判示しています(森川キャサリーン事件。最判平4・11・16)。

3 妥当である。判例は、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」と判示しています(マクリーン事件。最大判昭53・10・4)。

4 妥当である。判例は、「国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。」と判示しています(東京都管理職試験事件。最大判平17・1・26)。

5 妥当である。判例は、「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」としています(塩見訴訟。最判平元・3・2)。

 

 

 次の文章は、参議院内閣委員会で食育基本法案が議論された折のある議員の発言を、その趣旨を変更しないようにして要約したものである。この発言の趣旨と明白に対立する見解はどれか。

 

 「更にちょっと深く議論を進めたいんですけれども、(法案の)13条に国民の責務という条文がございます。これについては先ほどの議論の中で努力規定という表現が提案者の方から聞かれましたけれども、しかしやはり国民の責務ときっちりうたっているわけでございます。」

 「この健全な食生活に努めるという責務、これをなぜ国民は負わなければいけないんだろう。」「裏を返すと、不健康でもそれは自己責任じゃないかという、こういう議論もまたあるわけです。」

 「そして、やはり自分が自分の健康を害することに対して何らかの制約を課す、これは法律用語でいいますと」、「自己加害の防止」であり、「これパターナリスティックな制約といいます。」「で、自己加害に対して国家が公権力として介入するのは原則許されないわけですね、これは法律論として。」

 しかし、「未成年の人格的自立の助長や促進というものに関しては、限定的だけれどもこのパターナリスティックな制約は認められるであろうという、これが一つの法律の議論なんです。」

(出典 参議院内閣委員会会議録平成17年5月19日)

 

1 文明社会の成員に対し、彼の意志に反し、正当に権力を行使しうるのは、他人に対する危害の防止を目的とする場合である。

2 日本国憲法がよって立つところの個人の尊重という思想は、相互の人格が尊重され、不当な干渉から自我が保護されることによってはじめて確実なものとなる。

3 人の人生設計全般にわたる包括的ないし設計的な自律権の立場から、人の生と死についてのそのときどきの不可逆的な決定について、例外的に制約することは認められる。

4 その人間がどういう将来を選びたいと考えるかよりも、その人間がどういう将来性を有しているかという観点を優先するのは、憲法の「個人の尊重」原理の要請である。

5 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

 

正解4

1 明白に対立する見解ではない。国家権力の行使が「他人に対する危害の防止を目的とする」ことは、「自己加害は原則自由である」ことと明白に対立する見解とはいえません。

2 明白に対立する見解ではない。「相互の人格が尊重され、不当な干渉から自我が保護される」という本肢の記述は、「自己加害は原則自由である」ことと合致する見解です。

3 明白に対立する見解ではない。本問における発言の中は「未成年の人格的自立の助長や促進というものに関しては、限定的だけれどもこのパターナリスティックな制約は認められるであろう」としています。このことは、本肢の「人の生と死についてのそのときどきの不可逆的な決定について、例外的に制約することは認められる」とする部分と合致するものです。

4 明白に対立する見解である。「自己加害は原則自由で、国家が介入することは原則として許されない」ということであれば、「その人間がどういう将来を選びたいと考えるか」ということが優先されるはずです。このことから、本問の発言の趣旨に明白に対立する見解であるといえます。

5 明白に対立する見解ではない。「自由及び幸福追求に対する国民の権利について・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」ということは、「自己加害は原則自由」とする発言の趣旨に反するものではありません。

 

 

 私人間における人権規定の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の述べるところはどれか。

 

1 憲法の定める基本的人権のうち重要なものは、単に国家権力に対する自由権を保障するのみではなく、社会生活の秩序原理でもある。これは、一定の範囲において、国民相互の法律関係に対して直接の意味を有する。

2 人の思想、信条は身体と同様本来自由であるべきものであり、その自由は憲法19条の保障するところでもあるから、企業が労働者を雇用する場合等、一方が他方より優越した地位にある場合に、その意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白である。

3 日本国憲法は価値中立的な秩序ではなく、その基本的人権の章において客観的な価値秩序を定立している。この価値体系は、憲法上の基本決定として、法のすべての領域で通用する。いかなる民法上の規定もこの価値体系と矛盾してはならず、あらゆる規定はこの価値体系の精神において解釈されなければならない。

4 私人による差別的行為であっても、それが公権力との重要な関わり合いの下で生じた場合や、その私人が国の行為に準じるような高度に公的な機能を行使している場合には、法の下の平等を定める憲法14条が直接に適用される。

5 憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない。

 

正解5

1 最高裁判所の述べるところではない。本肢は、「国民相互の法律関係に対して直接の意味を有する」とする直接適用説の見解をとっています。

2 最高裁判所の述べるところではない。本肢は、「その意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白である」とする直接適用説の見解をとっています。

