こんにちは、おっさんです。

前回の続きです。

 

次の文章は、自衛隊基地建設のために必要な土地の売買契約を含む土地取得行為と憲法9条の関係を論じた、ある最高裁判所判決の一部である(原文を一部修正した。)。ア~オの本来の論理的な順序に即した並び順として、正しいものはどれか。

 

ア 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である。

イ 私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範が、そのままの内容で民法90条にいう「公ノ秩序」の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない。

ウ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によつて相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する。

エ 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範にかかわる私法上の行為については、私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

オ 憲法9条は、人権規定と同様、国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうるものであることはいうまでもない。

 

1 ア イ ウ エ オ

2 イ ウ エ オ ア

3 ウ エ オ ア イ

4 エ オ ア イ ウ

5 オ ア イ ウ エ

 

各選択肢を要約してみると、

 肢アは、「憲法9条の宣明する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である」。

 肢イは「私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する規範は、私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない」。

 肢ウは「憲法9条の宣明する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する」。

 肢エは「私法的な価値秩序のもとにおいて、反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になる」。

 以上により、ア・イ・ウ・エがそのままの順で繋がっていることがわかります。

 そして肢オは「憲法9条は、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たつて、その指導原理となりうる」としており、上記の4つの肢に対応しておらず、また、4つの肢の後に繋がるものではないため、4つの肢の最初に付けるのが一番妥当といえます。

 したがって、オ・ア・イ・ウ・エの順とする5が正解となります。

 

 

プライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 何人も、その承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない自由を有するので、犯罪捜査のための警察官による写真撮影は、犯人以外の第三者の容貌が含まれない限度で許される。

2 前科は、個人の名誉や信用に直接関わる事項であるから、事件それ自体を公表することに歴史的または社会的な意義が認められるような場合であっても、事件当事者の実名を明らかにすることは許されない。

3 指紋は、性質上万人不同、終生不変とはいえ、指先の紋様にすぎず、それ自体では個人の私生活や人格、思想等個人の内心に関する情報ではないから、プライバシーとして保護されるものではない。

4 犯罪を犯した少年に関する犯人情報、履歴情報はプライバシーとして保護されるべき情報であるから、当該少年を特定することが可能な記事を掲載した場合には、特段の事情がない限り、不法行為が成立する。

5 いわゆる住基ネットによって管理、利用等される氏名・生年月日・性別・住所からなる本人確認情報は、社会生活上は一定の範囲の他者には当然開示されることが想定され、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。

 

1 妥当でない。判例は、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」としながら、「個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法2条1項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。」と判示しています(京都府学連事件。最大判昭44・12・24)。

2 妥当でない。判例は、「歴史的または社会的な意義が認められるような場合には、事件当事者の実名を明らかにすることは許されないとはいえない」と判示しています(ノンフィクション「逆転」事件。最判平6・2・8)

3 妥当でない。判例は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する。」と判示しています(指紋押捺拒否事件。最判平7・12・15)。

4 妥当でない。判例は、本肢のような場合、特段の事情がない限り不法行為が成立すると判示しているわけではありません(少年犯罪推知報道事件。最判平15・3・14)。

5 妥当である。判例は、「住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討するに、住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。」と判示しています(住基ネット訴訟。最判平20・3・6)。

 

 

次の文章は、衆議院議員選挙の効力を争った、ある高等裁判所判決の一節である。当時の公職選挙法別表に定められた選挙区への定数配分については、先の総選挙に関し、最高裁判所が、客観的には違憲状態であるが、なお選挙時には改正に必要な合理的期間を徒過していなかったことを理由に、合憲判断を下していた。高裁判決では、こうした状態の下で解散総選挙が行われた事案に関して、憲法判断が求められている。そこで扱われた問題を論じた文章として、妥当なものはどれか。

 

 被告は、本件選挙は内閣の衆議院解散権の行使によるものであるところ、このような選挙については、投票価値の較差を是正したうえでこれを行うかどうかは立法政策の問題である旨主張する。

 本件選挙が内閣の衆議院解散権の行使に基づくものであることは公知の事実であるが、前記の較差是正を行うべき合理的期間は、選挙権の平等を害するような較差を生ぜしめる議員定数配分規定がその間において改正されることを合理的に期待しうるに足る期間なのであるから、右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえないのであり、右期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない。その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは事柄の性質上やむをえないことであり、以上とは逆に、内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう。

           (東京高判昭和59年10月19日行集35巻10号1693頁以下)

 

1 この判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ、という立場にたっている。

2 内閣の解散権行使の結果行われた総選挙について、その無効を争う選挙訴訟は三審制であって、本件は控訴審判決である。

3 この判決は、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場にたっている。

4 本件訴訟は、公職選挙法の定める選挙訴訟として行われているので、いわゆる機関訴訟の1形態と位置づけられるものである。

5 この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっている。

 

1 妥当でない。本問の判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的である旨を論じていません

2 妥当でない。衆議院議員の選挙の効力に関する訴訟は、第一審が高等裁判所の管轄とされています(公職選挙法204条)。本問の判決は東京高等裁判所の判決ですので、控訴審判決ではありません。難問です。

3  妥当でない。本問の判例では、「内閣の解散権の行使によるものであっても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない」や「内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう」などから、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場に立っているとはいえません。

