患者さん由来iPS細胞でALS病態解明・治療薬シーズを発見

1)ALS患者さん由来のiPS細胞を用いて病態モデルを構築
ALSに罹患していないコントロールの方5名から樹立したiPS細胞とTDP-43に変異のあるALS患者さん3名から樹立したiPS細胞を用いて、それぞれ運動ニューロンへと分化誘導させたところ、ALS患者さん由来の細胞では、コントロールの方由来の細胞と比較して、神経細胞骨格を作る遺伝子のmRNA量が低下し、神経突起が短くなっていることを明らかにしました。さらに、TDP-43のmRNA量が増加し、ALS患者さんで見られるのと同じようなTDP-43タンパク質の凝集体形成が生じていること、ストレスに対して脆弱になっていることを見いだしました。このように、ALS患者さん由来のiPS細胞を用いて、ALS病態モデルを構築することができました。

2)病態モデルを用いてALSに対する新規治療薬シーズ(アナカルジン酸)を発見
遺伝子発現の解析から、ALS患者さん由来のiPS細胞から作製した運動ニューロンでは、RNAの合成や運搬(RNA代謝)に異常があると考えられました。そこで、RNA代謝に作用することが知られている4つの化合物をそれぞれ作用させたところ、アナカルジン酸には、TDP-43の発現量を低下させ、ALS運動ニューロンのストレスに対する脆弱性と神経突起の長さを改善する効果があることがわかりました。

引用
2012年8月2日 京都大学 iPS細胞研究所(CiRA) 科学技術振興機構(JST)