労働契約法の修正箇所の検討7
【原案】第十七条
1 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
【連合の見解】第十七条(期間の定めのある労働契約)では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができない。」となっているが、この記述では、民法における場合とは異なり、「やむを得ない事由がない」ことの立証責任を労働者が負うこととなる。
【修正案】第十七条第一項中「ないときは」を「ある場合でなければ」に改める。
【私のコメント】民法では、628条に「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる(以下略)」と定められている。この規定は民事訴訟法の通説に従えば、解雇に関して紛争になった場合、「やむを得ない事由がある」ことについては使用者が立証責任を負うことになる。この民法の規定の特別法として労働契約法に取り込んだのが17条であるが、ここでは「解雇できない」を原則として強調するために、民法とは逆の言い回しになっている。ただし、連合によれば、「やむを得ない事由がないときは」との文言が問題だという。立証責任を労働者が負うことになると懸念するのであるが、本条にそこまでの意図はない(民法の立証責任をひっくり返す意味はない)とは思われる。ただ、やや不明確であることは確かであろう。この点、日本労働弁護団の見解でも、「やむを得ない事由」の立証責任を使用者が負うことを明確にするためにも、例えば、「やむを得ない事由のないときは」を「やむを得ない事由がある場合を除き」と改める、あるいは、「やむを得ない事由がないときは」を削除し、但し書として「但し、やむを得ない事由がある場合はこの限りでない」を加えるなどの修正がなされなければならない。」とされている。
ただ、私は期間の定めのある労働契約(有期雇用)については、もっと重要な判例法理を明記してほしかった。それは昭和49年の最高裁判決(東芝柳町工場事件)であり、それは、「期間の定めのある労働契約が反覆更新され、実質的に期間の定めない労働契約と異ならない状態で存続している場合、雇止めは実質において解雇にあたり、解雇に関する法理(解雇権濫用禁止の法理)が類推して適用される」というものである。この点、民主党が対案として出していた労働契約法(内閣提出法案の修正合意により撤回)には、この判例法理と同様の規定があった。それは下記の通りである。
(雇止めの制限等)第四十二条 第三十八条第二項の規定により更新の可能性を明示された有期労働契約を締結している労働者が、当該有期労働契約の更新を希望した場合においては、使用者は、当該労働者に係る従前の有期労働契約の更新の回数、継続的に勤務をしている期間その他の事情に照らして、当該有期労働契約を更新しないこととすることが客観的に合理的な理由に基づき、社会通念上相当であると認められる場合でなければ、更新を拒んではならない。
この趣旨の規定が修正案として盛り込まれなかったのはとても残念である。格差社会の元凶は不安定な雇用と低賃金だからである。上記判例法理など知らず、突然雇い止めになって泣き寝入りしている労働者は多い。この法理が明記されれば、労使双方にとって大きなインパクトになったに違いない。せっかくの独自案を安易に撤回して些細な修正案に同意した民主党はやはり労働者のほうを向いた政党ではなかった、とがっかりさせられる。連合は連合で問題であり、やはり正社員を中心とした組織だからであろうか、非正規雇用者のことには関心が薄く、民主党の合意した修正案でよしとしているのであろう。
本記事に興味をもって下さった方に、クリック1回お願いします(ブログ人気投票)

1 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
【連合の見解】第十七条(期間の定めのある労働契約)では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができない。」となっているが、この記述では、民法における場合とは異なり、「やむを得ない事由がない」ことの立証責任を労働者が負うこととなる。
【修正案】第十七条第一項中「ないときは」を「ある場合でなければ」に改める。
【私のコメント】民法では、628条に「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる(以下略)」と定められている。この規定は民事訴訟法の通説に従えば、解雇に関して紛争になった場合、「やむを得ない事由がある」ことについては使用者が立証責任を負うことになる。この民法の規定の特別法として労働契約法に取り込んだのが17条であるが、ここでは「解雇できない」を原則として強調するために、民法とは逆の言い回しになっている。ただし、連合によれば、「やむを得ない事由がないときは」との文言が問題だという。立証責任を労働者が負うことになると懸念するのであるが、本条にそこまでの意図はない(民法の立証責任をひっくり返す意味はない)とは思われる。ただ、やや不明確であることは確かであろう。この点、日本労働弁護団の見解でも、「やむを得ない事由」の立証責任を使用者が負うことを明確にするためにも、例えば、「やむを得ない事由のないときは」を「やむを得ない事由がある場合を除き」と改める、あるいは、「やむを得ない事由がないときは」を削除し、但し書として「但し、やむを得ない事由がある場合はこの限りでない」を加えるなどの修正がなされなければならない。」とされている。
ただ、私は期間の定めのある労働契約(有期雇用)については、もっと重要な判例法理を明記してほしかった。それは昭和49年の最高裁判決(東芝柳町工場事件)であり、それは、「期間の定めのある労働契約が反覆更新され、実質的に期間の定めない労働契約と異ならない状態で存続している場合、雇止めは実質において解雇にあたり、解雇に関する法理(解雇権濫用禁止の法理)が類推して適用される」というものである。この点、民主党が対案として出していた労働契約法(内閣提出法案の修正合意により撤回)には、この判例法理と同様の規定があった。それは下記の通りである。
(雇止めの制限等)第四十二条 第三十八条第二項の規定により更新の可能性を明示された有期労働契約を締結している労働者が、当該有期労働契約の更新を希望した場合においては、使用者は、当該労働者に係る従前の有期労働契約の更新の回数、継続的に勤務をしている期間その他の事情に照らして、当該有期労働契約を更新しないこととすることが客観的に合理的な理由に基づき、社会通念上相当であると認められる場合でなければ、更新を拒んではならない。
この趣旨の規定が修正案として盛り込まれなかったのはとても残念である。格差社会の元凶は不安定な雇用と低賃金だからである。上記判例法理など知らず、突然雇い止めになって泣き寝入りしている労働者は多い。この法理が明記されれば、労使双方にとって大きなインパクトになったに違いない。せっかくの独自案を安易に撤回して些細な修正案に同意した民主党はやはり労働者のほうを向いた政党ではなかった、とがっかりさせられる。連合は連合で問題であり、やはり正社員を中心とした組織だからであろうか、非正規雇用者のことには関心が薄く、民主党の合意した修正案でよしとしているのであろう。
本記事に興味をもって下さった方に、クリック1回お願いします(ブログ人気投票)