チーム医療クリニック
結論:クラスⅡ研究2 件およびクラスⅢ研究1件によると、ALS ケアを専門とするチーム医療クリニックは以下の点においておそらく有効である:補助具/(補)装具の使用率の上昇;リルゾール使用率、PEG 施行率およびNIV 施行率の上昇;QOL の改善;生存期間の延長。しかしながら、各種治療法の実践・使用率が低かったクラスⅡ研究1 件では、生命予後の改善が認められなかった。
推奨:ALS 患者のチーム医療を行っている専門施設への紹介は、医療提供の最適化(レベルB)および生存期間の延長(レベルB)のために検討すべきであり、QOL の改善(レベルC)のために検討してもよい。

以上、チーム医療におけるメリットは、上記のものが推奨されていて、生命予後は延長しているものの有意差がみられていないという結果となっております。
参照して頂ければ幸いです。詳細は下記または本文献をご覧ください。

チーム医療、症状管理および認知/行動告知障害(エビデンスに基づくレビュー) チーム医療クリニック

チーム医療クリニック
チーム医療による管理は転帰の改善をもたらすか?
 チーム医療が行われる専門施設の場合、ALS患者は医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、社会福祉士、呼吸療法士、看護ケアマネージャーによる包括的ケアを受ける。
ある研究結果からは、診療指標の遵守状況はさまざまであることが示されている(クラスⅢ)。
専門施設では患者ケアのコーディネイトならびにプライマリケア医や地域サービスとの相互連携を行っている。ALS 専門施設への受診患者は神経内科クリニックへの受診患者に比べて年齢が低く、症状を有する期間が長いことから、施設への紹介バイアスが存在する可能性が考えられる(クラスⅡ)。
 イタリアにおいて、ALS 専門施設への受診患者97 例と神経内科受診患者124 例の間で患者
ケアおよび生命予後の比較が行われた(クラスⅡ)。ALS 専門施設では、リルゾールの使用率、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の施行率、非侵襲的呼吸補助(NIV)の施行率がそれぞれ高く、入院頻度は低かった。また、平均生存期間はALS 専門施設への受診患者の方が長かった(1,080 日対775 日、p = 0.008)。Cox 多変量解析の結果から、ALS 専門施設への受診は生存期間延長に関する独立した予測因子であることが示された。
 アイルランドの研究結果では、ALS のチーム医療クリニックを受診した患者において生存期間の延長(7.5 ヵ月、p < 0.0001)が認められた(クラスⅡ)。ALS 専門施設への受診患者は比較的年齢が低く、リルゾール使用率(99%対61%)が高かった。チーム医療は生存に関する独立した予測因子であり(p = 0.02)、5 年間の研究期間中に死亡リスクを47%低下させることが示された(クラスⅡ)。オランダにおいては、ALS チーム医療クリニックを受診した患者133例と一般的ケアが行われた患者75 例の比較が行われた(クラスⅢ)。患者のマッチングは適切であり、データの収集は盲検性が維持された状態で看護師により行われた。解析の結果、チーム医療クリニック受診患者で補助具/ 装具の使用率(93.1%対81.3%、p = 0.008)がより高く、QOL(SF-36 Health Survey に基づく、p < 0.01)もより高かった。チーム医療クリニックは、1 回の受診による有益性が認められたことから、患者ケアの調整が優れていると考えら
れた。
 その一方、あるクラスⅡ研究では、チーム医療クリニックの受診による生命予後の改善は証明されなかった。チーム医療クリニックでは、リルゾールの使用率(61%対43%、p = 0.02)は高かったが、PEG 施行率(6%対2%)およびNIV 施行率(いずれも2%)は極めて低かった。チーム医療クリニックへの受診患者では12 ヵ月後の生存率が10%高かったが、有意差は認められなかった。肯定的な結果が得られた前述の2 件の研究に比べ、本研究では緩和ケア、ケースマネジメント、PEG、NIV およびリルゾールの実践・使用率が低く、生命予後の改善が認められなかったのはこれらの要因による可能性がある。
結論:クラスⅡ研究2 件およびクラスⅢ研究1件によると、ALS ケアを専門とするチーム医療クリニックは以下の点においておそらく有効である:補助具/(補)装具の使用率の上昇;リルゾール使用率、PEG 施行率およびNIV 施行率の上昇;QOL の改善;生存期間の延長。しかしながら、各種治療法の実践・使用率が低かったクラスⅡ研究1 件では、生命予後の改善が認められなかった。
推奨:ALS 患者のチーム医療を行っている専門施設への紹介は、医療提供の最適化(レベルB)および生存期間の延長(レベルB)のために検討すべきであり、QOL の改善(レベルC)のために検討してもよい。


引用:Neurology 2009;73: 1227–1233