サルでもできる心的回転。左右脳分化顕著 | しんりの手 :psych NOTe

サルでもできる心的回転。左右脳分化顕著

サルでもできるとは簡単なことを表す代名詞みたいなものとして使われているが、この心理学の実験では実際にサルに心的回転ができるかやらせてみている。サルは確かに心的回転ができたのだが、とても面白いことに右側に見える物体を心的回転することは人並みにできたのに、左側に見える物体は人間と全く違う結果になった。

心的回転というのは見ている図形を頭の中で回転した時のことを想像してみる能力の研究だ。例えば「b」という図形を右に180度回転すれば「q」という形になる。この能力は回答するまでの時間で測られる。回答者は「q」が出たらそれは正しい回転だと答える。似た図形で実は回転になっていない(鏡像になっている)「p」が出たらそれは間違った回転だと答える。

この研究では6匹の野生で生まれたヒヒ(Baboon、雄雌3匹ずつ)を検査した。そのうち2匹のヒヒは心的回転がよく理解できなかったらしく正答率50%台だった。(この辺が親近感を覚えられて微笑ましい実験だな。)これは偶然正解したような正答率なので実験結果の考察から外す。残りの4匹の正答率は70、80%台という優秀な成績だった。

結果がとても興味深い。右側の視界に現れた映像についてヒヒは人間とほぼ同じ結果を表した。つまり回転が少ない(0度または60度)時の回答までの反応時間が最も短く、回転が最大になる180度で反応時間が最長となった(図A参照)。

人間も同じ傾向を表すんだけど、人間の場合は左右の視界とも同じ結果が出る。しかしヒヒの場合は左の視界に見る映像は全く違っていた。心的回転0度(つまり回転無し)の成績が最も悪かったのだ(図B参照)。

これはすごく不思議だけど理由を考えるのが楽しそうな結果だな。人とヒヒで共通の結果が得られた右側視界は左脳で処理される。なので左脳の図形認知は人とヒヒで似た戦略を使っていると考えられる。しかし、なんなんだこの左側視界(右脳処理)のヒヒの成績は?人とヒヒは右脳の使い方が違うのか。

でもこれは将来、人への応用が面白そうな実験だな。一つの応用例の仮説としては、人は左右の脳の連絡が速過ぎて、こういった心的回転の実験をしても左右の脳の違いは現れないのかもしれない。ヒヒは左右の脳の連絡が遅く、結果に顕著に表れるのかもしれない。それなら今後、左右の脳の違いを見る時にはまずヒヒで実験すれば顕著な違いが見られ、それを人に応用すれば左右脳の解明に手っ取り早いかもしれない。

もう一点の僕が興味を感じた点は、ヒヒの右側の視界で0度回転の反応時間が一番遅いことだ。0度回転は心的に回転が全く必要とされないので一番速い反応時間と思われるのにも関わらずだ。これは何かの抑制機構が答えを邪魔している可能性がある。答えを押そうとしても一瞬何かがそれを躊躇わせているのかもしれない。今後の研究に期待しているよ。

--------- 元の論文 --------
Vauclair, Fagot, & Hopkins (1993). Rotation of mental images in baboons when the visual input is directed to the left cerebral hemisphere. Psychological Science. 4(2). p.99-103.

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