こんにちは、おっさんです。

昨日の夜中から下の娘が

高熱を出して寝不足気味なおっさんですが

眠たい目をこすりながら今日も頑張ります。

 

セレクト過去問集-憲法2

の結果は、8問中、4問正解でした。

 

写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ、これに収録された作品のいくつかが刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するとして、検察官によって起訴された。自分が無罪であることを確信するAは、裁判の場で自らの口から「表現の自由」を主張できるように、慌てて憲法の勉強を始め、努力の甲斐あって次の1~5のような考え方が存在することを知ることができた。このうち、本件の事案において主張するものとして、最も適しない考え方はどれか。

 

1 わいせつ表現についても、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していく必要がある。

2 表現の自由は「公共の福祉」によって制約されると考える場合であっても、これは他人の人権との矛盾・衝突を調整するための内在的制約と解すべきである。

3 憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない。

4 表現の自由に対する規制が過度に広汎な場合には、当事者は、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となりうることを理由に、法令全体の違憲性を主張できる。

5 文書の芸術的・思想的価値と、文書によって生じる法的利益の侵害とを衡量して、前者の重要性が後者を上回るときにまで刑罰を科するのは違憲である。

 

試験ワンポイント
 本問は、作品集が発売されたに、起訴された事例であるため、発売の事前抑制や検閲などについて裁判の場で主張しても意味がないことに気付けばすぐに解答できる出題であることがわかります。

1 適する。わいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していけば、収録作品が「わいせつ」な図画に該当しないとして無罪を主張することが可能となります。

2 適する。社会公共の安全・秩序維持の見地からする内在的制約と解すると、表現の自由に対する「公共の福祉」による制約については、「必要最少限度の規制」のみが認められることになるので、これを超える規制であるとして無罪を主張することができます。

3 最も適しない。本問では、すでに作品集を販売してしまっているので、事前抑制を根拠とした表現の自由について主張をしても意味がないことになります。

4 適する。表現の自由に対する規制が過度に広汎であると、表現行為に対して萎縮的効果を及ぼしてしまいます。したがって、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となるということを理由として、法令全体の違憲性を主張することは適切であるといえます。

5 適する。作品集の芸術的・思想的価値が、作品集によって生じる法的利益の侵害と、その重要性において上回るときは、比較衡量の結果として違法性が阻却されると考えることができるので、これに対して刑罰を科するのは違憲であると主張することは可能です。

 

 

 次の1~5は、法廷内における傍聴人のメモ採取を禁止することが憲法に違反しないかが争われた事件の最高裁判所判決に関する文章である。判決の趣旨と異なるものはどれか。

 

1 報道機関の取材の自由は憲法21条1項の規定の保障の下にあることはいうまでもないが、この自由は他の国民一般にも平等に保障されるものであり、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷内でのメモ採取を許可することが許されるかは、それが表現の自由に関わることに鑑みても、法の下の平等との関係で慎重な審査を必要とする。

2 憲法82条1項は、裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めているが、その趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。

3 憲法21条1項は表現の自由を保障しており、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、個人の人格発展にも民主主義社会にとっても必要不可欠であるから、情報を摂取する自由は、右規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれる。

4 さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるが、これは憲法21条1項の規定によって直接保障される表現の自由そのものとは異なるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない。

5 傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは通常はあり得ないのであって、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致する。

 

試験ワンポイント
 本問は、法廷内における傍聴人のメモ採取の自由に関するレペタ事件(最大判平元・3・8)の最高裁判所の判決文の正誤を問う問題です。報道の自由は憲法21条によって保障されますが、取材の自由は憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する程度となるということを理解してれば、すぐに正解を出すことができる問題です。

1 判例の趣旨と異なる。本判例は、「法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法21条1項の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない。」と判示しているので、「取材の自由は憲法21条1項の規定の保障の下にある」とする本肢は、判例の趣旨と異なることになります。

2 判例の趣旨と同じ。本判例は、「憲法82条1項の規定は、裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めているが、その趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。」と判示しています。

