
伊ケ崎光雄 著
白夜書房
先日、ニュース・ゼロで、バイオマス燃料としてサトウキビを作付けするため、オレンジの生産が減
り、値上がりしていると報道していた。
曜日キャスターの長嶋一茂氏が「サトウキビからエタノールが出来るなんて初めて知った」とコメントし
ていたが、台本があるはずなのに、彼が無邪気に話すと、周りがなぜか沈黙し話さなくなるのが、おかし
かった。
日経サイエンス7月号で、日経新聞論説委員の塩谷喜雄氏が、連載しているコラムに「バイオ燃料の本
末転倒」と題した記事を載せている。
塩谷氏は、アメリカが、温暖化対策を口実に、大豆や飼料用トウモロコシの値上がりを誘導して農家の収
入を増やす、農業政策として、バイオマスを利用していると批判している。
そして、食料にできない稲わら、麦わら、廃棄材、トウモロコシの葉や茎、サトウキビの搾りかすなど
を、液体燃料に変えることこそ、本当のバイオ燃料だと、主張する。
それは、まったくその通りで大賛成だが、以下の文章が気になった。
「四半世紀前に、日本の人気プロレスラーらが事業に乗り出したのは、サトウキビはサトウキビでも、砂糖
を搾った、かす「バガス」を原料に燃料用アルコールをつくるプロジェクトだった。こちらこそバイオ燃
料の王道、食料にならない農産廃棄物を燃料に変えるシステムだ。」
実は、バイオマス燃料が話題になった頃から、アントニオ猪木の始めた事業「アントンハイセル」が
頭の隅に浮かんで消えなかったのだ。
昔に買った本をひっくり返して、上の写真の本をやっと見つけた。
捨てられずに、残っていたのがうれしい。
この本に「アントン・ハイセルの挫折 猪木、『新間』追放の真相」と題する章がある。
それによると、「ブラジルではオイルショック対策法としてサトウキビからアルコールを作り車を走らせ
ていた。
ところが、サトウキビの搾りかすと廃液が公害問題となった。
その解決に、広大な埋立地と巨額の資金が必要となり、ブラジルは困った。
それに目をつけ、サトウキビの搾りかす「バガス」と廃液にバクテリア処理をし、牛の餌を造ろうという
のが、ブラジルの国家プロジェクトとなったアントン・ハイセルの事業である。
ブラジルでは、乾燥期には牧草の入手が困難であり、飼料の安定供給が悲願だったのだ。」
この計画は頓挫し、結果、新日本プロレス、と言うより日本のプロレス界を揺るがす大事件となるのだ
が、本当のところは、真相はよく分かっていない。
力道山が刺された真相が、最近明らかにされたのと同様、関係者が大半死んだ頃、明らかになるのだろ
う。
話を本題に戻すが、オイルショックの頃も現在も、ブラジルのバイオ燃料は、サトウキビそのものから
造られ、搾りかすから造られたことはない。
塩谷氏の事実誤認のようだ。
人類は、いまだ、食料にならないセルロースからエタノールを造る技術を実用化していないし、二酸化炭
素排出を減らし、真に温暖化抑制に役立つバイオ燃料を実現させてはいない。