経営者のたくらみ | シイタケのブログ

経営者のたくらみ

 もうしばらく前のことになるが、いわゆる「名ばかり管理職問題」について、興味深い判決が出た。これはすでにマスコミでも取り上げられ、有名になった判決である。東和システム事件東京地裁判決。年末には会社側の控訴がたしか棄却されたかと記憶している。労働基準法上の労働時間規制が適用されない…簡単に言えば残業代を支払わなくてよい「管理監督者」とはどんな部類の人々か、わりとはっきり示されたのである。それを引用すると…

「管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される(昭和22年9月13日発基第17号等)。具体的には、〔1〕職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、〔2〕部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、〔3〕管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、〔4〕自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである」。

 東和システム事件では、この基準にしたがって、管理監督者であることを否定し、従業員の訴え(残業代の請求)を認めた。まことにもっともで妥当な判決だと思う。

 しかし、このように「名ばかり管理職問題」が有名になるにしたがって、ちょっと危険な方向性が生まれつつあるように感じるのは私だけであろうか。つまり経営側は、上記の基準を一応形式だけでも満たしておけば、管理監督者性は否定されないとして、就業規則等をいじり始めているのではないかと危惧するのである。例えば一応課長と肩書きのつく者は、グループを統括でき、部下の人事考課権があり、出退勤の制約がないように、社内規定を形式的に整えておくのである。しかし実際のところは、より上の管理職や経営者が実験を掌握しており、課長に圧力をかけることができ、課長の実質的権限はどこにもないと…。もちろん、裁判にでもなれば実態に即して判断されるのであるが、それは証明しだいであるし、そもそも社内規定を整えておけば、訴えるモチベーションを削ぐ効果は十分であろう。

 否、上記のように社内規定を形式的に整えることより、もっと危険なのは、経営者や、実質的な管理監督者が、課長クラスに仕事を押し付ける傾向になりはしないかということである。例えば課長に、平社員の仕事の管理、人事考課など面倒な仕事を押し付けて、最終的な判断だけ、経営者や実質的管理監督者が行う、というように。名ばかり管理職としては、実質的権限はないのに面倒な手続き上の仕事を負わされて、しかもそれを根拠に管理監督者性が認められやすい方向に傾くのであるから、まさに踏んだり蹴ったりである。手当のない残業が増えるばかりである。

 裁判所が一企業の業務の流れを把握し、その業務の中の「管理監督」とはどういうことか、あるいはその業務の中で実質的な管理監督者は「何人」いれば適正なのかということにまで踏み込むことは、なかなか難しいであろう。しかしそこまで踏み込んで実態に即した判断をしないと、平社員50人、管理監督者49人というような会社も認められかねない。急に仕事の増えた名ばかり管理職が過労にならないよう願うばかりである。

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