3 判例の趣旨と同じ。本判例は、「憲法21条1項の規定は、表現の自由を保障している。そうして、多数意見は、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する自由は、右規定の趣旨、目的からいわばその派生原理として当然に導かれるところであり、」と判示しています。

4 判例の趣旨と同じ。本判例は、筆記行為は、「さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない。」とし、さらに「情報等の摂取を補助するためにする筆記行為の自由といえども、他者の人権と衝突する場合にはそれとの調整を図る上において、又はこれに優越する公共の利益が存在する場合にはそれを確保する必要から、一定の合理的制限を受けることがあることはやむを得ないところである。しかも、右の筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではないというべきである。」と判示しています。

5 判例の趣旨と同じ。本判例は、「傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは、通常はあり得ないのであって、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致するものということができる。」と判示しています。

 

 

次の文章は、宗教法人Xへの解散命令の合憲性に関して、Xの特別抗告に対して下された最高裁判所決定の一節である。空欄 ア ~ エに当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

 

 「(宗教法人)法81条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、前記のように、専ら宗教法人の ア 側面を対象とし、かつ、専ら ア目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・ イ側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的であるということができる。そして…(中略)…抗告人が、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。抗告人の右のような行為に対処するには、抗告人を解散し、法人格を失わせることが ウ かつ適切であり、他方、解散命令によって宗教団体であるXやその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う エ で事実上のものであるにとどまる。したがって、本件解散命令は、宗教団体であるXやその信者らの精神的・ イ 側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに ウ でやむを得ない法的規制であるということができる。」

                       (最一小決平成8年1月30日民集50巻1号199頁以下)

[語群]

  • 1 直接的  
  • 2 間接的
  • 3 積極的
  • 4 消極的
  • 5 明白
  • 6 具体的
  • 7 抽象的
  • 8 容易
  • 9 中立的
  • 10 宗教的
  • 11 可能
  • 12 政治的
  • 13 支配的
  • 14 指導的
  • 15 必要
  • 16 社会的
  • 17 裁量的
  • 18 手続的
  • 19 世俗的
  • 20 有効
試験ワンポイント
 本問は、オウム真理教解散命令事件(最決平8・1・30)の要旨についての空欄補充問題であり、本判例の要点を掴んでいれば解答を導き出すことができます。

アには「19 世俗的」が、イには「10 宗教的」が入る。最高裁は、オウム真理教の解散命令は、法人格を奪うものであって、信教の自由を侵害するものではない、ことを理解していれば、宗教法人の解散命令は、宗教団体や信者の精神的・「宗教的」側面に容かい(口出しすること)するわけではなく、「世俗的」(世間一般で行われている)側面を対象としていると考えることができます。

ウ 「15 必要」が入る。最初の ウ の後に、「かつ適切」とあります。さらに、最後に出てくる ウ の後に「でやむを得ない法的規制」とあります。この2つの箇所の組合せとしてしっくりする語句を語群から選ぶと、「必要」が入るでしょう。

エ 「2 間接的」が入る。 エ の後に「で事実上のものであるにとどまる」とあり、そうであれば違憲ではない、とされていることから、この組合せとしてしっくりするのは「間接的」です。なお語群にはありませんが、判例では「反射的」などの語句も「事実上」とセットにして使われることがあります。

 

 

 学問の自由に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

 

1 学問研究を使命とする人や施設による研究は、真理探究のためのものであるとの推定が働くと、学説上考えられてきた。

2 先端科学技術をめぐる研究は、その特性上一定の制約に服する場合もあるが、学問の自由の一環である点に留意して、日本では罰則によって特定の種類の研究活動を規制することまではしていない。

3 判例によれば、大学の学生が学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。

4 判例によれば、学生の集会が、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。

5 判例によれば、普通教育において児童生徒の教育に当たる教師にも教授の自由が一定の範囲で保障されるとしても、完全な教授の自由を認めることは、到底許されない。

 