3 最高裁判所の述べるところではない。「法のすべての領域で通用する」とする直接適用説の見解をとっています。

4 最高裁判所の述べるところではない。「憲法14条が直接に適用される」とする直接適用説の見解をとっています。

5 最高裁判所の述べるところである。最高裁判所は、人権規定の私人間適用について間接適用説の立場に立っています(三菱樹脂事件。最大判昭48・12・12)。

 

 

 次の文章は、自衛隊基地建設のために必要な土地の売買契約を含む土地取得行為と憲法9条の関係を論じた、ある最高裁判所判決の一部である(原文を一部修正した。)。ア~オの本来の論理的な順序に即した並び順として、正しいものはどれか。

 

ア 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である。

イ 私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範が、そのままの内容で民法90条にいう「公ノ秩序」の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない。

ウ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によつて相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する。

エ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範にかかわる私法上の行為については、私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

オ 憲法9条は、人権規定と同様、国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうるものであることはいうまでもない。

 

1 ア イ ウ エ オ

2 イ ウ エ オ ア

3 ウ エ オ ア イ

4 エ オ ア イ ウ

5 オ ア イ ウ エ

 

正解5

 肢アは、「憲法9条の宣明する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である」。

 肢イは「私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する規範は、私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない」。

 肢ウは「憲法9条の宣明する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する」。

 肢エは「私法的な価値秩序のもとにおいて、反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になる」。

 以上により、ア・イ・ウ・エがそのままの順で繋がっていることがわかります。

 そして肢オは「憲法9条は、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうる」としており、上記の4つの肢に対応しておらず、また、4つの肢の後に繋がるものではないため、4つの肢の最初に付けるのが一番妥当といえます。

 したがって、オ・ア・イ・ウ・エの順とする5が正解となります。

 

 

 プライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 何人も、その承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない自由を有するので、犯罪捜査のための警察官による写真撮影は、犯人以外の第三者の容貌が含まれない限度で許される。

2 前科は、個人の名誉や信用に直接関わる事項であるから、事件それ自体を公表することに歴史的または社会的な意義が認められるような場合であっても、事件当事者の実名を明らかにすることは許されない。

3 指紋は、性質上万人不同、終生不変とはいえ、指先の紋様にすぎず、それ自体では個人の私生活や人格、思想等個人の内心に関する情報ではないから、プライバシーとして保護されるものではない。

4 犯罪を犯した少年に関する犯人情報、履歴情報はプライバシーとして保護されるべき情報であるから、当該少年を特定することが可能な記事を掲載した場合には、特段の事情がない限り、不法行為が成立する。

5 いわゆる住基ネットによって管理、利用等される氏名・生年月日・性別・住所からなる本人確認情報は、社会生活上は一定の範囲の他者には当然開示されることが想定され、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。

 

正解5

1 妥当でない。判例は、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」としながら、「個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法2条1項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。」と判示しています(京都府学連事件。最大判昭44・12・24)。

2 妥当でない。判例は、「歴史的または社会的な意義が認められるような場合には、事件当事者の実名を明らかにすることは許されないとはいえない」と判示しています(ノンフィクション「逆転」事件。最判平6・2・8)

3 妥当でない。判例は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する。」と判示しています(指紋押捺拒否事件。最判平7・12・15)。

4 妥当でない。判例は、本肢のような場合、特段の事情がない限り不法行為が成立すると判示しているわけではありません(少年犯罪推知報道事件。最判平15・3・14)。

5 妥当である。判例は、「住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討するに、住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。」と判示しています(住基ネット訴訟。最判平20・3・6)。

 

 

次の文章は、平等原則について、先例として引用されることの多い最高裁判所判決の一部である。文中の空欄 ア ~ エ にあてはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 

 思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令(齢)であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は ア なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令(齢)であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告の・・・・・主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し イ な平等を保障したものではなく、差別すべき ウ  な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、 エ に即応して ウ と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。

              (最大判昭和39年5月27日民集18巻4号676頁以下)

 

    ア     イ     ウ      エ

1 具体的  形式的  客観的  事柄の性質

2 例示的  絶対的  合理的  公共の福祉

3 例示的  相対的  合理的  事柄の性質

4 具体的  一般的  実質的  公共の福祉

5 例示的  絶対的  合理的  事柄の性質

 

正解5

まず、アには「例示的」が入ります。アの後に「必ずしもそれに限るものではない」とあるためです。

 イには「絶対的」が、ウには「合理的」がそれぞれ入ります。「国民に対し イ な平等を保障したものではなく、」とあるので、語群を確認すると「絶対的」が一番適切といえます。「差別すべき ウ な理由なくして差別することを禁止している」とありますので、「実質的」「合理的」と比較すると、後者が適切です。

