NAGOYA 1993 / DEEP PURPLE

歴史は繰り返すと表現すべきか、再結成ディープ・パープルからリッチー・ブラックモアが脱退した。脱退は1993年11月で、翌月に控えた日本公演の2週間前だった。

 

主な理由が、イアン・ギランとの不仲とされているので、これまた歴史は繰り返すと言いたくなる。バンドは急遽、ジョー・サトリアーニ(g)をメンバーに加え、ツアーを続行している。

 

当時はインターネットが普及しておらず、現在のように迅速な情報伝達が出来なかった事もあり、日本公演の会場前には「ディープ・パープル 来日メンバー変更のお知らせ」が貼り出される事態に。

 

色々な意味で注目された日本公演であるが、そのツアー初日が名古屋。本品「NAGOYA 993」は、リッチーの脱退劇、サトリアーニの急参加という激動の時期のライヴを捉えた音源である。12月2日、名古屋レインボーホールでのライヴをオーディエンス録音したもの。

 

さて、本公演はアルバム「紫の聖戦」(1993年)発表に従うツアーである。リッチーの脱退がツアー中だったので、既に組まれていたセット・リストの内容を大きく変える事はせず、ギタリストのみが交代した形で行われている。

 

本品はShades製の2枚組CD-R。DISC1は音から推測するに、暗転して皆が座席から立ち上がる部分からの収録であろう。

 

本品は音のみなので映像は無いが、このツアーはオープニングにレーザー・ライトの演出があり、「紫の聖戦」のジャケットのドラゴンが、グリーンのレーザーによって作り出される。おおっ!という歓声や、会話の声が聴こえるのは、この演出に観客がざわついているようだ。

 

オーディエンス録音なので、個人の歓声が大きいと感じる部分もあり、1曲目「ハイウェイ・スター」が始まると、ギランと一緒に歌う観客個人の声が、そこそこの音量で聴こえる。オーディエンス録音の性質上、ある程度は仕方ないが。

 

バンドの演奏自体は、非常にクリア。そして音圧のある、迫力満点のサウンドで録音されている。大きな会場特有の響きもあり、それも含めてライヴの臨場感が楽しめる。

 

皆が注目しているのが、サトリアーニのギター・プレイと思う。元々、リッチーはライヴにおいて即興演奏を取り入れ、決めの部分以外は毎回違ったフレーズを弾くギタリストだったが、サトリアーニはリッチーが弾きそうなフレーズ、スケールをキッチリと踏まえたソロを各楽曲で披露。

 

バンドに急遽加わって、ライヴのセット・リスト全曲を覚えるのはプロの仕事であるが、ニュアンスやフィーリングといった、楽譜だけでは語れない部分もサトリアーニは表現している。例えば「ブラック・ナイト」中盤のフレーズを聴くと、それを強く感じる。

 

コアなファンは「リッチーではない」という理由で拒否反応を示すかも知れないが、それを置いといて、やはりサトリアーニがプロの仕事をしている点は、紛れもない事実と言える。

 

メニューは当時の新作「紫の聖戦」から、「ラムシャックル・マン」「ア・トゥイスト・イン・ザ・テイル」「アンヤ」「紫の聖戦」をプレイ。「パーフェクト・ストレンジャーズ」「ノッキング・アット・ユア・バック・ドア」など、1984年の再結成以降に発表した曲も多数。

 

また、オープニングの「ハイウェイ・スター」をはじめ、「ブラック・ナイト」「チャイルド・イン・タイム」「レイジー」「スペース・トラッキン」といった、皆が聴きたい代表曲も押さえられている。

 

名作「マシン・ヘッド」(1972年)に収録されているとは言え、「メイビー・アイム・ア・レオ」「ピクチャーズ・オブ・ホーム」はライヴで取り上げられる機会が少ない曲だったので、これらが聴けるのは貴重。そして「ブラインド・マン」という、マニアを唸らせる選曲も。

 

ジョン・ロード(Key)のキーボード・ソロ、イアン・ペイス(ds)のドラム・ソロもあり。サトリアーニのソロもあり、ブギー風のフレーズ、アームを使ったノイジーなサウンドなど、各楽曲におけるリッチーを意識したプレイとは違ったアプローチの演奏が堪能できる。

 

アンコールは「ハッシュ」「スピード・キング」、ラストに「スモーク・オン・ザ・ウォーター」という選曲。やはり名曲に対する観客の反応は凄まじい。尚、テープが足りなかったのか、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の終盤で途切れるように終了。

 

本ツアーのリッチー脱退直前のライヴは、公式に映像が残されている。そこでは「ハイウェイ・スター」のギター・ソロ部分までリッチーがステージに姿を見せなかったり、ステージ上のカメラマンにドリンクが入ったカップを投げつけるなど、神経質そうなリッチーの姿が収められている。

 

コリン・ハートの書籍「冷酷組織の真実」によると、やはりこの時期のバンド内部は不穏な空気が漂っていたと判る。皮肉な話ではあるが、リッチーが脱退し、サトリアーニが加入した事により、バンド内部の緊張が解け、本品で聴けるライヴもメンバーが演奏を楽しんでいるように聴こえる。