草野心平 『ごびらっふの独白』
http://youtu.be/e3RJAl9QjWA
草野心平(1903-1988)
福島県石城郡上小川町(現在のいわき市)出身。
蛙や富士山の詩を数多くつくった、日本を代表する詩人です。
『ごびらっふの独白』
【日本語訳】
幸福といふものはたわいなくつていいものだ。
おれはいま土のなかの靄のやうな幸福につつまれてゐる。
地上の夏の大歓喜の。
夜ひる眠らない馬力のはてに暗闇のなかの世界がくる。
みんな孤独で。
みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。
うつらうつらの日をすごすことは幸福である。
この設計は神に通ずるわれわれの。
侏羅紀の先祖がやつてくれた。
考へることをしないこと。
素直なこと。
夢をみること。
地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもつてゐる
といふことは平凡ではあるが偉大である。
とおれは思ふ。
悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。
われわれはただたわいない幸福をこそうれしいとする。
ああ虹が。
おれの孤独に虹がみえる。
おれの簡単な脳の組織は。
言わば即ち天である。
美しい虹だ。
ばらあら ばらあ。
☆西塔紅美のよみきかせシリーズ No.16
『ごびらっふの独白』声にだすことばえほん
monologue of Gobiraff/ recited by Nao Cumy:in Japanese.
詩 草野心平
絵 いちかわなつこ
編 齋藤孝
出版社 ほるぷ出版
朗読 西塔紅美 Nao Cumy
撮影日 2013/3/11
みんなの たわいない 幸福が いつまでも つづきますように。
西塔紅美
