9月に本が多く出版される理由と村上春樹。 | 出版社で働く平社員の日記

9月に本が多く出版される理由と村上春樹。

9月も下旬となり、どこか慌ただしい毎日です。上半期の決算前ということもあって、各出版社が予算に帳尻を合わせるべく、新刊本の刊行と既刊本の重版を行っています。「表現を売る」出版社といえど、やはりビジネス(特に多くの出版社が株式会社)でありますのでまあ当然のことではあります。

一般の読者の方は気づかないかもしれませんが、そういった理由で今月末はおそらく毎月に比べて多くの本が発売されるでしょう。読書好きには少しうれしい話ですが、ただし書店は9月に合わせて販売敷地を広げる訳ではありませんので、一方埋もれてしまう本も多くなるということです。もしかしたら7月に発売されていたらベストセラーになったかもしれない本も、9月ではそうならなかったり、あくまで可能性ですがそういうこともありえるんです。

私のいる出版社も同様で、異常なまでの新刊ラッシュに多忙な毎日です。今週は深夜残業もしばしばでした。社内、そして出版関係業者(製本所や取次業者)も慌ただしいですね。

そういった出版ラッシュの中で、今一番売れているのは村上春樹の東京奇譚集 です。
村上 春樹
東京奇譚集

文芸誌「新潮」で連載されていた短編と一部書き下ろしを含めた単行本です。まだ読んでいませんので、なんとも評価することはできませんが、ただし概要をみるかぎりそれほど村上春樹としては大きな新刊ではないように思えます。しかし発売後の販売初速も非常によく、改めて春樹人気を実感させられました。かくいう私も結構な春樹ファンでありますので、短編で書き下ろしも少ないし面白くなさそうだな、と思いながらもおそらく買ってしまうのでしょう。

さきにご説明した通り、東京奇譚集以外にも、おそらく今月末には多くのよい本が出版されます。もしかしたら東京奇譚集の追い抜くベストセラーもでるかもしれません。読書の秋なんて使い古された言葉もありますが、ふらりと散歩しながら書店に入り本を買って、喫茶店で穏やかの時間を過ごす、そんな行動がよく似合う季節になってきました。

最終日が迫る愛知万博のクレイジーな混雑ぶりを朝ニュースで見ましたが、そんな忙しいところに行くよりも、ゆっくり読書でこの三連休をすごしたいなあ、なんて考えています。


※余談です。村上春樹の本をアマゾンで検索していたら、昔村上春樹と村上龍が共著(対談集)の本が売られていました。この本は現在絶版になっています。どうやら各作家の意向で絶版ということですので、彼らが読まれたくないのでしょうか。何はともあれ掘り出し物です!
村上 龍, 村上 春樹
ウォーク・ドント・ラン