「華氏451度」で本を焼く尽くしたのは「人民」が望んだことではある
が、それをこの本の後ろに解説してあるような出版不況と結び付けるのは
無理がある。
この本の解説者は「誤解を恐れずに言うなら、私はいま本を殺しているの
は読者ではないかと考えている」と記しているが、
それはある意味では正しいと思うが「日本人の精神の劣化を示している」
というのは言い過ぎだろう。
そうなったのは、この解説にみられるような「事実を曲げた一方的な主張」
が受け入れられなくなったことも大きいのではないか。
たとえば、この小説が書かれた背景として「1950年代のアメリカに吹
き荒れたマッカーシズム旋風に抗議して書かれたもの」であり
マッカーシズムを「狂信的な反共主義を提唱した」として説明しているが、
当時のソビエトの共産主義についてはまったく触れられていない。
また、「本を殺す」というなら、その後に起こった中国の文化大革命や、
カンボジアのポルポト政権についても書くべきではないか。
続く