「解雇規制の緩和」がやってきた | シイタケのブログ

「解雇規制の緩和」がやってきた

 「解雇規制の緩和」を求める動きが活発化してきた。そしてその要求は、いよいよ法改正を求める動きへと具体化してきたようである。報道によると、安倍首相が議長の産業競争力会議で、民間議員が、解雇を原則自由にするよう、法改正を求めたという。「民法にある解雇自由の原則を労契法にも明記すべきだ」と求めたというのだから、究極的には、労働契約法16条の解雇権濫用禁止条項を改正して、整理解雇を容易にしようというのであろう。

 おさらいのようなことになるが、現在の労働契約法にある解雇権乱用禁止規定は、長年積み上げられてきた判例法理を2003年に明文化したものである(当時は労基法に加えられたが、その後労働契約法に移植)。明文化されて喜んでいたら、今度はその明文をいじることによって、解雇規制の強さを(判例法理ではなく)立法で上げ下げできるようになってしまった、というのは皮肉なものだ。

 解雇規制を緩やかに、そして最終的には民法上の解雇「自由」を法改正で実現しようとするには、労働契約法16条を削除するのが最もお手軽そうだが、削除して解雇規制の明文がないということなら、2003年以前と同じ状況なのであり、解雇権乱用禁止の判例法理は生き続けるかのようにも思われる。しかし立法府があえて「削除」したということなら、立法意思は解雇自由にかじを切ったということだから、司法はその意思を尊重して、その後の紛争において解雇権乱用と認定されることは、ぐっと少なくなるかもしれない。かつての「ホワイトカラーエグゼンプション=残業代ゼロ法案」のような騒ぎになって面倒だから、労働契約法16条の削除、というようなあからさまな手段はとらないかもしれない。しかしいずれにしても、労働契約法を解雇規制緩和の方向に改正するというのは、世の中にとって大きなインパクトになる。

 一部には、このような規制緩和について、「気に入らないからクビ」「女だからクビ」というような濫用はダメだが整理解雇のハードルを下げるなら賛成、とか、金銭解決制度と引き替えなら賛成、といったものわかりのよい人々もいるようだが、整理解雇のハードルを下げて、とくに経営悪化などがなくても解雇自由になるのなら、「気に入らないからクビ」「女だからクビ」とどうやって区別するというのだろうか。また、これはすでによく言われているように、あえて解雇規制を緩和しなくても、「リストラ」「追い出し部屋」という言葉に象徴されるように、すでに解雇はあちこちで普通に行われているのであって、さらに規制緩和すれば、そのアナウンスメント効果で濫用的解雇がまかり通る危険性がある。社会保障が脆弱な日本で解雇が自由になって失業者が増えれば、世の中どうなるか。

 このような危険なことが議論されていても、国民は「アベノミクス!」と喜んで支持し続けるのだろうか。

 ついこの前まで政権を握っていた民主党の支持率は公明党にも負け始めているらしい。民主党政権下では、その実効性はともかくとしても、派遣労働の規制や、有期雇用労働者の保護強化など、一連の法改正が行われた。民主党政権に対しては、かつて相当のネガティブキャンペーンが張られたが、少なくとも労働法制に関しては、保護強化政策がとられたのであり、このことはもっと国民に知られるべきだ。真相は、民主党主導で保護強化しようとしたというより、厚労省などの志のある人々が立案した政策が民主党政権下で通りやすかったということかもしれないが…しかし保護強化に傾いたのは事実なのである。自民党政権が復活して、逆方向へ進み出したようである。

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