朝倉 勇の独りごと—14 2007年8月4日(土)
どうしたら お客さんが喜ぶか、
何を求めているかさえ わかっていれば・・・
先週行われた参議院選挙。それは最近日本に起こっている
新しい変化の兆しを示しているのではないでしょうか。
自民党の歴史的大敗、与野党の議席数逆転。
だれもの予想を遙かに超えた、出来事だったと思います。
これが示している底流の真意を、政治家や官僚たちは
また、財界は正しく把握しているのでしょうか。
知恵が語る、味わい深い言葉
ぼくは、三つの言葉を思い出しました。
① 江戸小紋染師・小宮康孝さん(81歳)。
----よい物をつくるには何が重要ですか、
という質問に、小宮さんは次のように言うのです。
「使う人のためを思って、いい物をなるべく安く
作れるように今のやり方を改良することだね。
それが物を作る人間の使命だと思っている」。
「どうしたらお客さんが喜ぶか、お客さんが
何を求めているかさえわかっていれば・・・」
これは8月2日朝日新聞夕刊『人生の贈りもの』
という訪問記事からの引用です。
今の政治に当てはめると、じつに名言ではありませんか。
お客さんとは、市民であり国民です。そのお客さんが
何を求めているかが、まったくわかっていない政治が
この選挙で惨敗したのです。当然のことが起きたのでした。
本物の職人さんは名言をさりげなくおっしゃいますね。
②「町のどんな出来事も、政治につながっている」
ジャン・ジャック・ルソー(18世紀フランスの作家で
啓蒙思想家1712~1778)の言葉です。ぼくは22歳のころ
ルソーが自らの人生を赤裸々に語った「告白」で
この言葉に出会いました。なるほど、生活とは、政治とは
そういう関係にあったのか、と目を開かせられました。
ルソーは、『人間平等起源論』などの著書で民主主義理論を
唱え、フランス革命の先駆をなしたと言われています。
日本の社会科教育では、このような社会生活の実相を
教えているでしょうか。恐らくノーでしょう。
文部科学省がもっとも恐れる、真実を学ぶことだからです。
③歴史って、ある日、あっという間に変わるんだね
「ベルリンの壁」が崩壊したあと、先輩詩人の山田今次さんは
そうつぶやきました。1989年暮れのことです。
いつまで続くか見当もつかなかた東西冷戦。それが
ベルリンの壁の崩壊をきっかけに、たちまち東西ドイツ統一へ。
やがてソ連邦の崩壊。そして冷戦終結へ。
表面は動きが見えないようでも、市民生活は深いところで
動きと変化を続けている。それが、ある時、一気に噴き出す。
火山の爆発に似ています。そして、
決して元には戻らない。それが歴史というもの。
参議院選挙の結果はマグマの噴出だったと思われます。
変わる歴史のひとつの表情に違いありません。
草の根の活動に意味があるのは、こうした
歴史の性格を信じられるからではないでしょうか。
希望は決してすててはいけないのだと思います。