早期の関節リウマチ(RA)患者に対するメトトレキサート(MTX)ベースの厳格な治療管理レジメンに、プレドニゾン10mg/日を追加すると、MTXのみを用いた場合に比べ、びらん性関節損傷の進行が抑制され、シクロスポリンや生物製剤の必要性が下がることが分かった。

以上、詳細は下記または引用サイトおよびAnn Intern Med誌をご覧ください。
正直リウマチはあまりよくわかりませんが、こういった研究は非常に重要なことと感じています。追跡期間も長く、予後や副作用を視野に入れていると感じます。
早期の状態を維持することが重要となっている現実には、もどかしさを感じますが、より良い医療が発展することを心より期待します。


2012. 3. 23
Ann Intern Med誌から
早期RAの厳格管理にステロイド追加で関節破壊抑制
MTXベースのレジメンに追加、オランダのCAMERA-II試験

早期の関節リウマチ(RA)患者に対するメトトレキサート(MTX)ベースの厳格な治療管理レジメンに、プレドニゾン10mg/日を追加すると、MTXのみを用いた場合に比べ、びらん性関節損傷の進行が抑制され、シクロスポリンや生物製剤の必要性が下がることが分かった。オランダUtrecht大学医療センターのMarije F. Bakker氏らが行った二重盲検無作為化試験の結果で、論文は、Ann Intern Med誌2012年3月6日号に掲載された。

 RAと診断された患者には速やかに適切な治療を開始することが重要だ。治療に反応しやすい「Window of opportunity」の間に疾患活動性を厳格に管理する薬物療法を行って寛解を誘導できれば、短期的予後と長期的予後のいずれも良好になると考えられている。

 厳格管理は、RAの活動性を指標として、患者ごとに投与する薬剤や用量を調整する戦略で、一定期間のうちに設定された基準まで活動性を下げる、または寛解を誘導することを目指す。ステップダウン戦略とステップアップ戦略の両方が有効だが、どちらにも利点と欠点がある。

 著者らは、抗リウマチ薬としてのステロイドの有効性は示されているが、厳格管理に用いた研究がなかったことに注目。MTXを用いた厳格管理にプレドニゾンを追加した場合の転帰への影響を調べる2年間の二重盲検無作為化試験CAMERA-IIを行うことにした。

 03~08年にオランダの7カ所の病院で患者登録を実施。87年の米リウマチ学会(ACR)の診断基準を満たした、診断から1年未満で18歳超のRA患者のうち、抗リウマチ薬とステロイドの投与歴を持たない236人を登録。MTXベースの厳格管理+偽薬(119人)またはMTXベースの厳格管理+プレドニゾン10mg/日(117人)に無作為に割り付けた。

 MTXの開始用量は10mg/週とし、葉酸0.5mg/日をMTX投与日以外に使用するよう指導した。全員にビスホスホネート、炭酸カルシウムとビタミンD3を処方した。月1回の受診時に治療に対する反応を評価し、患者ごとに用量を調整した。

 受診時には、腫脹関節数(0~38個)、圧痛関節数(0~38個)、赤血球沈降速度(ESR、1~140mm/時)、CRP値(正常域は10mg/L未満)、朝のこわばりの持続時間(0~180分)、VASスケール(1~100mm)を用いた疼痛スコアと全般的な幸福感を示すスコアを評価し、疾患活動性スコア(DAS28、スコアは0~9.3、高スコアほど疾患活動性は高い)を算出した。3カ月に1回、健康評価質問票(HAQ、スコアは0~3、高スコアほど障害レベルは高い)を用いて身体障害の程度を調べた。

 「腫脹関節数が20%超減少し、圧痛関節数、ESR、VASスコアの3項目のうち2項目以上が20%超の改善を示す」場合に、「治療に反応した」と判断した。

 このレベルの改善が見られなかった患者については、寛解達成までMTXを5mg/週ずつ増量した。「寛解」は、「腫脹関節数が0。かつ、圧痛関節数が3個以下、VASスコアが20mm以下、ESRが20mm/時間以下の3条件のうち2つ以上を達成」と定義した。MTXの用量の上限は30mg/週または最大耐用量までとし、最大耐用量を4週間投与しても寛解に至らない患者については、MTXを経口投与から皮下注射に変更、最大用量の皮下注射でも好ましい反応が得られなければ、次の段階としてシクロスポリンまたはアダリムマブを追加した。

 主要転帰評価指標は、2年後の時点で関節X線写真に見られるびらん性関節損傷の程度とし、Sharp-van der Heijdeの骨びらんスコア(SHS、スコアは0~280)を用いて評価した。

 2年間の治療を完了したのは両群ともに85人だった(プレドニゾン群の32人、偽薬群の34人が脱落)。追跡期間の中央値はそれぞれ25.2カ月と25.5カ月だった。

 2年時のびらん性関節損傷は、MTX+偽薬群よりもMTX+プレドニゾン群で少なかった。SHSの中央値は、プレドニゾン群が0(四分位範囲は0~0)、偽薬群が0(0~2)(P=0.022)。SHSの累積確率プロットでは、2年の時点で骨びらんが全く見られない患者の割合が、プレドニゾン群が78%、偽薬群が67%であることが示された。また、骨びらんが認められた患者のみを線形混合モデルを用いて比較すると、2年時のSHSはプレドニゾン群の方が0.87低かった(回帰係数は-0.87、信頼区間は-1.31から-0.43、P=0.001)。

 関節裂隙狭小化(JSN)スコアと総Sharpスコア(上記のSHSとJSNスコアの合計)には有意差は見られなかった(それぞれP=0.70とP=0.32)。

 当初6カ月間は、偽薬群に比べプレドニゾン群で、疾患活動性(DAS28)、身体障害の程度(HAQ)、疼痛スコア(VAS)、ESRは有意に良好だった。だが、2年時までにDAS28とVASスコアの有意差はなくなった。

 寛解となった患者は、プレドニゾン群72%、偽薬群61%(P<0.089)。寛解持続期間の平均は両群ともに10カ月だったが、持続的な寛解を達成するまでに要した時間はプレドニゾン群の方が短かった(プレドニゾン群6カ月、偽薬群11カ月、P<0.001)。

 さらに、MTX皮下注射を必要とした患者の割合は、プレドニゾン群の方が少なく(P<0.001)、投与されたMTXの最大用量もプレドニゾン群で低かった(P<0.001)。シクロスポリンまたはアダリムマブが適用された患者の割合は、プレドニゾン群が15%、偽薬群が41%で、顕著な差を示した(P<0.001)。

 有害事象を経験した患者の割合はプレドニゾン群が74%、偽薬群が79%。重症有害事象はそれぞれ2%と4%だった。体重増加の平均はプレドニゾン群が2.9kg、偽薬群が1.3kgで、有意な差が見られた(P=0.028)。

 低用量プレドニゾンの追加は、MTXベースの厳格管理を受ける早期RA患者に様々な利益をもたらすことが明らかになった。

 原題は「Low-Dose Prednisone Inclusion in a Methotrexate-Based, Tight Control Strategy for Early Rheumatoid Arthritis A Randomized Trial」、概要は、Ann Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。