川上健司、他:脳卒中片麻痺患者における歩行運動イメージ評価の臨床的意義について — 回復過程におけるイメージ能力の推移に注目して —、第43回日本理学療法学術大会、2008

【目的】運動イメージと実際の運動結果との誤差を少なくするこ とは運動学習において重要である.また,歩行を習得する際,運 動イメージ能力低下は自己身体能力の誤認識と捉えられ,歩行 自立の阻害因子として考えられている.昨今,脳卒中後の歩行自 立者は監視が必要なものよりイメージ能力が高いことも示され ている.しかし,脳卒中患者の歩行回復過程に伴うイメージ能力 推移の報告は皆無なため,イメージ能力が歩行自立度の帰結に どの程度関与しているのか不明確である.そこで,本研究では歩 行が自立に至るものと監視で留まるものとのイメージ能力推移 の違いを明らかにすることを目的とし,運動イメージの臨床的 評価としての意義を検証した.

【方法】対象は,当院に入院した測定時歩行自立度が監視以下で 著明な高次脳機能障害を有しない初発脳卒中片麻痺患者36名と した.対象者には予め研究の内容を説明し同意を得た.測定は, 10m の直線歩行路を,1)自分が歩いている姿をイメージするの に要した時間(以下,心的歩行時間)と,2)実際の歩行時間を計 測した.各々,入院後 2 週と 6 週時に 3 回ずつ行い平均値を算出 した.また,歩行運動イメージ能力の指標として心実比(心的歩 行時間/実際歩行時間)と,心的誤差率 ( |心的歩行時間-実際 歩行時間|/実際歩行時間× 100) を算出した.分析は,退院時 に歩行が自立した 22 名を自立群,それ以外の 14 名を監視 ・ 介助 群に分け,各群の推移と両群間の比較を Wilcoxon 符号順位検定, Mann-Whitney 検定にて行った.

【結果】実際歩行速度は自立群が 2 週時 1.5 ± 0.6km/h,6 週時 2.1 ± 0.8km/h で,監視・介助群は 2 週時 1.0 ± 0.7km/h,6 週時 1.2 ± 0.5km/ h であった.自立群は監視・介助群より各時期で有意に高値を示 し,2 週から 6 週にかけて有意な増加を認めた(p < 0.05).心実 比は,自立群が 2 週時 1.07 ± 0.3,6 週時 1.03 ± 0.2 で,監視・介助 群は 2 週時 0.93 ± 0.7,6 週時 0.87 ± 0.6 であり,6 週時のみ両群 間で有意差を認めた(p < 0.05).心的誤差率は自立群が 2 週時 27.7 ± 17.4%,6 週時 14.3 ± 9.4%,監視 ・ 介助群は 2 週時 58.8 ± 28.8%,6 週時 51.5 ± 29.2% であり,自立群は監視 ・ 介助群より 各時期で有意に低値を示し,2 週から 6 週にかけて有意な改善を 認めた(p < 0.05).

【考察】自立群の心的誤差率は,2 週から 6 週にかけて改善し,各 時期で監視 ・ 介助群よりも低値を示したため,歩行運動イメー ジ能力の向上が歩行自立達成に関与した可能性がある.また,自 立群の中には低歩行速度で自立したものも散見されたが,心実 比は 2 週から 6 週にかけて 1 に近づき,さらに心的誤差率も改善 していた.一方,監視 ・ 介助群の心実比は,1 以下の低い値のま まで推移するものが多く歩行運動イメージを実際よりも速く見 積もる傾向にあった.以上より,実際歩行速度と歩行運動イメー ジの推移を対比させることは低歩行速度者の自立度判定に有用 であると考えられた.


アウトカムとして心的時間測定(mental chronometry)を用いて検証されています。
心的誤差率の改善=歩行運動イメージ能力の向上とし、自立群と監視・介助群との相違を検証しています。
実際歩行速度は自立群が 2 週時 1.5 ± 0.6km/h、監視・介助群は 2 週時 1.0 ± 0.7km/hとあることから、軽度片麻痺患者を対象としているのでしょうか。
入院早期より長下肢装具を用いた治療が必要な方(歩行困難である方)を対象とした検証も気になります。
その際のアウトカムとか歩行評価とかどうしたものか…