1 妥当である。学問の自由は、①学問研究の自由、②研究発表の自由、③教授(教育)の自由をその内容としますが、このうちの学問研究の自由は、真理探究のためのものであるとの推定が働くと、考えられています。

2 妥当でない。学問研究は本来自由であるべきですが、臓器移植や遺伝子組み替えなどの医療技術や原子力などの近年の先端科学技術をめぐる研究は、人の尊厳、生命・身体の安全や社会秩序の維持という観点から一定のルールとして法律の制定が要請されることがあります。例えば、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律があり、この法律では、人クローン胚などを人又は動物の体内に移植することを禁止しており、これに違反した場合には、懲役又は罰金刑に処せられることとされています。したがって、「日本では罰則によって特定の種類の研究活動を規制することまではしていない」とする本肢は妥当ではありません。

3 妥当である。判例は、「大学の学生としてそれ以上に学問の自由を享有し、また大学当局の自冶的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである。」と判示しています(東大ポポロ事件。最大判昭38・5・22)。

4 妥当である。判例は、「学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。」と判示しています(東大ポポロ事件。最大判昭38・5・22)。

 判例 東大ポポロ事件(最大判昭38・5・22)
<事件の概要>
 東大の「ポポロ劇団」の発表会において、長期にわたり情報収集を行っていた私服警官を発見した学生が暴力行為等を行い、起訴された事件。

<判旨>
  • 学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであって、同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは、一面において、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである。
  • 大学における学生の集会も、一定の範囲において自由と自治を認められるものであって、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによって、特別な自由と自治を享有するものではない。学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。

 

5 妥当である。判例は、「学問の自由は、単に学問研究の自由ばかりでなく、その結果を教授する自由をも含むと解され、また、普通教育の場においても、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきである。しかし、大学教育の場合には、学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し、普通教育においては、児童生徒にこのような能力がなく、教師が児童生徒に対して強い影響力、支配力を有すること、子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があることから、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることはできない。」と判示しています(旭川学テ事件。最大判昭51・5・21)。

 

 

セレクト過去問集-憲法3

の結果は、7問中、2問正解でした。

 

次の手紙の文中に示された疑問をうけて、これまで類似の規制について最高裁判所が示した判断を説明するア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

 

 前略 大変ご無沙汰しております。

 お取り込み中申し訳ありませんが、私の進路選択について、折り入って貴兄にご相談したいことができました。演劇三昧だった学生生活を切り上げて、行政書士をめざして勉強を始めたのですが、最近、自らの職業選択が抱える不条理に、少々悩んでおります。

 行政書士になりたい私が、試験に合格しなければ行政書士になれない、というのは、職業選択の自由という、私のかけがえのない人権の侵害にはあたらないのでしょうか。他方で、もし行政書士になれたとしても、行政書士法1条の2で行政書士の独占業務とされている書類の作成に関する限り、他者の営業の自由を排除しているわけですから、私は、かけがえのない人権であるはずの、他人の職業選択の自由を侵害して生きることになるのでしょうか……。

 

 拝復 お悩みのご様子ですね。行政書士業を一定の資格要件を具備する者に限定する以上、それ以外の者の開業は禁止されるのですから、あなたのご疑問にはあたっているところもあります。問題はそうした制限を正当化できるかどうかで、この点は意見が分かれます。ご参考までに、最高裁判所がこれまでに示した判断についてだけ申しますと、

 

ア 医薬品の供給を資格制にすることについては、重要な公共の福祉のために必要かつ合理的な措置ではないとして、違憲判決が出ていますよ。

イ 小売市場の開設経営を都道府県知事の許可にかからしめる法律については、中小企業保護を理由として、合憲判決が出ていましたよね。

ウ 司法書士の業務独占については、登記制度が社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどを指摘して、合憲判決が出ています。

エ 公衆浴場を開業する場合の適正配置規制については、健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉の維持を理由として、合憲とされていますね。

オ 酒販免許制については、職業活動の内容や態様を規制する点で、許可制よりも厳しい規制であるため、適用違憲の判決が下された例があります。

 

