HANLEY 1978 SOUNDBORD / WHITESNAKE

ホワイトスネイクとは、元ディープ・パープルのヴォーカリスト デイヴィッド・カヴァデールが結成した新しいバンドである・・・という説明は今や不要なほど、ロック・シーンに功績を残しているホワイトスネイク。

 

だが本品「HANLEY 1978 SOUNDBORD」に収録されたライヴが行われた頃は、まだシーンに登場したばかり。収録日が1978年11月7日とクレジットされているので、正にアルバム「トラブル」が発表された時期だ。

 

デイヴィッドはこの年、EP「スネイクバイト」を夏に発表し、11月に「トラブル」を発表。元ディープ・パープルという肩書を背負い、ホワイトスネイクという新しいバンドで音楽活動を軌道に乗せようとしていた。

 

ここで聴ける演奏メンバーは、デイヴィッドをはじめ、ミッキー・ムーディー(g)、バーニー・マースデン(g)、ニール・マーレイ(b)、デイヴ・ドウル(ds)、ジョン・ロード(Key)。本品はイギリスのハンリー公演を収録している。

 

タイトルにSOUNDBORDと強調しているように、音源はサウンドボード録音によるもの。実は音源の出所は、バーニーが亡くなった後に発見されたカセット・テープがブート業者の手に渡り、CDとして出回り始めたらしい。

 

2000年代よりリッチー・ブラックモアズ・レインボーのスタジオ・ワークを収録したコレクターズ盤が出回り始めたが、これもコージー・パウエルが亡くなった後、発見されたテープを当時のガール・フレンドがブート業者に売り払ったからとされている。

 

本品についても、御本人が所有していたものが出回っているので、身近な人間が関与しているとしか思えないが、理由はさて措き、音源が大変貴重なのは事実である。

 

バンド関係者用のテープ及び音源なので、プロ仕様の録音で演奏が残されていたのだ。更に本品は、コピーを重ねたテープからではなく、バーニーの所有していたテープからダイレクトにデジタル化したとのこと。

 

さて、内容について。ライヴ録音となれば場内の歓声から始まるイメージがあるが、本品はいきなり演奏から収録されている。1曲目「サウンドチェック」は、曲が開始された冒頭部分だ。

 

2曲目であり実質的な1曲目「カム・オン」を聴くと音質の良さに驚く。コレクターズ盤と知らなければ、公式なライヴ盤かと思う音質だ。ギターの音が左右に振り分けられているため、これはPAアウト音源ではなく、ライン録りと思われる。

 

「ライ・ダウン」「トラブル」「ベルジャン・トムズ・ハット・トリック」「テイク・ミー・ウィズ・ユー」など、当時の最新作「トラブル」からの楽曲をプレイ。そしてEP「スネイクバイト」からの「ハート・オブ・ザ・シティ」「スティール・アウェイ」などもあり。

 

ディープ・パープルの「テイク・ユア・ライフ」「ミストゥリーテッド」も聴ける。当時はホワイトスネイクとしての持ち曲が少なかったことや、ファンへのサーヴィス精神もあって取り入れたのだろう。

 

「ミストゥリーテッド」の途中でわずかにカットがあるが、これまバーニーが所有していた元のカセット・テープがこうなっていたらしい。A面とB面の切り替えのタイミングかも知れないが、真相は定かでない。

 

また「ミストゥリーテッド」を聴くと判るように、片方のスピーカーからバリバリというノイズが部分的に発生する。シールドの接触不良と思われる。メーカー情報によると、元のカセット・テープでは更にノイズが大きかったようだが、現代の技術で出来る限り聴き易い音に調整したとのこと。

 

と、それを差し引いても充分なクオリティを保つ音源には違いない。全体的に公式なライヴ盤並みのバランスで収録されつつも、各楽器の音は調整や加工がされていないので、リアルなライヴのサウンドが楽しめる。

 

セット・リストも、この時代にしか演奏されていない楽曲が多数。まだ「バッド・ボーイズ」「スティル・オブ・ザ・ナイト」「イズ・ディス・ラヴ」がなかった時代。初期ホワイトスネイクのカラーと演奏が存分に堪能できる商品だ。