ユルい労働法制
どのような分野の法制度にも強行規定や義務規定や努力規定などがあり、政策に応じて使い分けられているようだが、労働法制においても、まず努力規定を置いて周知を図ってから、義務規定に転換するというように、それぞれの規定の「強さ」をコントロールしながら、一定の目的を達成しようとしているようである。
しかし、上記のような目的達成のための経過としての「努力規定」であればまだしも、労使間の妥協の産物として(その多くは「労」の意見が後退する形で)「努力規定」が置かれることも少なくない。そしてそのような規定は形骸化し、そのうち何ら実効性のない規定として忘れ去られていくのである。このような妥協規定は努力規定にとどまらない。一見もっともらしくみえるが実は実効性がない規定も数多く見受けられる。
例えば、2007年に成立した労働契約法17条2項は、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と定めるが、はたしてこの規定に対応して、有期雇用者の契約期間が伸びたという実態があるだろうか。短期契約を何度も更新するような有期雇用は「偽装有期雇用」であり、本来なら当該労働者は正社員として登用されなければならないはずであるのに、依然として短期契約が濫用され、有期契約労働者はいつ雇止めになるか分からない不安定な状況に置かれているのである。
また、労働者派遣法では、原則として、派遣期間を1年から3年に延長する際は、派遣先の会社は、その会社の労働組合か過半数代表者の意見を聴かなければならないことになっている(40条の2第4項)。これは、派遣労働者が正社員にとってかわること(いわゆる常用代替)を防止するための規定である。しかし、この規定が有効に生かされているという話を、私は不勉強からかこれまで聞いたことがない。意見聴取が実際行われているとしても、形式化・形骸化しており、正社員だけの御用組合は何の異論もなく従っているのが実態ではなかろうか。
さらに、パート労働法においては、2007年の改正で、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」という規定が設けられた(8条)。この規定の文言自体は均等待遇を定めた画期的なもののようにみえるが、国会審議の段階で指摘されていたように、実態として「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」は全パート労働者の数パーセントに過ぎず(要するにハードルが高すぎ)、さらに「同視」できるかどうかは実質的に経営者の判断に任されているので、この規定の恩恵を受けるパート労働者は皆無に近いのが実態である。その言い訳のように、13条は「事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、第6条から第11条まで及び前条第1項の規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない。」と定めている。つまり、パート労働者が「正社員と同じ仕事をしているのにどうして給料は正社員の半分なんですか!」と抗議したときに初めて、経営者は正社員と「同視」しなかった理由を説明しなければならないということになっている。しかし、まずこのような規定はパート労働者にほとんど知られていない。次に、立場の弱いパート労働者がこのような説明を求めることは考えられないし、経営者が誠実に対応するとは考えにくい。さらに、経営者は「説明」すればよいだけであって、「同視」しなければならない義務も何もないのである。この説明義務規定も、私は不勉強からか実際生かされたという話を聞いたことがない。
以上のように、労働法制には妥協の産物としてのユルユルな規定があちこちにあり、最近それらは特に多くなってきたように見受けられる。もちろんこれらの規定は裁判時に労働者に有利な規定として用いられることがあるかも知れないが、紛争になってからでは遅すぎるし、ほとんどの労働者は救済されない。ユルい法律を作って満足するのではなく、日常労働者が使える有効な規定に転換すべきであるし、その広報も必要であるし、行政機関による取締りができるような規定を設けて制度を下支えすべきであると私は考える。
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しかし、上記のような目的達成のための経過としての「努力規定」であればまだしも、労使間の妥協の産物として(その多くは「労」の意見が後退する形で)「努力規定」が置かれることも少なくない。そしてそのような規定は形骸化し、そのうち何ら実効性のない規定として忘れ去られていくのである。このような妥協規定は努力規定にとどまらない。一見もっともらしくみえるが実は実効性がない規定も数多く見受けられる。
例えば、2007年に成立した労働契約法17条2項は、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と定めるが、はたしてこの規定に対応して、有期雇用者の契約期間が伸びたという実態があるだろうか。短期契約を何度も更新するような有期雇用は「偽装有期雇用」であり、本来なら当該労働者は正社員として登用されなければならないはずであるのに、依然として短期契約が濫用され、有期契約労働者はいつ雇止めになるか分からない不安定な状況に置かれているのである。
また、労働者派遣法では、原則として、派遣期間を1年から3年に延長する際は、派遣先の会社は、その会社の労働組合か過半数代表者の意見を聴かなければならないことになっている(40条の2第4項)。これは、派遣労働者が正社員にとってかわること(いわゆる常用代替)を防止するための規定である。しかし、この規定が有効に生かされているという話を、私は不勉強からかこれまで聞いたことがない。意見聴取が実際行われているとしても、形式化・形骸化しており、正社員だけの御用組合は何の異論もなく従っているのが実態ではなかろうか。
さらに、パート労働法においては、2007年の改正で、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」という規定が設けられた(8条)。この規定の文言自体は均等待遇を定めた画期的なもののようにみえるが、国会審議の段階で指摘されていたように、実態として「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」は全パート労働者の数パーセントに過ぎず(要するにハードルが高すぎ)、さらに「同視」できるかどうかは実質的に経営者の判断に任されているので、この規定の恩恵を受けるパート労働者は皆無に近いのが実態である。その言い訳のように、13条は「事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、第6条から第11条まで及び前条第1項の規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない。」と定めている。つまり、パート労働者が「正社員と同じ仕事をしているのにどうして給料は正社員の半分なんですか!」と抗議したときに初めて、経営者は正社員と「同視」しなかった理由を説明しなければならないということになっている。しかし、まずこのような規定はパート労働者にほとんど知られていない。次に、立場の弱いパート労働者がこのような説明を求めることは考えられないし、経営者が誠実に対応するとは考えにくい。さらに、経営者は「説明」すればよいだけであって、「同視」しなければならない義務も何もないのである。この説明義務規定も、私は不勉強からか実際生かされたという話を聞いたことがない。
以上のように、労働法制には妥協の産物としてのユルユルな規定があちこちにあり、最近それらは特に多くなってきたように見受けられる。もちろんこれらの規定は裁判時に労働者に有利な規定として用いられることがあるかも知れないが、紛争になってからでは遅すぎるし、ほとんどの労働者は救済されない。ユルい法律を作って満足するのではなく、日常労働者が使える有効な規定に転換すべきであるし、その広報も必要であるし、行政機関による取締りができるような規定を設けて制度を下支えすべきであると私は考える。
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