どの季節の変わり目が好き? ブログネタ:どの季節の変わり目が好き? 参加中
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 蝉の鳴き声が徐々に減ってくる9月のある日の事、私は教室の片隅で窓の景色を眺めていた。
 窓から吹き抜ける心地良い風を肌に受けながら、私は幻想的に移り変わる空の色を眺めると、ふとこの学校に編入した時の事を思い出していた。
 父親の海外赴任の為に両親が海外へ行く事になり、私は一人日本に残る事となった。
 さすがに両親も(と言うか母がだけど)私一人で生活するは心配だった様で、寮のある高校を探し当て、そこに編入する事となった。
 初めて私がこの学校に来た時、回りが皆男子ばかりと言う事を知り、母に抗議をした事があった。
 回りが男子生徒ばかりの中、私一人でやっていくのは無理だと。
 編入して暫くの間は学校に馴染めず、何度も溜息が出る日々が続いた。
 そんな私に気遣って声をかけてくれた寮生の皆の優しさに少しずつ心を開き、私は彼らと気兼ねなく話しをし、一風変わった高校生活を楽しむ事ができた。
「この学校に来てから、私も変わったなぁ………」
 編入した頃の小心的な自分の事を思うと、本当に笑える様になった。
「これも、皆のおかげかな?」
 私は仲間達の姿を思い浮かべながら青から紫へと変わる空を眺めていると、背後から声がかかってきたので   私は声の方へ振り向くと、気だるそうに入り口の扉に凭れかけて私の様子をじっと見つめる冴島先生が立っていた。
「お前はまだ帰ってなかったのか?とっくに下校時間過ぎてるぞ………」
 呆れた表情で先生は愚痴をこぼすと、私の隣にやってきて窓の外を眺めていた。
 私は先生の横顔をじっと見つめた後、また視線を紫から茜色に染まる空の方へ戻した。
 先生は私の視線に気付いたのか、私に教室(ここ)で何をしていたのか尋ねてくると、私はもう一度先生の方に視線を戻して空を見ていたと言った。
「この時期の空って、色んな色が出てくるから見ていて楽しいんです。太陽の光に当って銀色に輝く雲とか、今みたいに茜色に染まっていたりとか。それに………」
「それに?」
 先生は途中で途切れた私の言葉を催促する様に聞き返してくると、私はまた視線を茜色の空に戻しながら話した。
「それに、こうやって空を眺めていると、今までに起きた色んな出来事が思い浮かんでくるんです」
 私が先程思い出していた事を話し始めると、先生は何も言わずにじっと話を聞いてくれた。
 話している間、私はふと先生の表情(かお)を窺った。
 先生はいつもの様にからかう素振りを見せず、普段見る事のない真剣は眼差しで私を見ていた。
「先生?」
 先生は私の呼びかけに我に返ると、少し照れた様に仕草を見せながら持っていたファイルで私の頭を軽く叩いた。
「回りに良い仲間がいて、お前は恵まれているな………。高3なんてあっという間なんだ、あいつらを大事にしろよ」
 私にそういい残すと、先生は踵を返し入り口の方へ向かって歩き出した。
「先生っ!」
 私は先生を呼び止めると、その腕に自分の腕を絡ませた。
「なっ!?」
 私の予想外の行動に先生は驚きを隠せず硬直した。
 そんな先生の姿が可笑しくて、私は笑うのを必死に堪えながら先程話してなかった事を口に出した。
「それに、先生のおかげで私の将来を決めた様なものですから」
「将来決めた様なものって、お前………」
 先生が問いかけようとしたその時、私の携帯の着うたが鳴り出したので、私は絡めた腕を解き通話ボタンを押して電話に出た。
[何やってんの!?最近は暗くなるのが早くなっているから、早く帰ってきなさい!]
 心配で苛立ち気な喋り方をする梅さんの声を聞いた私は、机の上に置いていたカバンを取り出し、先生に挨拶をすると逃げる様に教室を出た。
 薄暗くなった学校の帰り道で私は腕を絡まれて驚いていた冴島先生の表情を思い出して、思わず吹き出していた。
「明日、大人をからかうなとか言ってきそう………」
―そう言ってきたら、子供だからって侮るなって言ってやるんだ
 そう心に決めた私は、茜色から藍色に変わり行く晩夏の空を眺めながら、皆の待つ寮へと足を運んだのだった。