重力は感覚器にまで影響を与えます。
障害により、寝たきりになることで感覚器が障害され、感覚器の障害により関節の不安定を引き起こします。

この文献では半月板・膝前十字靱帯におけるルフィニ終末・パチニ小体に変形や減少を認めるということです。それはラットの検証では4週から起きるとされています。

受容器の廃用性変化は1日1時間、週5日の運動により防止出来たとしています。

気になる方は下の引用をみてください。


重力と運動療法
金子尚彦ら   理学療法26巻5号2009年5月P597-603

はじめに
安静臥床では重力負荷が消失するわけではないが軽減されており、さまざまな心身機能低下を引き起こす。呼吸循環系では身体作業能の低下、起立不耐性、肺膨張不全、筋骨格系では筋力低下、関節拘縮、骨粗鬆症、皮膚では褥瘡、神経系では圧迫性神経障害、身体動揺の増大、精神心理では抑うつなどがある。ヒトは重力を活用することによって身体機能を正常に維持していると言える。

荷重除去による機械受容器への影響
1. Michinakaらは、ウサギの膝関節をギプス固定し、膝前十字靱帯に存在する機械受容器の定性下、定量的な研究を行った。その結果、関節不動化により神経終末の一部が形態に変形を示し、数の減少が観察された。この報告では2種類の非定型受容器が観察された。この報告では2種類の非定型受容器が観察されている。その定義は、非定型パチニ小体は小体の正常な円形構造が失われ無秩序な切れ込みが観察されるもの、非定型ルフィニ終末は終末の欠落が観察されるものとされた。また不動化解除によって神経終末の総数は回復したが、定形受容器までは回復せず、非定型受容器が増加傾向にあることが示された。
2. 筆者らは、荷重除去ラットモデルにて、半月板に存在する機械受容器の数を比較した。機械受容器は、Freemanらの分類未基づき、自由神経終末を除いた被包性の機械受容器のみをカウントした。判定基準は、①受容器の形態が被包性であるもの、②近辺に分枝元の軸索が確認できるもの、③アーチファクトがなく連続切片で同定が可能なもの、とした。塩化金染色変法により、ラット半月板ではパチニ小体とルフィニ終末が観察された。懸垂群と対象群の比較では4週のみに有意に数の減少を認めた。懸垂群間の比較では4週群が他の群に比べて数の減少を有意に認めた。
3. ラット膝前十字靱帯に存在する機械受容器の荷重除去の影響についても上記の方法で比較した。懸垂4週群が対象群と比較して有意に数の減少を認めた。また懸垂4週群には、Michinakaらの関節固定モデルと同様、非定型受容器も存在していた。関節固定モデルと違い、今回の荷重除去モデルでは、下肢関節は自由に運動が可能であったが、受容器の数の減少と変化を認めた。
4. また、4週間懸垂中のラットを1日1時間、週5日懸垂を除去し、ゲージ内で飼育した運動群、懸垂を行わずゲージ内で4週間飼育した対象群、4週間懸垂のみを行った懸垂群に分け、膝千十字靱帯に存在する機械受容器の数を比較した。運動群は対象群と比較して機械受容器の数の減少を認めた。運動群は対象群と比較して機械受容器の数に差がなかったことから、懸垂群よりも、1日1時間(5日/1週間)の荷重運動を行った運動群の方が、受容器の変性をより防止することができたのではないかと推察された。速度や加速度など重力の影響を感知している受容器の形態を維持するためには、力学的刺激が重要な要因であることが示唆された。
5. Kennedyらは、靭帯が損傷すると、機械受容器からのフードバック機能の不全が起こり、関節周囲筋群の防衛反応が喪失され、膝関節の弛緩度が増すという悪循環に陥るとしている。上述の筆者らが行った荷重除去ラットモデルの結果を踏まえると、荷重除去により機械受容器の数が減少することで、膝関節の剛性が高まらず、障害を引き起こす可能性がある。これらの研究から膝前十字靱帯は、膝関節の制動や生理関節誘導を行うために重要な役割を果たしているが、この機能を担うためには靭帯内の神経終末の存在を考慮しなくてはならない。

引用:理学療法26巻5号2009年5月P597-603

以上です。
上記に1-5の番号を振りました。
1ではACLにおけるルフィニおよびパチニの変性・数の減少が生じ、不動化解除により数は回復するが変性は回復しないとした報告です。
2では半月板のルフィニ・パチニの数の減少を示したという報告です。これによれば4週目に数の減少が起こっています。
3ではACLにより検討で同じく4週目に受容器の数の減少と変化を認めています。
4では1日1時間、週5日運動させた群も検討しています。運動群は受容器の変性を防止することができたとしています。
5では、まとめです。感覚器の減少は筋の弛緩を引き起こし、さらに障害を引き起こす可能性があるとしています。

元来ALSでは感覚障害がないとされていました。しかし、長期の寝たきりによる2次的な廃用性の変化では十分すぎるほど可能性があります。このような基礎的なことも患者様の全身を把握する上で重要になってくるのではないでしょうか。