本日7月13日は『生命尊重の日』です。

昭和23年の今日、『優生保護法』(現在の
『母体保護法』)が公布されたことに由来し昭和59年から実施されています。

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この法律には、実は2つの目的がありました。
一つは、優生上の見地から、“不良な子孫の出生を防止する”こと。
つまり、病気や障害を持った子が産まれてこないようにするという意味です。

そしてもう一つは、“母性の生命健康を維持する”こと。
つまり、女性の妊娠・出産する機能を保護するという意味。

この2つの目的のために、不妊手術と人工妊娠中絶を行なう条件と、避妊具の販売・指導についてを定めました。


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う〜ん
今更ながら乱暴な法律だなぁって思います。
“不良な子孫の出生を防止する”?
障害を持った人は産まれてきてはいけないのでしょうか?

レイプなどで望まない妊娠をすることがあり
さらに妊娠継続により母体の生命維持が危惧されるようなケースもあるので、人工妊娠中絶は必要であると考えています。

けれどもこの法律の盲点…『母体保護法』になってからも、“配偶者の同意がなければ中絶できない”など、『リプロダクティブ・ライツ(女性の身体への自己決定権である「性と生殖に関する権利」)に抵触しかねない条項が残されているのです。

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生命に軽重の差はない。
生命は平等に尊いもの。
生命がこの世の中で最も大切なもの。

日々の診療場面で私は常にそう意識しています。

医療現場には『トリアージ(triage)』というものがあります。
これは、クランケの重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行なうことで語源は『選別』を意味するフランス語の
“triage”です。

救急事故現場において、クランケの治療順位や救急搬送の順位、搬送先施設の決定などに用いられます。
ドラマなどでご覧になったこともあるかと思います。

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このトリアージに関して、間違った認識を持たれている方がいるので念のため。

トリアージで黒タグを付けられる→心肺停止などのため搬送は後回しにされる→救命率は低い…
だから“見殺しにする”ということではないのです。

トリアージの意味は、医師よりも負傷者が多い…という場合に、助けられる生命を優先するというものなのです。

通常の治療現場では、軽症のクランケも、心肺停止のクランケも、私たち医師は分け隔てなく全力で治療に当たっています。

最後に余談ですが…
大学の教養部時代のお話。
私の出身大学は総合大学でしたので、教養部の講義は他学部の学生と一緒に受けていました。

科学史の講義で、教授がこのような質問をしました。

『世の中で一番大切なものは何だと思いますか?』

1人の女子学生が答えました。
『愛です。愛がない人生は悲しいです。人と人がお互いを思いやることが世の中で最も価値あることだと思います』

私はこう答えました。
『生命です。他の何よりも尊いものだと思います。どんなに辛いことがあっても、健康で生きてさえいれば人生はいくらでも好転させることが可能だと思います』

そんな私の意見にある男子学生が反論しました。
『世の中で一番大切なものはお金です。お金がなければ医療を受けることはできません。生命はお金で買えるのです』と。

すると教授はこんな風に言いました。

“愛が大切”と言った女子学生に
『君、教育学部でしょ?』

“お金が大切”と言った男子学生に
『君、経済学部でしょ?』

そして私に教授は言いました。
『君、医学部でしょ?』

その通り!
教授は私たちの学部を全て言い当てたのでした💦

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