入院時の歩行速度が遅い高齢者は入院期間が長くなる。
具体的には毎秒0.4m未満だと毎秒0.6m以上の人より1日半延長するとのことです。
こんなことを知っていれば、リハビリの評価や実施に意味をプラスできるのではないかと思います。
今後とも、より良いリハビリテーションライフをお過ごしください。

詳しくは下記を、また内容は日経メディカルオンラインとArch Interm Medより引用しています。
宜しければ、あわせてご参照ください。


Arch Intern Med誌から
入院時の歩行速度が遅い高齢者は入院期間が長くなる
毎秒0.4m未満だと毎秒0.6m以上の人より1日半延長

急性疾患で入院した高齢者の入院時の歩行速度測定が、患者の入院期間と、退院して自宅に戻る患者の割合(自宅退院率)の予測に役立つことが、米Texas大学のGlenn V. Ostir氏らが行った前向き研究で示された。論文は、Arch Intern Med誌2012年2月27日号に掲載された。

 現在、急性疾患で入院した高齢者の運動能力の評価に主に用いられているのは、日常生活活動(ADL)障害レベルを看護師が評価する方法、または患者の自己申告により判定する方法だ。

 これまでに、高齢者の歩行速度が1.0m/秒超であることは、ADLの自立を反映し、地域社会での生活が可能であることを示す重要な指標であること、反対に、0.6m/秒未満になると介助の必要性が高まることが示されている。2011年には、65歳以上の高齢者を登録した大規模な9件のコホート研究のプール解析によって、その集団全体の余命の中央値まで生きた人々の歩行速度はほぼ0.8m/秒で、それより早かった人々はより長く生き、遅かった人の余命は中央値より短かったと報告されている。

 こうした知見から、著者らは、入院時の高齢患者の歩行速度測定が、ケアの必要性や転帰、退院後の生活状態などの予測に役立つ、より客観的で簡便な評価法の一つになるのではないかと考えた。

 08年3月から09年10月までに、Texas大学医学部付属病院の高齢者急性ケアユニット(ACE)に入院した高齢者の歩行速度を測定し、入院期間、自宅退院率との関係を分析した。

 地域在住の65歳以上の高齢入院患者を前向きに登録。入院時に見当識障害がある患者、経過観察のための入院患者、終末期の患者、日帰り手術を受ける患者は除外し、入院時の診断が心肺疾患、呼吸器疾患、消化器疾患ではなかった患者も除外した。

 条件を満たした322人の歩行速度(m/秒)を、入院から24時間以内に測定した。歩行時は、本人が保有する歩行補助器具の使用を認めた(57人が使用)。立った状態でスタートし、普段通りの速度で8フィート(約2.4m)歩くよう依頼し、終了までに要した時間を測定。Guralnik氏らの方法を用いて調整した4m歩行速度を算出し、これに基づいて、「歩行検査を完了できず」「歩行速度0.40m/秒未満」「歩行速度0.40~0.59m/秒」「歩行速度0.60m/秒以上」に分類した。

 著者らはさらに面接調査を行い、年齢や性別、人種、学歴、婚姻状態などの情報を得ると共に、Charlson併存疾患指数やBMIも記録した。ADLの評価は、入浴、更衣、歩行、移動、食事、排泄、整容の7項目について行い、介助が必要な項目をカウントし、合計を算出した。ADLスコアは0から7までの範囲で、高スコアほど障害度が高いことを意味する。

 入院時の平均年齢は76.1歳(SDは6.9)、63.7%が女性だった。Charlson併存疾患指数の平均は2.7で、BMIの平均は28.1と過体重を示した。ADLスコア0(障害は一つもない)の患者は全体の54.3%だった。

 歩行を完了できなかった患者は116人(36%)いた。残る206人(64%)は測定を完了した。歩行速度が0.40m/秒未満が69人、0.40~0.59m/秒が65人、0.60m/秒以上が72人で、平均すると0.53m/秒だった。歩行速度と有意な関係を示したのは年齢(P<0.001)だった。
歩行速度は、入院期間と自宅退院率の両方と、強く関係していた。

 入院期間の平均は4.1日(SDは3.9)。歩行未完了群では4.8日(4.7)、歩行速度0.40m/秒未満群は4.1日(3.9)、0.40~0.59m/秒群が3.6日(3.2)、0.60m/秒以上群が3.1日(2.6)だった。

 ベースラインの患者特性で調整した多変量一般化線形回帰モデルを用いて、入院期間と、歩行速度、ADLスコアとの関係を調べた。その結果、歩行速度0.60m/秒以上群を基準とした場合、歩行未完了群では1.82日、歩行速度0.40m/秒未満群では1.48日、それぞれ入院期間が長くなることが明らかになった。ADLスコアでは、両者にそれほど強い関係は認められなかった。スコア3~4群のみ、スコア0群と比較して入院期間が1.79日長くなることが分かった。

 全体の自宅退院率は82.5%。歩行未完了群は66.4%、歩行速度0.40m/秒未満群は82.6%、0.40~0.59m/秒群が92.3%、0.60m/秒以上群は98.6%だった。

 ベースラインの患者特性で調整した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、歩行速度が0.60m/秒以上のグループを参照群とし、自宅退院の調整オッズ比を求めた。歩行未完了群(0.03、0.003-0.21)と歩行速度0.40m/秒未満群(0.07、0.01-0.63)は、自宅退院の可能性が有意に低かった。0.40~0.59m/秒群は0.24(0.03-2.26)で、有意な値にならなかった。同様に、ADLスコアが0の患者を参照群とすると、スコア1~2群の自宅退院の調整オッズ比は0.64(0.21-1.91)で有意性を示さなかったが、3~4群は0.23(0.09-0.55)、5以上群は0.10(0.04-0.24)となった。

 入院期間、自宅退院率の両方について、ロジスティック回帰モデルを用いてROC曲線下面積(C統計量)を求めた。入院期間の予測においては、歩行速度のROC曲線下面積は0.64(0.56-0.70)、ADLスコアは0.63(0.56-0.69)で、ほぼ同様だった。これら2つの指標を組み合わせた場合には、ROC曲線下面積は0.65(0.58-0.70)とわずかに上昇した。

 自宅退院率の予測に関するROC曲線下面積は、歩行速度が0.84(0.79-0.89)、ADLスコアが0.81(0.78-0.89)となり、いずれも高い予測能力を示した。これらの指標を組み合わせた場合には0.86(0.81-0.91)に上昇した。

 歩行を完了できない患者や歩行補助器具を使用した患者も少なからず存在したが、それらも含めて歩行速度の測定は安全に行うことができた。入院時の歩行速度は、入院期間、自宅退院などの高齢者の健康にかかわる重要な転帰に強く関係することが明らかになった。

 原題は「Assessing Gait Speed in Acutely Ill Older Patients Admitted to an Acute Care for Elders Hospital Unit」、概要は、Arch Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。

引用;http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201203/524039.html
   H24.3.16. 日経メディカルオンラインより