1 ア・イ・ウ

2 ア・イ・エ

3 イ・ウ・エ

4 イ・ウ・オ

5 ウ・エ・オ

 

ア 妥当でない。最高裁判所は、薬事法に基づく薬局の適正配置規制が違憲である旨の判決を下しています(薬事法距離制限違憲判決。最大判昭50・4・30)。しかし、本肢のような医薬品の供給を資格制にすることについての違憲判決は下していません。

イ 妥当である。最高裁判所は、本肢を理由とした小売市場の許可規制についての合憲の判決を下しています(小売市場事件。最大判昭47・11・22)。

ウ 妥当である。最高裁判所は、本肢を理由とした司法書士の業務独占についての合憲の判決を下しています(司法書士法違反事件。最判平12・2・8)。

 判例 司法書士法違反事件(最判平12・2・8)
 司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条1項に違反するものでない

 

エ 妥当である。最高裁判所は、公衆浴場を開業する場合の適正配置規制について、「公衆浴場業者が経営の困難から廃業や転業をすることを防止し、健全で安定した経営を行えるように種々の立法上の手段をとり、国民の保健福祉を維持することは、まさに公共の福祉に適合するところであり、右の適正配置規制及び距離制限も、その手段として十分の必要性と合理性を有していると認められる。」として合憲の判決を下しています(公衆浴場距離制限事件。最判平元・1・20)。

オ 妥当でない。最高裁判所は、酒販免許業の免許制について合憲の判決を下しています(酒類販売業免許制事件。最判平4・12・15)。

 以上により妥当なものは、イ・ウ・エとなり、3が正解となります。

 

 

行政書士をめざすA君は、いくつかの最高裁判所判決を読みながら、その重要な部分を書き取ったカードを作成し、判例の論理をたどろうとしていたところ、うっかりしてカードをばらまいてしまった。その際に、要約ミスのため捨てるはずだった失敗カードが1枚混ざってしまったため、全体としてつじつまがあわなくなった。以下の1~5のうち、捨てるはずだった失敗カードの上に書かれていた文章はどれか。

 

1 一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある。

2 憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。

3 しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである。

4 のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。

5 おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいてのみ許されるべきである。

 

試験ワンポイント
 本問は、薬事法距離制限違憲判決(最大判昭50・4・30)と小売市場事件(最大判昭47・11・22)の判決の趣旨の正誤を判断させるというものです。小売市場の許可規制が、積極的・社会経済政策的規制であることを理解していれば、5が正解であることがすぐに分かります

1 失敗カードではない。判例は、「一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある」と判示しています(薬事法距離制限違憲判決。最大判昭50・4・30)。

2 失敗カードではない。判例は、「憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。」と判示しています(小売市場事件。最大判昭47・11・22)。

3 失敗カードではない。判例は、「しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである。」と判示しています(小売市場事件。最大判昭47・11・22)。

4 失敗カードではない。判例は、「のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。」と判示しています(小売市場事件。最大判昭47・11・22)。

5 失敗カードである。判例は、小売市場の許可規制について消極的だけでなく、「積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであって、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。」と判示しています(小売市場事件。最大判昭47・11・22)。したがって本肢のように、「弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいてのみ許されるべきである」としているわけではありません。この点が要約ミスといえます。

 

 

次の憲法の条文について一般に行われている説明として、妥当なものはどれか。

 

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

1 「法律の定める手続」とあるので、条例によって刑罰その他についての手続を定めることは、許されていない。

2 日本国憲法は別に罪刑法定主義の条文をもっているので、本条においては、戦前にないがしろにされた刑事手続について、これを法律で定めることが要請されている。

3 この条文は刑事手続を念頭においており、行政手続などの非刑事手続については、その趣旨が適用されることはない。

4 刑事手続については、ただ単にこれを法律で定めればよいと規定しているのではなく、その手続が適正なものであることを要求している。

5 この条文は、ニューディール期のアメリカ連邦最高裁判所で猛威を振るった、手続的デュープロセス論を否定したものである。

 

