生野 公貴・他:回復期脳卒中患者における歩行障害に対するペダリング運動と電気刺激の併用治療の効果 多施設間ランダム化比較対照試験の中間解析.第 49 回日本理学療法学術大会.2014

【はじめに,目的】 脳卒中後の歩行能力再獲得は,リハビリテーションの重要な目標である。近年,歩行能力獲得への介入として,ペダリング運動や電気刺激,それらの併用による効果が報告されている。先行研究ではペダリング運動に機能的代償として電気刺激を併用する報告が多いが,特殊な装置が必要なため臨床で簡便に用いることが困難であった。また適切な対照群を設定していないため,併用治療が各治療単独より効果的かどうかは不明であった。我々は,回復期脳卒中患者を対象として,ペダリング運動中に簡便に使用可能な感覚刺激強度の電気刺激を併用することが歩行能力改善に有効かどうかを多施設間ランダム化比較対照試験で検討することを目的とした。本報告はその中間解析として臨床効果と目標症例数の確認を行った。

【方法】
対象は 7 施設の回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者である。参加基準は,発症後 6 か月以内である初回発症の脳梗塞および脳出血患者,監視レベル以上で 10m 以上の歩行が可能なものとした。研究デザインは多施設間単一盲検ランダム化 シャム統制試験とし,対象者をペダリング運動と電気刺激併用(P-ES)群,ペダリング運動と偽刺激併用(P-Sham)群,電気刺激単独(ES)群の 3 群に無作為に割り付けた。ランダム化には単純ランダム化を用い,割り当ては中央登録性とした。介入は, 標準的リハビリテーションに加えて 1 日 1 回 15 分の治療介入を週 5 回 3 週間実施した。ペダリング運動には,リカンベントエルゴメーターを用い,負荷は 25W とし,快適な回転速度にて 15 分間実施した。電気刺激には低周波治療器(Trio300,伊藤超 短波社製)を用いた。刺激部位は大腿四頭筋と前脛骨筋とし,対称性二相性パルス波にて周波数は 100Hz,パルス時間は 250μs とした。刺激強度は感覚閾値の 1.2 倍とし,ペダリング運動と同時に 15 分持続的に刺激した。P-Sham 群は「非常に弱い電気を 流します」と伝えて刺激強度を 0mA とした。ES 群は電気刺激のみとし,椅子座位にて 15 分実施した。主要評価項目は 10m 歩行速度とし, 副次的評価項目は 6 分間歩行テスト, modified Ashworth scale, Fugl-Meyer Assessment 下肢, 膝伸展筋力, Functional Independence Measure,Stroke Impact Scale とした。評価は介入前,3 週後,6 週後に測定した。統計解析は介入前の群間比較に一元配置分散分析またはカイ二乗検定を行った。3 週後および 6 週後の 3 群間の多重比較には,Bonferroni の補正 を行った t 検定を実施した(α=0.017)。3 週後の主要評価項目の結果から効果量およびパワーを算出し,必要症例数を求めた。

【結果】
研究期間中,P-ES 群に 10 名,P-Sham 群に 14 名,ES 群に 15 名の計 39 名が割り当てられた。ES 群の 1 名が脱落した。介入実施中の有害事象はなかった。介入前評価において,全評価項目で 3 群間に有意差はなかった。3 週後評価では,10m 歩行速度 において P-ES 群は P-Sham 群と比較して有意な改善を示し(P=0.016),ES 群とは有意差がなかった(P-ES 群:0.77±0.18 m/s,P-ES群:0.53±0.24m/s,P-ES 群:0.71±0.34m/s)。その他の評価項目に有意差はなかった。6 週後では,10m 歩行速度 において P-ES 群は P-Sham 群と比較して有意な改善を示し(P=0.001),ES 群とは有意差がなかった(P-ES 群:0.85±0.19 m/s,P-Sham 群:0.53±0.18m/s,ES 群:0.72±0.34m/s)。その他の評価項目に有意差はなかった。3 週後の 10m 歩行速度の結果から,効果量は 0.4,パワーは 0.56 であり,必要症例数は 66 名と計算された。

【考察】 本研究はペダリング運動と電気刺激を併用することでペダリング運動単独よりも歩行速度の改善が有意に大きいことを明らか にした。電気刺激単独との有意差はなかったが,併用治療がもっとも改善度が大きい傾向にあった。これは,電気刺激と随意運 動の併用が最も皮質脊髄路の興奮性を増大させる,あるいは相反神経抑制を増大させることに起因するかもしれない。本研究は先行研究よりも簡便に実施することが可能であり,脱落率も低いことから歩行速度改善に対して臨床有用性が高い治療であると考えられる。今後目標症例数に到達することで,より正確な結果を示すことが可能である。

以前投稿したペダリングの文献と近い内容ですが、今回はアウトカムに歩行速度を持ってきています。個人的には歩行速度に関与するどの因子が改善したのか、まで知りたいものです。