PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱

いつものように、レコード店の新入荷コーナーを見ていた時の事。1枚1枚をサッ！サッ！と引き抜いては戻す動作を繰り返しながら見ていたら、とあるレコードに目が留まった。キッスのアルバム「ラヴ・ガン」（1977年）である。

オリジナル盤、再販盤、アメリカ盤、イギリス盤など、様々な種類が存在する「ラヴ・ガン」であるが、レコード自体は店で頻繁に見掛ける作品なので、それほど珍しくはない。しかし、今回発見した「ラヴ・ガン」は何か違う。いや厳密に言うと、何か違和感がある。

見た所、まずジャケット全体の印刷の色合いが変だ。よ～く見てみると、プライス・カードの備考欄に「リプロ盤」とある。やはり。リプロ盤とは、平たく言うとブートレグと同様である。

日本でブートレグと聞けば、公式には発売されていないライヴ音源や映像、未発表音源などのイメージが強い。が、世界に目を向けるとアルバム自体が公式なルートで流通していない国もあり、そういった地域には公式なアルバムをコピーしたブートレグが重宝される。これがリプロ盤だ。

キッスで言うと、以前、当ブログではアルバム「仮面の正体」（1980年）のリプロ盤を紹介した。しかもロシア・・・旧ソビエト連邦で流通していた商品という珍しい一品だった。

この「ラヴ・ガン」も、オリジナルをそっくりそのままコピーしただけではなく、面白い仕様になっている。レコード盤がオレンジ色なのだ。プライス・カードにはオレンジのマーブル模様と表記されていた。これは珍しいと思って購入した。

帰宅して開封してみると、レコード盤は綺麗なオレンジ色だった。

ただし、マーブル模様と言えるかどうかは微妙。目を凝らして見ると、この部分をマーブルと言えなくもない。が、単に製造過程での着色不良と言われれば、それを信じてしまいそうなレヴェルだ。

盤に貼られたレーベルが面白い。「PEY RECORDS」について検索すると、イギリスのレコード・レーベルらしい。調べると、これは正式なレコード・レーベルのようだ。つまり、本品がリプロ盤である事を踏まえると、パイ・レコードから発売されたイギリス盤をコピーした品と考えられる。

更に、キッスの公式作品を発売している、本家本元カサブランカ・レコードのゴロも印刷されている。これは公式盤のデザインをコピーしたから、こうなっているのであろう。

パイ・レコードもカサブランカ・レコードも、権利を無視したコピー品にロゴを勝手に使われて怒り心頭に違いない。例えるなら、SONYから発売されている作品のコピー品を作り、勝手にSONYの名前とロゴを使用するようなものだ。

収録内容については、特に変わった部分はなく、いわゆる「ラヴ・ガン」だった。「愛の謀略」に始まり「ゼン・シー・キスド・ミー」で終わっている。

高音域が少々きついように感じたものの、これはレコード盤の状態やプレイヤーの針圧が関係しているかも知れないので、リプロ盤だからこうなったとは言い切れない。何れにしても、コピー品だから劣悪な音という事はなく公式盤と大差ない。

また、リプロ盤だ、コピー品だと言っても、レコードともなれば、現代のCD-Rのように自宅のパソコンで簡単に制作できる物ではない。工場に依頼して原盤を作り、プレスする。依頼するからには最低ロットも必要と思われるので、かなり大掛かりな工程を経ているのは想像に難くない。

という訳で、最近見つけた少々レアな1枚であった。

謎の「ラヴ・ガン」を見つける。