1 妥当でない。判例は、条例で罰則を定めることも可能と判示しています(条例と罰則。最大判昭37・5・30)。

 判例 条例と罰則(最大判昭37・5・30)
 条例は、法律以下の法令といっても、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。

 

2 妥当でない。「罪刑法定主義」を直接規定した条文は憲法には存在しません。しかし、「罪刑法定主義」は近代立憲主義憲法の重要な原則であり、31条などが根拠となります

3 妥当でない。判例は、行政手続についても、それが刑事手続でないとの理由のみで、そのすべてが保障されないわけではないとしています(成田新法事件。最大判平4・7・1)。

4 妥当である。適正手続の保障(31条)は、①手続の法定、②手続の適正、③実体の法定、④実体の適正のすべてがその内容として要求されています。

5 妥当でない。日本国憲法31条は、アメリカ合衆国憲法の「適正手続条項」(デュー・プロセス・オヴ・ロー)に習い、刑事手続上の基本原則である「適正手続」を定めたものです。「手続的デュープロセス論を否定したものである」わけではありません

 

 

次の文章は、公教育をめぐる2つの対立する考え方に関する最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄 ア ~ エ に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

 

 一の見解は、子どもの教育は、親を含む国民全体の共通関心事であり、公教育制度は、このような国民の期待と要求に応じて形成、実施されるものであつて、そこにおいて支配し、実現されるべきものは国民全体の教育意思であるが、この国民全体の教育意思は、憲法の採用する議会制民主主義の下においては、国民全体の意思の決定の唯一のルートである国会の法律制定を通じて具体化されるべきものであるから、法律は、当然に、公教育における ア についても包括的にこれを定めることができ、また、教育行政機関も、法律の授権に基づく限り、広くこれらの事項について決定権限を有する、と主張する。これに対し、他の見解は、子どもの教育は、憲法二六条の保障する子どもの教育を受ける権利に対する責務として行われるべきもので、このような責務をになう者は、親を中心とする国民全体であり、公教育としての子どもの教育は、いわば親の教育義務の共同化ともいうべき性格をもつのであつて、それ故にまた、教基法*一〇条一項も、教育は、国民全体の信託の下に、これに対して直接に責任を負うように行われなければならないとしている、したがつて、権力主体としての国の子どもの教育に対するかかわり合いは、右のような国民の教育義務の遂行を側面から助成するための イ に限られ、子どもの ア については、国は原則として介入権能をもたず、教育は、その実施にあたる教師が、その ウ としての立場から、国民全体に対して教育的、文化的責任を負うような形で、……決定、遂行すべきものであり、このことはまた、憲法二三条における学問の自由の保障が、学問研究の自由ばかりでなく、 エ をも含み、 エ は、教育の本質上、高等教育のみならず、普通教育におけるそれにも及ぶと解すべきことによつても裏付けられる、と主張するのである。

                (最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁)

(注)*教育基本法

[語群]

  • 1 初等教育 
  • 2 教科書検定
  • 3 諸条件の整備
  • 4 教授の自由
  • 5 教育公務員
  • 6 第三者
  • 7 教科用図書
  • 8 学習指導要領
  • 9 教育専門家
  • 10 教育の内容及び方法
  • 11 研究者
  • 12 管理者
  • 13 中等教育
  • 14 学習権
  • 15 懲戒権
  • 16 私立学校の自治 
  • 17 大学の自治
  • 18 公の支配
  • 19 職務命令
  • 20 指揮監督
試験ワンポイント
 問題文の判旨は、旭川学テ事件(最大判昭51・5・21)に関するものです。最高裁は、子どもの教育権の所在が国民にあるとする「国民教育権説」と国家にあるとする「国家教育権説」の対立について、いずれも極端かつ一方的であり、そのいずれをも全面的に採用することはできないと判示しています。
 以上を踏まえて、本問を検討してみましょう。

 