 エには「事柄の性質」が入ります。選択肢2及び4の「公共の福祉」は基本的人権を制約するものであり、「 エ に即応して合理的と認められる差別的取扱をすること」に当てはめても文意が通らないため、残った「事柄の性質」が入ります。

 

 

 次の文章は、衆議院議員選挙の効力を争った、ある高等裁判所判決の一節である。当時の公職選挙法別表に定められた選挙区への定数配分については、先の総選挙に関し、最高裁判所が、客観的には違憲状態であるが、なお選挙時には改正に必要な合理的期間を徒過していなかったことを理由に、合憲判断を下していた。高裁判決では、こうした状態の下で解散総選挙が行われた事案に関して、憲法判断が求められている。そこで扱われた問題を論じた文章として、妥当なものはどれか。

 

 被告は、本件選挙は内閣の衆議院解散権の行使によるものであるところ、このような選挙については、投票価値の較差を是正したうえでこれを行うかどうかは立法政策の問題である旨主張する。

 本件選挙が内閣の衆議院解散権の行使に基づくものであることは公知の事実であるが、前記の較差是正を行うべき合理的期間は、選挙権の平等を害するような較差を生ぜしめる議員定数配分規定がその間において改正されることを合理的に期待しうるに足る期間なのであるから、右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえないのであり、右期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない。その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは事柄の性質上やむをえないことであり、以上とは逆に、内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう。

           (東京高判昭和59年10月19日行集35巻10号1693頁以下)

 

1 この判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ、という立場にたっている。

2 内閣の解散権行使の結果行われた総選挙について、その無効を争う選挙訴訟は三審制であって、本件は控訴審判決である。

3 この判決は、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場にたっている。

4 本件訴訟は、公職選挙法の定める選挙訴訟として行われているので、いわゆる機関訴訟の1形態と位置づけられるものである。

5 この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっている。

 

正解5

1 妥当でない。本問の判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的である旨を論じていません

2 妥当でない。衆議院議員の選挙の効力に関する訴訟は、第一審が高等裁判所の管轄とされています(公職選挙法204条)。本問の判決は東京高等裁判所の判決ですので、控訴審判決ではありません。難問です。

3  妥当でない。本問の判例では、「内閣の解散権の行使によるものであっても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない」や「内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう」などから、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場に立っているとはいえません。

4 妥当でない。本件訴訟は、公職選挙法上の選挙の効力に関する訴訟(公職選挙法204条)であるため、行政事件訴訟法上の民衆訴訟に位置付けられます(行政事件訴訟法5条)。機関訴訟ではありません

5 妥当である。本問の判例は「較差是正を行うべき合理的期間は、・・・右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえない」ということから、本肢は妥当です。

 

 

 次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。空欄 ア ~ エ に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

 

 「公職選挙法の制定又はその改正により具体的に決定された選挙区割と議員定数の配分の下における選挙人の投票の有する ア に不平等が存し、あるいはその後の イ の異動により右のような不平等が生じ、それが国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般に ウ 性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、もはや国会の ウ 的裁量の限界を超えているものと推定され、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、憲法違反と判断されざるを得ないものというべきである。

 もっとも、制定又は改正の当時合憲であった議員定数配分規定の下における選挙区間の議員一人当たりの選挙人数又は イ (この両者はおおむね比例するものとみて妨げない。)の較差がその後の イ の異動によって拡大し、憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至つた場合には、そのことによって直ちに当該議員定数配分規定が憲法に違反するとすべきものではなく、憲法上要求される ウ 的 エ 内の是正が行われないとき初めて右規定が憲法に違反するものというべきである。」

                       (最大判昭和60年7月17日民集39巻5号1100頁以下)

[語群]

  • 1 羈束
  • 2 数量
  • 3 地域
  • 4 人事
  • 5 権力
  • 6 価値
  • 7 人工
  • 8 結果
  • 9 票決
  • 10 厳格
  • 11 期間
  • 12 効果
  • 13 機関
  • 14 囲繞
  • 15 合理
  • 16 関連
  • 17 人口
  • 18 明確
  • 19 要件
  • 20 秩序
 
正解 ア 6 価値 イ 17 人口 ウ 15 合理 エ 11 期間

 アには、「選挙人の投票の有する ア に不平等が存し・・・憲法違反と判断され」るということから、「6 価値」が入ります。

 イには、「議員一人当たりの選挙人数又はイの較差がその後のイの異動によって拡大」とういうことから、「17 人口」が適切です。

 ウとエには、「直ちに・・・違反するとすべきものではなく、憲法上要求される ウ 的 エ 内の是正が行われないとき初めて右規定が憲法に違反する」ということから、何らかの「期間」に関する語句が入りそうであり、そうすると「合理的期間」が思い浮かぶため、ウには「15 合理」、エには「11 期間」が入ります。

 

 

次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

 

 憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。

 日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。

               (最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

1 立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。

2 憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。

3 憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。

4 本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

5 取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

 

次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

 

 憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。

 日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。

               (最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

1 立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。

2 憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。

3 憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。

4 本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

5 取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

 

正解3

1 読み取れる。本判例の第一段落最後の文「なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。」という部分から、本肢の「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。」が読み取れます。

2 読み取れる。本判例の第一段落中程の文「しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。」の部分から、「裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる」ということが読み取れます。

3 読み取れない。本判決文では、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合について触れていませんので、読み取ることはできません。

4 読み取れる。本判例の第二段落「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに・・・・慎重に検討することが必要である。」の部分から「国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる」が読み取れます。

5 読み取れる。本判例の第二段落「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。」から、「取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。」ということが読み取れます。

 

 

 次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。空欄 ア ~ ウ に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 

 一般に、立法府が違憲な ア 状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が イ 原則違反であるような場合には、司法権がその ア に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的 ウ 解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。

    (最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)

 

   ア      イ         ウ

1 不作為   比例        限定

2 作為     比例         限定

3 不作為   相互主義      有権

4 作為     法の下の平等   拡張

5 不作為   法の下の平等   拡張

 

正解5

ア には「作為」又は「不作為」が入りますが、問題文後半に「未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られている」とあるため、「不作為」が入ります。

イ には「比例」又は「法の下の平等」が入りますが、問題文に「著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するため」とあるため、「法の下の平等」が入ります。

ウ には「限定」又は「拡張」が入りますが、問題文後半に「具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、・・・・・司法権が現行法の合理的 ウ 解釈により違憲状態の解消を目指す」とあるため、「拡張」が入ります。

 以上により5が正解となります。

 

 

 投票価値の平等に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 議員定数配分規定は、その性質上不可分の一体をなすものと解すべきであり、憲法に違反する不平等を生ぜしめている部分のみならず、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。

2 投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となるが、不均衡の是正のために国会に認められる合理的是正期間を経過していなければ、事情判決の法理により選挙を有効とすることも許される。

3 衆議院議員選挙については、的確に民意を反映する要請が強く働くので、議員1人当たりの人口が平等に保たれることが重視されるべきであり、国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない。

4 参議院議員選挙区選挙は、参議院に第二院としての独自性を発揮させることを期待して、参議院議員に都道府県代表としての地位を付与したものであるから、かかる仕組みのもとでは投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない。

5 地方公共団体の議会の議員の定数配分については、地方自治の本旨にもとづき各地方公共団体が地方の実情に応じ条例で定めることができるので、人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない。

 

正解1

1 妥当である。判例は、議員定数配分規定について、「その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。」と判示しています(衆議院議員定数違憲判決。最大判昭51・4・14)。

2 妥当でない。判例は、合理的期間内における是正が憲法上要求されているにもかかわらず、それが行われない場合に初めて憲法違反となるとしており、「投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となる」という判断はしていません(衆議院議員定数違憲判決。最大判昭51・4・14など)。さらに事情判決の法理により選挙を有効とするのは、当該選挙が違憲・違法であることを前提としなければならないので、この点においても妥当ではありません。

3 妥当でない。判例は、「憲法は、前記投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他にしんしやくすることのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができる」と判示しています(衆議院議員定数違憲判決。最大判昭51・4・14)。本肢のように「国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない」わけではありません。

4 妥当でない。判例は、「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」と判示しています(参議院議員定数不均衡訴訟。最大判平24・10・17)。したがって、「かかる仕組みのもとでは投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない」とする本肢は妥当ではありません。

5 妥当でない。判例は「地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求していることが明らかである。」と判示しています(最判昭59・5・17)。したがって、「人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない。」とする本肢は妥当ではありません。

 

 

 家族・婚姻に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。

2 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。

3 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。

4 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。

5 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。

 

正解4

1 妥当でない。最高裁判所は、「法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。遅くとも被相続人の相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。」と判示します(最大決平25・9・4)。したがって、「法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する」とする本問は妥当ではありません。

2 妥当でない。最高裁判所は、「本件区別については、これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は、我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており、今日において、国籍法3条1項の規定は、日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課するものとなっているというべきである。」と判示しています(最大判平20・6・4)。したがって、「立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる」とする本問は妥当ではありません。

3 妥当でない。最高裁判所は、「戸籍法の規定のうち,出生の届出に係る届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきものと定める部分は、憲法14条1項に違反しない。」と判示しています(最判平25・9・26)。

4 妥当である。最高裁判所は、100日を超えて女性の再婚を禁止する旧民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至ったと判示しています(最大判平27・12・16)。

5 妥当でない。最高裁判所は、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるとは判示していません(最大判平27・12・16)

 

 

4月10日現在

終了レッスン数:492

総学習時間:103時間3030