4 妥当でない。本件訴訟は、公職選挙法上の選挙の効力に関する訴訟(公職選挙法204条)であるため、行政事件訴訟法上の民衆訴訟に位置付けられます(行政事件訴訟法5条)。機関訴訟ではありません

5 妥当である。本問の判例は「較差是正を行うべき合理的期間は、・・・右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえない」ということから、本肢は妥当です。

 

 

 次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

 

 憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。

 日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。

               (最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

1 立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。

2 憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。

3 憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。

4 本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

5 取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

 

1 読み取れる。本判例の第一段落最後の文「なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。」という部分から、本肢の「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。」が読み取れます。

2 読み取れる。本判例の第一段落中程の文「しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。」の部分から、「裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる」ということが読み取れます。

3 読み取れない。本判決文では、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合について触れていませんので、読み取ることはできません。

4 読み取れる。本判例の第二段落「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに・・・・慎重に検討することが必要である。」の部分から「国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる」が読み取れます。

5 読み取れる。本判例の第二段落「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。」から、「取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。」ということが読み取れます。

 

 

 家族・婚姻に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

1 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、当該規定が補充的に機能する規定であることから本来は立法裁量が広く認められる事柄であるが、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する。

2 国籍法が血統主義を採用することには合理性があるが、日本国民との法律上の親子関係の存否に加え、日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる。

3 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものであり、憲法に違反する。

4 厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間(100日)を超えて女性の再婚を禁止する民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至った。

5 夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるが、婚姻前の氏の通称使用が広く定着していることからすると、直ちに違憲とまではいえない。

 

1 妥当でない。最高裁判所は、「法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。遅くとも被相続人の相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。」と判示します(最大決平25・9・4)。したがって、「法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する」とする本問は妥当ではありません。

2 妥当でない。最高裁判所は、「本件区別については、これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は、我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており、今日において、国籍法3条1項の規定は、日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課するものとなっているというべきである。」と判示しています(最大判平20・6・4)。したがって、「立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる」とする本問は妥当ではありません。

3 妥当でない。最高裁判所は、「戸籍法の規定のうち,出生の届出に係る届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきものと定める部分は、憲法14条1項に違反しない。」と判示しています(最判平25・9・26)。

4 妥当である。最高裁判所は、100日を超えて女性の再婚を禁止する旧民法の規定は、婚姻および家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超え、憲法に違反するに至ったと判示しています(最大判平27・12・16)。

5 妥当でない。最高裁判所は、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占める状況は実質的に法の下の平等に違反する状態といいうるとは判示していません(最大判平27・12・16)

 

 

 自筆証書遺言をするには、遺言者が証書の全文、日付及び氏名を自書し、押印した上で、証書を封じ、封印しなければならない。

 

正解×

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに押印しなければなりません(968条1項)。「証書を封じ、封印」をする必要はありません。

 

 

 受遺者が遺言者より先に死亡した場合は、遺言者が遺言において別段の意思を表示していない限り、受遺者の相続人が遺贈を受ける権利を相続する。

 

正解×

 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じません(994条1項)。したがって、「遺言者が遺言において別段の意思を表示していない限り、受遺者の相続人が遺贈を受ける権利を相続する」とする本問は誤りです。

 

 

 Aから100万円を借りているBが、その全額をAに弁済する場合、それと引換えに受取証書及び債権証書の返還を求めることができる。

 

正解×

 債務者など弁済者は、弁済と引換えに弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができ、これを債権者が交付しないときは、弁済者は、弁済を拒絶することができます(同時履行。486条)。一方、弁済者は、債権者に債権証書の返還を請求することができますが、これは、弁済と同時履行の関係ではありません(487条。通説)。

 

 

 弁済者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をしたときは、弁済と同一の効力を有する。

 

正解×

 弁済をすることができる者(弁済者)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有します(482条)。弁済者が他の給付をしなければ、その給付は、弁済と同一の効力を有しません。

 

 

 Aは、Bに対して100万円の金銭債務を負担しており、Bは、Aに対して100万円相当の中古車引渡債務を負担している。この場合、A又はBは、両債務を相殺により消滅させることができる。

 

正解×

 2人が、いに同種の目的を有する債務(双方金銭債務)を負担していなければ、相殺することができません(505条1項本文)。

 

 

 時効消滅した債権は、たとえ消滅以前に相殺適状にあった場合でも、これを自働債権として相殺することはできない。

 

正解×

 時効消滅した債権であっても、消滅以前に相殺適状にあった場合には、これを自働債権として相殺することができます(508条)。

 

 

 承諾の期間を定めないでした契約の申込みは、申込者が撤回をする権利を留保したときを除き、撤回することができない。

 

正解×

 承諾の期間を定めないでした契約の申込みは、「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまで」は、撤回することができません。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときこの限りではありません(525条1項)。つまり、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間が経過すれば、申込みを撤回することができます

 

 

 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものと推定する。

 

正解×

 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされます(528条)。

 

 

 Aは、第三者Cの詐欺によりBの所有する土地を買ってしまったが、売主Bに対して、この意思表示を常に取り消すことができるとは限らない。

 

正解〇

 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたとき(悪意又は有過失)に限り、その意思表示を取り消すことができます(96条2項)。したがって、Aは、売主Bに対して、意思表示を常に取り消すことができるとは限りません。

 

 

 第三者のためにする契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合、その効力は生じない。

 

正解×

 第三者のためにする契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられません(537条2項)。