FLOOD OF BLOOD / SLAYER

大型のメタル・フェス「ラウド・パーク」の常連だったスレイヤー。本品「FLOOD OF BLOOD」は「ラウド・パーク’12」より、10月27日のアルティメット・ステージのトリを勤めたスレイヤーのライヴ音源を収録した商品。

 

2012年の日本公演は、トム・アラヤ(Vo)、ケリー・キング(g)、ゲイリー・ホルト(g)、デイヴ・ロンバート(ds)の編成で行われている。当時、ジェフ・ハンネマンはバンド活動を離脱中であり、ゲイリーをサポートに迎えて行われた。

 

この時は、体調が回復してジェフは何れバンドに復帰するとファンは信じていた。が、御承知のように、ジェフは翌2013年にこの世を去っている。またデイヴも、この日本公演が行われた数ヶ月後に、以降のツアーには参加しないと発表。

 

バンドの歴史の中で、デイヴは脱退と加入を何度か繰り返しており、再び去ることになった。結果的に、ゲイリーとデイヴがいる編成の日本公演はこの時のみ。2015年の日本公演はポール・ボスタフがドラムを叩いている。

 

さて、バンドは2012年の来日時に大阪で単独公演を行い、その後、「ラウド・パーク’12」のステージに立っている。本品はMETAL HAMMER製のCD-R。フェスなので単独公演より短く、ディスク1枚に収まったようだ。

 

2000年以降、スレイヤーは新作を発表するまでの期間が長くなった。ゆえに本公演が行われた当時の新作は「血塗ラレタ世界」(2009年)。既に3年以上経過しているので、純粋に新作とは呼べないが、セット・リストは「血塗ラレタ世界」ツアーの流れを軸に組み立てられている。

 

「血塗ラレタ世界」冒頭部分をSEにメンバーが登場し、ギター・リフが入るパートから生演奏へ。さいたまスーパーアリーナという大会場である事、フェスだけに入念な音響チェックを事前に出来ない事もあってか、全体的にぼやけたサウンドに。

 

極端に言うと「血塗ラレタ世界」は、トムのヴォーカルと、デイヴのスネアの音で進行している印象。2曲目「ウォー・アンサンブル」からギターの音が徐々に聴こえる。人によって捉え方はそれぞれだが、これもフェスの臨場感とも言える。

 

「ダイ・バイ・ザ・ソード」「デッド・スキン・マスク」「シーズン・イン・ジ・アビス」「マンダトリー・スイサイド」「ヘル・アウェイツ」といった定番曲がある一方で、「サイレント・スクリーム」「エピデミック」といった、ややレアな曲がある点に注目したい。

 

これらは「血塗ラレタ世界」ツアーのセット・リストに入っているので、特別に用意された曲という訳ではないが、フェスの選曲としては変化球の部類に入る。ラウド・パークの常連となっていただけに、敢えて定番曲を外し、珍しい曲を持ってきたとの見方も。

 

「ヘイト・ワールドワイド」は以降のツアーでも頻繁に演奏されるが、「血塗ラレタ世界」「スナッフ」は、2015年頃にはメニューから外されるので、ライヴ音源が聴けるのは貴重。本編最後は名曲「エンジェル・オブ・デス」だ。

 

アンコールは「サウス・オブ・ヘヴン」と「レイニング・ブラッド」。狂ったように疾走するパートを叩きつけるように演奏し、ライヴは幕を閉じる。中盤以降は音響が良くなり、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムとバランスの良いサウンドに。

 

デイヴもポールも、共に凄腕ドラマーであり、それぞれの持ち味がある。ここで聴ける演奏とサウンドは、デイヴがドラムを叩くからこそのスレイヤーの音になっていると改めて感じさせる。

 

尚、ラウド・パーク’12の数日前に大阪のZEPP NAMBAでは、スレイヤーの単独公演が行われた。そこでは「ケミカル・ウォーフェア」「スピリット・イン・ブラック」「ブレッドライン」「ディサイプル」など、フェスでは外された楽曲を含む1時間半のメニューでライヴが行われている。

 

大阪の音源は、関西のレーベルSylphから発売されているので、合わせてチェックすると2012年の来日公演の全貌がより判るはず。