Love Fixxxer/CANTA
思い返せば、ルーク篁氏(Vo.g)が聖飢魔Ⅱの本活動中に発表したアルバム「篁」(1990年)は、様々な愛の形をテーマにした作品だった。そして、CANTAとして発表した本作「Love Fixxxer」(2017年)もまた、愛がテーマになった作品だ。
実は「篁」と「Love Fixxxer」は、時を超えての繋がりを持つアルバムである。偶然か必然か。何とも興味深いエピソードと言えまいか。
地球デビュー30周年記念の期間限定再集結を終えた聖飢魔Ⅱは、2016年2月の日本武道館ミサで地獄に姿を消した。その後、ルーク氏は「篁」発表から25周年を記念したツアーを同年の夏に行った。これは悪魔の姿でステージに立っている。
このライヴでは「篁」に収録された楽曲が、全曲セット・リストに取り入れられた。25年の時を経て、改めて「篁」収録曲と向き合ったルーク氏は、意識的なのか、無意識の次元なのか定かでないが、コンセプトがCANTAの次作に投影され「Love Fixxxer」が完成している。
さて、歌詞のテーマが「篁」と共通する部分が多い本作であるが、音楽的にはCANTAとして新境地を見せたサウンドである点を特筆したい。それは前作「My Generator」(2013年)にも表れていたように、デジタル・サウンドの導入である。
本作では、そのデジタル効果が前作以上に取り入れられ、バンド・サウンドと融合。CANTAとして、更なる音楽性の進化を提示する事となった。それが顕著に表れているのが、1曲目「LOVE FIXXXER」や4曲目「EVERBODY NEEDS SOMEBADY」である。
シンフォニックな幕開けから、ロック・サウンドに展開する「LOVE FIXXXER」、眩いばかりのデジタル音がイントロに採用された「EVERBODY NEEDS SOMEBADY」と、デジタルと生バンドの融合が具現化されている。
「FEEL YOUR LIGHT」にも注目したい。大幅にデジタル音を取り入れたサウンドのみならず、ドラムも生音に加え、部分的にデジタル・ビート風味の音作りになっている。ルーク氏のヴォーカルも音声加工されたパートがあり、よりエレクトリックな仕上がりに。
尚、本曲はアルバム収録前から既にライヴで披露されており、当時は「FEEL THE LIGHT」というタイトルだった。その後、アルバム収録に当たり「FEEL YOUR LIGHT」となった。
デジタルの導入に注目が集まる一方で、「Bound for Freedom」は純粋なロック・サウンドと呼べる楽曲。ある意味、CANTAの伝統的な音作りと言える。歌より前に出る事はせず、しかしながら存在感を放つMASAKI氏(b)のベース・ラインが素晴らしい。
また、CANTAと言えば、ルーク氏が作るバラード系の楽曲がファンに定着している。本作では「YEARS」「あなたに」「Companella」があり、バラード軍の充実も見逃せない。
「Virginity」は、2017年から2018年頃のライヴで頻繁に演奏されており、サビに導入されたヘイ!という掛け声のパートがライヴで映える。本曲もデジタルの色合いが強い音作りに。
歌詞が興味深いのは「Madness」。様々な愛のカタチを歌ったアルバムであるが、本曲は人を愛するあまり私生活に介入したり、着け回したり、ゴミ袋を漁ったりと、その領域まで行くと狂気・・・即ち「Madness」であると歌っている。当時、ルーク氏が解説していた。
本作の締め括りとなるのが、壮大な「My Dear Friend~世界は寂しいで出来ている~」。クラシカルなピアノの音色と、ロック・バンドが作り出すディストーション・サウンドが融合した1曲。
「My Dear Friend」とは、想いを伝えられず恋愛関係になれなかった相手の事と思う。実らぬ恋の苦しさを引き摺りながらも、年月の経過と共に、それらが思い出に変って行く。
世の中、人の数だけ実らなかった恋愛があり、それの連続で時代は進んで行く。その感情を広い視点で見たら、正に「世界は寂しいで出来ている」である。聴いた時の世代や、人生経験によって歌詞の意味や印象が変化するに違いない。
例えば本曲を10代の時に聴いて歌詞が理解できなくても、人生経験を積み、30代になって聴くと歌詞の内容が染みる・・・といった感じに、ルーク氏が紡いだ言葉の深みにも注目したい。
アルバム「篁」で提示したテーマが、時を超えCANTAの作品として新たに宿る。長き時代を経て生まれた兄弟と解釈してみれば、「篁」と「Love Fixxxer」それぞれの立ち位置が明確になりそうだ。



















