こんな秋には村上春樹の蛍
ふと、穏やかな秋の読書で読みたい短編集といえば村上 春樹の『螢・納屋を焼く・その他の短編 』です。言わずと知れた名作ノルウェイの森の元となった作品。何となくノルウェイの森 をもう一度読みたい、でも時間がないというときに、『螢・納屋を焼く・その他の短編 』を読んだりしたこともしばしばです。作品全体に流れる穏やかな時間と、少量の切なさが、秋にぴったりですね。
『螢・納屋を焼く・その他の短編 』
秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。でも、それだけだった。彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。僕の温もりではなく、誰かの温もりだった…。もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。リリックな七つの短編。