ア 「10 教育の内容及び方法」が入る。冒頭の「一の見解」が「国家教育権説」であり、「他の見解」が「国民教育権説」です。

 前の ア では、国家教育権説により「法律は、当然に、公教育における ア についても包括的にこれを定めることができ」るとしており、後の ア では、国民教育権説により、「子どもの ア については、国は原則として介入権能をもた」ないとしていることから、語群を見ると「教育の内容及び方法」が入ります。

イ 「3 諸条件の整備」が入る。 イ の前後は、「国の子どもの教育に対するかかわり合いは、右のような国民の教育義務の遂行を側面から助成するための イ に限られ」とあります。このことから国は子どもの教育に対して限定的な対応しかできないことになります。これを踏まえて語群を見ると限定的な表現である「諸条件の整備」が入ります。

ウ 「9 教育専門家」が入る。  ウ の前後は、「国は原則として介入権能をもたず、教育は、その実施にあたる教師が、その ウ としての立場から、国民全体に対して教育的、文化的責任を負うような形で、……決定、遂行すべきものであ」るとされています。教師の立場に合致しそうな語句を語群から見つけると、教育公務員、教育専門家、研究者、管理者が候補に挙がります。さらに「国民全体に対して教育的、文化的責任を負う」という表現からすると、「教育専門家」が妥当です。

エ 「4 教授の自由」が入る。  エ の前後は、「憲法二三条における学問の自由の保障が、学問研究の自由ばかりでなく、 エ をも含み、 エ は、教育の本質上、高等教育のみならず、普通教育におけるそれにも及ぶと解すべきことによつても裏付けられる」とあります。学問の自由の内容は、①学問研究の自由、②研究発表の自由、③教授の自由の3つとされていますので、語群を見ると、③教授の自由があり、これが解答になります。

 

 

 デモクラシーの刷新を綱領に掲げる政党Xは、衆議院議員選挙の際の選挙公約として、次のア~エのような内容を含む公職選挙法改正を提案した。

 

ア 有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ 有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ 過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ 地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

 この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

 

1 普通選挙

2 直接選挙

3 自由選挙

4 平等選挙

5 秘密選挙

 

ア 5 秘密選挙に関して議論となり得る。秘密選挙に関し、「すべての選挙における投票の秘密はこれを侵してはならない」と規定します(憲法15条4項)。本肢の「家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票する」ことは、他人に誰に投票したかが分かってしまうので、秘密選挙に関して憲法上議論となり得えます。

イ  3 自由選挙に関して議論となり得る。選挙権を行使するか否かは、選挙人の自由です(自由選挙。憲法15条4項)。本肢の「3回続けて棄権した有権者には罰則を科する」は、自由選挙に関して憲法上議論となり得えます。

ウ  4 平等選挙に関して議論となり得る。選挙においては一人一票を原則とし、投票価値の平等も要請されます。本肢の「参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める」ことは、各都道府県における投票価値の平等を維持することができなくなるため、平等選挙に関して憲法上議論となり得ます。

エ  2 直接選挙に関して議論となり得る。有権者は直接に公務員を選定します。本肢の「都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となる」ことは、直接選挙が不可能となるため、直接選挙に関して憲法上議論となり得ます。

 以上により、提案による抵触が問題となり得ないのは、1 普通選挙になります。

 解法テクニック
 本問は、選挙の諸原則を選択肢へ当てはめをする、その場で考えさせる問題ですが、選択肢のいずれにも妥当しない諸原則を選ぶ問題であり、かなり難易度の高い出題といえます。正解できなくても気にする必要はありませんが、以下の諸原則の意味は確認しておきましょう。

■選挙の諸原則

①普通選挙
 納税額、財産を選挙権の要件とせず(狭義)、また人種、信条、教育、性別等により制限されないこと(広義)(憲法15条3項)。

②直接選挙
 有権者が直接に公務員を選定すること。

③自由選挙
 選挙権を行使するか否かは、選挙人の自由であること(憲法15条4項)。

④平等選挙
 一人一票を原則とすること。投票価値の平等も要請される(憲法14条1項)。

⑤秘密選挙
  「投票の秘密はこれを侵してはならない」こと(憲法15条4項)。

3月5日現在
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