黄疸
★黄疸の定義
黄疸とは、種々の原因により血清中にビリルビンが増加し、皮膚、粘膜、及び眼球結膜が黄染した状態をいう。正常時には血液中のビリルビン濃度は1mg/dl以下である。1~2mg/dlの間では、皮膚や粘膜の黄染をみず、潜在性黄疸という。2~3mg/dlを超えると、眼球結膜、口腔粘膜、皮膚に顕在性の黄染が見られる。これを顕在性黄疸という。黄疸は1つの症状であり、疾患ではない。

★黄疸の分類ならびに原因・誘因とメカニズム
黄疸の分類には種々あるが、原因、病態、臨床症状や検査所見、治療方針などが比較的明確に記されるものを以下に示す。

$溶血性黄疸
 主な原因・要因・・・①先天性溶血疾患②後天性溶血疾患(輸血、、血液型不適合、敗血症、マラリア、膠原病、白血病、薬物など③生理的(新生児)黄疸
メカニズムと特徴・・・①と②赤血球自体の異常、または体内のほかの異常に伴い、赤血球が細網内皮系細胞そのほかで過剰に破壊され、溶血亢進状態となる。このために、増加した間接ビリルビンを肝細胞が処理しきれず、黄疸をきたす。 ③生後2,3日からみられ、2週間ほどで消失する。ピーク時でも総ビルリビン値は15mg/dl以内である。新生児の肝臓のビルリビン処理機能が未熟なために起こる。

$肝細胞性黄疸
 主な原因・要因・・・①急性・慢性肝炎、ウィルス性肝炎、自己免疫性肝炎②薬物性肝障害③中毒性肝障害④劇症肝炎⑤肝硬変⑥アルコール性肝障害など⑦母乳性黄疸
メカニズムと特徴・・・①~⑥肝細胞実質の障害(変性・壊死)により、肝細胞に到達したビリルビンが摂取されにくくなる。また肝細胞中に摂取されても、直接ビリルビンに処理されにくくなる。このため間接ビリルビンが増加する。更に、肝・胆道系が破壊されると、胆道閉塞のために腸に胆汁が排出されにくくなり、血中に逆流して直接ビリルビンも増加する。⑦生後一ヶ月頃まで、母乳栄養による黄疸が続くことがある。母乳に含まれる物質(遊離脂肪酸)が、ビリルビン排泄を阻害することで起こる。核黄疸を引き起こすことは無く、母乳中断によって消失する。

$肝内胆汁うっ滞性黄疸
 主な原因・誘因・・・①薬物障害(経口避妊薬、一部の抗生物質、抗甲状腺薬、抗不整脈薬など)②胆汁うっ滞性ウィルス肝炎③原発性胆汁性肝硬変④二次性胆汁性肝硬変(術後の胆汁通過障害)⑤良性再発性肝内胆汁うっ滞症⑥妊娠性肝内胆汁うっ滞症⑦肝外性胆汁うっ滞(悪性腫瘍、胆石症)
メカニズムと特徴・・・①胆汁酸の排出障害で、肝細胞の障害の程度とは相関しない。肝内の毛細胆管からグリソン鞘周辺部の小胆管にいたる障害によって、直接ビリルビンが血中にあふれ、黄疸をきたす。③原発性胆汁性肝硬変では、黄疸が見られると予後不良である。
$閉塞性黄疸
 主な原因・誘因・・・①肝管・胆嚢・総胆管の結石・炎症・腫瘍②膵頭部がんのような総胆管周囲の病変③先天性胆道閉鎖④先天性胆道拡張症など
メカニズムと特徴・・・グリソン鞘の小胆管、肝外胆管、総胆管、ファーター乳頭部に至る間の比較的太い管の機械的圧迫・狭窄による。つまり、肝細胞より胆汁中に排出された直接ビリルビンが、胆道閉塞のために腸へ排出されず血中に逆流し、黄疸をきたす。③肝細胞障害を認めない。④手術の対象となることが多い。
$体質性黄疸
主な原因・誘因・・・①ジルベール病②クリグラー-ナジャー症候群Ⅰ型③クリグラー-ナジャー症候群Ⅱ型④デュビン‐ジョンソン症候群など
メカニズムと特徴・・・体質性黄疸は、黄疸を唯一の症状とする遺伝性の疾患である。肝組織像に異常は無く、予後はきわめて良好である。①血中ビリルビンが肝に取り込まれ、肝でグルクロン酸と抱合して胆汁中に排出されるまでの過程における障害で、ビリルビンの運搬障害である。②間接ビリルビンがグルクロン酸抱合を受ける際に必要なグルクロン酸抱合酸素の欠如により、過間接ビリルビン血症となる。新生児に見られ、多くは核黄疸となり死亡する。③成人型、グルクロン酸抱合酵素の著しい活性低下により、血中に間接ビリルビンが増加する。④直接ビリルビンが毛細胆管へ排出される過程の障害により、直接ビリルビン血症をきたす。その排出異常の機構は不明である。

★ 黄疸が出現しやすい部位と随伴症状
1) 部位:眼球結膜、口腔粘膜に比較的早く出現する。顔面、全胸部には、四肢より早く出現する。
2) 随伴症状;全身倦怠感、食欲不振、悪心.・嘔吐、腹部膨満感、右季肋部痛、発熱、掻痒感、頻脈、閉塞性黄疸の時は脂肪便(灰白色)、ビリルビン尿(茶褐色)
★ 黄疸の『成り行き』(悪化したときの結果)
1) 随伴症状の悪化
2) 脂溶性ビタミンKの吸収障害やプロトロンビン生成障害による出血傾向
3) 脂肪の分解能力の低下による便秘
4) 肝性脳症