親父は、スゴイよな。
この小さな町工場で、家具職人として、経営者として、
長年働き続けているんだな。
俺が生まれるずっと前から、この町工場で
働いているんだって?
もう80近くになると言うのに。
親父の背中もずいぶん丸くなって、
年をとったな。
でも、淡々とこつこつと作業を
進める後ろ姿は、変わらないな。
考えてみれば、親父がこの町工場で
働き始めてから、半世紀以上経つんだな。
その間、東京オリンピック、オイルショック、
国鉄分割民営化、バブル経済崩壊、
21世紀到来、ふたつの大きな震災など、
激動の時代だったよな。
そんな中、親父は、毎日毎日、何十年と
この町工場で、変わらぬ風景で、
変わらぬ仕事を、永遠と繰り返して来た
と言うのか?
スゴイじゃないか!
気が遠くなる程、スゴイじゃないか!
俺自身も、高校生と中学生になる、
2人の息子を持つ父親になった。
今日、親父の背中を見ていて、
生きるって言うことは、どういうことなのか、
薄ボンヤリとわかった様な気もする。
今日は、親父に声をかけずに帰るわ。
俺も真っ直ぐに道を歩いて行くわ。
決して走ることなく、
一歩一歩、大地を踏みしめて。
俺の背中が、後から連いて来る
息子達に恥じない様に。
