『脚気』という疾患…ご存知でしょうか?
ビタミンB1が不足することで引き起こされる疾患で
かつては(昭和初期ぐらいまで)この疾患で亡くなる人もたくさんいました。
全身倦怠感、食欲不振、下肢の浮腫や痺れ、動悸や脱力感など、全身に多彩な症状を認めます。
幼少期に食が細かった私は祖母から
『ちゃんと食べないと脚気になるよ』
なんてよく言われていました💦
“昔の疾患”というイメージがあるかと思いますが
食生活が豊かになった現代でも
この疾患に罹患する方がたくさんいらっしゃいます。
過度なダイエットで栄養が偏ってしまったり
糖質やアルコールの過剰摂取、激しい運動などによっても脚気が起こります。
↑ビタミンB1というのは、糖質をエネルギーに変換したり、アルコールの分解を助ける作用があるからです。
脚気の検査法ってご存知ですか?
『打腱器』という器具で膝蓋腱(膝のお皿の下辺り)を叩いて
ビクンって下肢が動けば正常
動かなければ脚気の可能性がある
とされています。
↑これを『膝蓋腱反射』と言います。
膝蓋腱の解剖です。
内科診断学の実習でやりました。
当時は結構難しくて
なかなか腱反射が出なくて苦労しました。
ペアを組んでお互いの膝を叩き合うのですが
あまり下手くそだと先生が
『こうやるんだよ?』
と言ってお手本を見せてくれました。
そのうちにだんだん上手になっていくのですが
1人だけ
先生がやっても膝蓋腱反射が出ない学生がいました。
後で呼ばれてさらに検査をしたところ
その学生…脚気にかかっていたことが判明しました(笑)
前述の打腱器ですが
脚気の検査に使うだけではなく
他の部位の腱反射…
例えば
アキレス腱反射や下顎反射、上腕二頭筋反射や上腕三頭筋反射などを診るのにも使います。
腱反射が消失したり減弱する場合…
脊髄から出る運動神経や感覚神経、神経・筋接合部や筋の障害が
逆に亢進したりする場合
脳や脊髄そのものの障害が
示唆されます。
腱反射を調べてカルテに記載する時
こんな風な絵を描いて所見を記入します。
なんか可愛いでしょ?(笑)
※(−)は消失、(+)は正常、(++)は亢進、(+++)だとさらに亢進。
この打腱器…黒い部分はゴムで出来ていて
ここを腱に当てて叩くのですが
金属で出来た柄の部分も実は重要なんです。
『バビンスキー反射』を調べる時などに使用します。
柄の先端部を足底に当てて下図のように撫でます。
『バビンスキー徴候』陽性と言います。
これは病的反射の1つで
正常では認められません。
脳脊髄の錐体路系に出血や炎症、腫瘍等があると陽性になります。
一般内科のドクターは皆さん聴診器をいつも携えていますが、私たち精神科医はあまり携帯しません。
その代わりに打腱器は常に白衣のポケットに忍ばせています✌️
打腱器は通常安いもので2000円くらいですが
精神科や神経内科、脳外科の教授レベルになるとめちゃくちゃ高価な打腱器を持っています。
私の母校の神経内科の教授なんて
金で出来た『ゴールドハンマー』を持っていました😲
お話が脱線してしまいましたね。
すみません💦
脚気にならないためにはビタミンB1の摂取が重要ということなのですが
じゃあどんな食品にビタミンB1がたくさん含まれているの?
ってことですが
ずばり
玄米です‼️
白米はダメ❌
なんです。
オランダの医師・生理学者で
クリスティアーン・エイクマンという人が発見しました。
ニワトリに白米を与え続けるとヒトの脚気に似た症状を呈すということ
そのニワトリに今度は玄米や米ぬかを与えると病気が治る
ということにエイクマン先生は気づいたのです。
その後、玄米や米ぬかのは何か重要な栄養素が含まれているのではないか?と考え
それがビタミンB1の解明に繋がりました。
エイクマン先生はその業績により
ノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
ただ…
実際にビタミンB1を『オリザニン』として分離・抽出して発見したのは
日本の鈴木梅太郎先生でしたが💦
で、本日11月5日はエイクマン先生の忌日です。