今日は呼吸不全の病態理解を深めるをテーマに書いてみました。

急性呼吸不全の病態は主に4つシャント・換気血流比不均等・拡散障害・低換気です。

低換気は理解が比較的簡単であるため、ここでは特記していません。

シャント・換気血流比不均等・拡散障害について主に記載しています。
簡単に述べると全てにおいては血液が肺胞とガス交換を行えない、または行いにくい状態になってしまいます。理由はシャントなら肺胞の虚脱等、換気血流不均等なら肺胞レベルでの血流と換気の差により効率位的でなくなるため、拡散障害なら肺胞-血管間に肥厚など何らかの変化がある状態が起こっているからです。

色々な疾患に出会ったときに、このレベルまで下げて呼吸不全についての理解を深める必要があります。

病態生理を考えることが、リハビリをする上での一助となります。



急性呼吸不全の病態と治療  MB Med Reha No.78:1-7,2007
平尾 収

呼吸不全の診断と分類
厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班による呼吸不全の診断基準と分類を示す(1~3)

1.室内吸入時の動脈血酸素分圧が60mmHg以下となる呼吸障害またはそれに相当する異常状態を呼吸不全と診断する.
2.呼吸不全を動脈血炭酸ガス分圧が45mmHgを超えて異常な高値を呈するもの(Ⅱ型)とそうでないもの(Ⅰ型)とに分類する.
3.慢性呼吸不全とは呼吸不全の状態が少なくとも1ヵ月持続するものをいう.
 (注)動脈血酸素分圧が60mmHgを超え、70mmHg以下のものを順呼吸不全状態として扱うことにする

急性呼吸不全の病態
主に4つ<シャント><換気血流不均等><拡散障害>とこれは下記では述べないが<低換気>が挙げられる。

左右シャント
左右シャントとは体組織から心臓へ帰ってきた静脈血が肺胞‐毛細血管系における酸素化を経ないで左心に至り体循環へと流れるもので、正常でも心拍出量の約2~3%存在する.
病的な解剖学的シャントとしては心内シャント(心房や心室中隔欠損、動脈管開存など)や肺内シャント(肺動静脈瘻など)がある.
肺胞の虚脱や充満によって呼吸不全が起こる肺水腫,肺炎,無気肺,ARDS患者のガス交換障害は左右シャントにより障害されている.
左右シャントの特徴は、酸素投与にてPaO2が改善しないことである.左右シャントによる低酸素血症は、換気血流不均衡よりも一般的に重症である.

換気血流不均衡
最適な酸素の体内への取り込みは、肺胞それぞれで換気と血流のバランスが適正かどうかに左右される.
若年健常人の換気血流比は肺胞のほとんどで0.3~2.1の間にあるが年を経るとともにそのばらつきは大きくなり、換気血流比が0.3以下の場合は換気が少なく血流が多い場合でシャント様血流と呼び、換気血流比が2.1以上の場合は換気が多く血流は少ない状態で死腔様換気と呼ぶ.換気血流比が0の場合はシャントとなり、前述の項で示した事項と同じである.また換気血流比が∞の場合は死腔と呼ぶ.
換気血流比の不均衡を是正するために、生体は代償機能を持っている.換気血流比が低い場合、肺胞内の酸素分圧の低下に伴って肺血管を収縮(hypoxic vasoconstriction)させて換気血流比を是正する.換気血流比が高い場合は、肺胞内の二酸化炭素分圧の低下に伴って気管支を収縮(hypocapnic bronchoconstriction)し換気血流比を是正する.しかし、これらの効果は限定的である.

拡散障害
肺胞気と肺毛細血管の間でガス交換が行われているのは、ガスの拡散現象によるものである.
したがって、拡散が妨げられるような原因があれば、ガス交換が阻害される.
原因としては、肺胞壁や毛細血管壁の肥厚、間質の拡大、拡散面積の減少などがあり、拡散障害を起こして低酸素血症を引き起こす.CO2の拡散率はO2の20.3倍も良いため、拡散障害のみでCO2の蓄積は起こらない.

引用:MB Med Reha No.78:1-7,2007