今回は一般的な呼吸リハ(慢性期)について記載しました。

要約
主対象としてCOPDの(もちろんCOPD以外も)、目的として肺障害による病的呼吸困難コントロール・急性増悪の予防させるにはどうしたら良いかということです。運動療法は週3、最大負荷強度の60-80%程度で、低負荷・インターバルトレーニング・酸素吸入やNPPV、筋トレを組み合わせて行います。COPDにおいては薬物療法や酸素吸入によって得られる効果よりも大きいとされています。しかし、評価法やそれに伴う手技の洗練には多くの課題も残っています。

エビデンス・推奨レベルが高いものは、やはりCOPです。特に神経筋疾患(ALS等)はエビデンス・推奨レベルが低い現状があります。しかし、参考にして多くのトライをしていくべきだと思います。現状できることが限られていても、患者様の病態は月単位で進行してしまいますから。


呼吸療法認定士の受け付けも明日に迫っていますし、この話題かなと思いまして。
書き始めたら、量が多すぎるので、急性期については明日にまわします。


呼吸器科医の立場からみた呼吸リハビリテーション   Jpn Rehabil Med 2009 ; 46 565-571
安藤守秀

慢性期の呼吸リハ
1)対象
主対象は<症状のある慢性呼吸器疾患患者で標準的治療により状態が安定しており呼吸器疾患による症状と機能的制限がある者>であると考えられている。主にCOPDだが、その他の疾患に対しても効果的と考えられている。年齢・肺機能・動脈血ガス値による制限はないと一般的に考えられている。
2)目的
疾患の状態の安定化あるいは改善、症状を減少、機能状態を最善にし、社会参加の度合いを増し、医療費を減少させる。具体的に①肺機能障害により起こる労作時の病的呼吸困難をコントロールしADLの制限を改善すること②感染などにより起こる急性増悪を防止、それによる入院回数、日数を減少させること、の2点が呼吸リハの最も重要な目的であると広く認識されている。
3)呼吸リハプログラムの基本構成
慢性期の呼吸リハプログラムは運動療法中心。基本構成として①呼吸法訓練②運動療法③栄養指導や増悪時の対処を含む教育指導、が3つの柱となる。プログラムは週3回、4-12週のセッションを基本とし、プログラム終了後も何らかの維持プログラムを用いて獲得した能力の維持を図るべきであると考えられている。
4)運動療法
運動療法は主に骨間筋の代謝機能の改善を通して運動時の筋肉での乳酸産生を抑制し、それによって動作時の動作時の換気需要の低減をもたらすことを奏功機序としている。運動療法は下肢の持久性運動を中心に上肢の運動も組み合わせ、一定の頻度(週3回以上)、強度(最大負荷強度の60~80%)、回数・時間以上(同15~20分)で行う必要がある。また筋力トレーニングも含めるべきである。症状が強く運動強度を確保しにくい患者では低強度負荷やインターバルトレーニング、酸素吸入やNPPVも組み合わせてトレーニングを実施することも考慮する。またそうした患者では通常リハ開始時はコンディショニングやADLトレーニングを中心に実施し、状態の改善にあわせて徐々に運動療法の比重を上げていく。
5)効果
慢性期の呼吸リハの効果については近年ACCP/AACVPR(American College of Chest Physicians/American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation)の新しいガイドラインによって、最新のevidenceがまとめられている。それによると、COPD患者の息切れを軽減することでHRQOLを改善すること、6-12週のリハで得られた効果は12-18ヵ月かけて徐々に減少すること、COPD患者は歩行に関わる筋群のトレーニングが必須であること、筋力トレーニングを加えることで筋力増強・筋力増加が得られること、上肢の持久力トレーニングはCOPD患者に有用で呼吸リハに加えるべきであること、低強度および高強度負荷による運動療法はCOPDにおいてともに臨床的に有用であること、などが高いエビデンスレベル、高い推奨レベルとなっている。慢性期の呼吸リハの効果の大きさは6分間歩行距離で50m弱、QOLテストではMCID(minimum clinically important difference)を上回るレベルにある。このような効果の大きさは薬物療法や酸素療法によって得られるものより大きい。また急性増悪に対するAction planを含む教育指導が急性増悪による入院日数、日数を有意に減少させることも明らかにされている。
6)呼吸リハの治療上の位置づけ
WHOによるCOPDの診断と治療に関するガイドラインでは、呼吸リハを中等症以上のCOPDにおいて長期作動型気管支拡張剤と並ぶ治療の第一選択と位置づけている。
7)慢性期呼吸リハの課題
現場での普及は発展途上であり、また治療技術としての洗練の面でも多くの課題を抱えている。
呼吸と運動について何を知っているのか。労作時の病多岐な呼吸困難は慢性呼吸器疾患に多くみられる重要な症状であり、QOLを損なう主要な因子となっている。労作時の呼吸困難感は換気を制限する様々な因子と換気を病的に亢進させる様々な因子との相互作用により生じる。常にそれぞれ複数あり、その比重は患者により、その時々によりそれぞれ異なる。しかし、個別の要因を評価する方法、それぞれの要因の比重を評価する方法も持ち合わせていない。そうした問題が呼吸リハの手技の洗練を妨げる。
運動させればよいのか。運動療法は中心的な手技であるが、COPDにおいても実際に奏功するのは60%に過ぎず、経験的には非COPDであればその比率はさらに低下する。こうした運動療法無効例に対してそれに代わる治療を現時点で私たちは知らない。

引用:Jpn Rehabil Med 2009 ; 46 565-571
以上です。