JA共祭 その3
The Yankee Dollar
西海岸出身の6人組で、"Let's Get Together"をカバーしてたりして、基本は男女混声の初期JA風フォークロックなんですが、最大のウリはCountry Joe & Fishの1stみたいな激チープオルガンが入ってること。先頭の"Sanctuary"なんか「JAミーツ"96 Tears"」という感じで、オルガンとギターのユニゾンのチープなリフが涙ものです。
時折入るファズギターも激しく強力で、ラストナンバーの"Johann Sebastian Cheetah"でのチープオルガンとの絡みは愛好者昇天必至の逸品。激チープオルガン+激歪ファズギター+女性ボーカルと三拍子揃ったお気に入りタイトル(1968)です。オススメ!

The Yankee Dollar
The Yankee Dollar
Birmingham Sunday
レココレのサイケ特集号の巻頭グラビア「究極のレア盤コレクション」に、大きくジャケ写真が載っていたので見覚えがあるかもしれません。バンドはネバダ出身の(女性ボーカル一人を含む)6人組で、プロデュースはStrawberry Alarm ClockのプロデューサーのBill Holmes。オリジナル盤はテストプレスされた数枚しか存在が確認されていないようです。
最大の個性は全編にメロトロンが入ってること。私が知る限り、最初にメロトロンを使用したロックアルバムは1967年のMoody Bluesの"Days of Future Passed"なので、67年末に制作された(発表は68年)この"A Message from Birmingham Sunday"は、もしかしたらアメリカで最初にメロトロンを使用したロックアルバムかもしれません。音のほうも、特に先頭の曲なんかMamas & PapasミーツMoody Bluesという感じになってます。いまひとつメリハリに欠けるきらいもありますが、音像の充実感は高く、全体的には良質なポップサイケアルバムといえる作品です。CDは1998年にAkarmaからアナログ起こしの(?)ものが出ています。
追記: Millenniumの前身のBllroomが1966年末の録音でメロトロンを使用していました。しかし、これは近年発掘されるまで未発表だったので先駆者とは言えないかもしれません。

Birmingham Sunday
A Message From
Insect Trust
このバンドも非常に個性が強くて、ひとことでは説明しにくいのですが、あえて言うならプログレッシブ・ルーツ・ロックという感じでしょうか。かなりナマな感じのルーツミュージックやトラッドフォークをベースにしているのですが、メンバーに管楽器(サックス)がいて、英国のカンタベリー系のプログレのようなジャズっぽいソロを展開したりするところが変わっています。女性ボーカル(Nancy Jeffries)は曲によってJoan Baezみたいに聞こえたりSandy Dennyみたいに聞こえたりする魅力的な声で、Fairport Conventionをアバンギャルドにしたような印象もあります。
デビューアルバムは1968年のリリースですが、とてもこの時代の作品とは思えないような斬新なイメージで、時代が早すぎたバンドと言えるかもしれません。1970年のセカンド("Hoboken Saturday Night")はグッドタイムミュージック志向が強くなり、前作より聴きやすくなった感もありますが、やはり凡百のバンドとは一線を画するような「冴え」を感じます。60sサイケファンよりむしろ70sロックファンに受けそうな音かもしれません。

Insect Trust
Insect Trust

The Insect Trust
Hoboken Saturday Night
西海岸出身の6人組で、"Let's Get Together"をカバーしてたりして、基本は男女混声の初期JA風フォークロックなんですが、最大のウリはCountry Joe & Fishの1stみたいな激チープオルガンが入ってること。先頭の"Sanctuary"なんか「JAミーツ"96 Tears"」という感じで、オルガンとギターのユニゾンのチープなリフが涙ものです。
時折入るファズギターも激しく強力で、ラストナンバーの"Johann Sebastian Cheetah"でのチープオルガンとの絡みは愛好者昇天必至の逸品。激チープオルガン+激歪ファズギター+女性ボーカルと三拍子揃ったお気に入りタイトル(1968)です。オススメ!

The Yankee Dollar
The Yankee Dollar
Birmingham Sunday
レココレのサイケ特集号の巻頭グラビア「究極のレア盤コレクション」に、大きくジャケ写真が載っていたので見覚えがあるかもしれません。バンドはネバダ出身の(女性ボーカル一人を含む)6人組で、プロデュースはStrawberry Alarm ClockのプロデューサーのBill Holmes。オリジナル盤はテストプレスされた数枚しか存在が確認されていないようです。
最大の個性は全編にメロトロンが入ってること。私が知る限り、最初にメロトロンを使用したロックアルバムは1967年のMoody Bluesの"Days of Future Passed"なので、67年末に制作された(発表は68年)この"A Message from Birmingham Sunday"は、もしかしたらアメリカで最初にメロトロンを使用したロックアルバムかもしれません。音のほうも、特に先頭の曲なんかMamas & PapasミーツMoody Bluesという感じになってます。いまひとつメリハリに欠けるきらいもありますが、音像の充実感は高く、全体的には良質なポップサイケアルバムといえる作品です。CDは1998年にAkarmaからアナログ起こしの(?)ものが出ています。
追記: Millenniumの前身のBllroomが1966年末の録音でメロトロンを使用していました。しかし、これは近年発掘されるまで未発表だったので先駆者とは言えないかもしれません。

Birmingham Sunday
A Message From
Insect Trust
このバンドも非常に個性が強くて、ひとことでは説明しにくいのですが、あえて言うならプログレッシブ・ルーツ・ロックという感じでしょうか。かなりナマな感じのルーツミュージックやトラッドフォークをベースにしているのですが、メンバーに管楽器(サックス)がいて、英国のカンタベリー系のプログレのようなジャズっぽいソロを展開したりするところが変わっています。女性ボーカル(Nancy Jeffries)は曲によってJoan Baezみたいに聞こえたりSandy Dennyみたいに聞こえたりする魅力的な声で、Fairport Conventionをアバンギャルドにしたような印象もあります。
デビューアルバムは1968年のリリースですが、とてもこの時代の作品とは思えないような斬新なイメージで、時代が早すぎたバンドと言えるかもしれません。1970年のセカンド("Hoboken Saturday Night")はグッドタイムミュージック志向が強くなり、前作より聴きやすくなった感もありますが、やはり凡百のバンドとは一線を画するような「冴え」を感じます。60sサイケファンよりむしろ70sロックファンに受けそうな音かもしれません。

Insect Trust
Insect Trust

The Insect Trust
Hoboken Saturday Night
JA共祭 その2
Spike Drivers
このバンドは大好きで一時ハマりまくってたんですが、今見たらAmazonで売ってないみたいで、ちょっとショックです。準基本のアイテムだと思ってたもんで・・・。
音は一見、原初型のフォークロックで、女性ボーカルが入った初期Beau Brummelsといった雰囲気なんですが、どっこい、扉を開けてみたら地下に向かう階段が延々と続いていた・・・という趣きで、曲調は結構フラワーな感じなのに、ちょっとヤバいくらいにアシッド感が強いのが最大の特徴です。
ノリも非常にアシッドロック的まったり感の強いもので、完全にあちらの世界にイッてしまってるようなトリッピーさとか、微妙に音程のズレるボーカルとか、耳に付いて離れない奇妙な中近東風メロディーとか、ベルベットアンダーグラウンドに通じるようなダウナー感覚とか、ハンパでないファズギターの強烈さとか、とにかくコアなサイケファンも涙なしでは聴けないようなツボが満載のお勧め盤です。
デトロイト出身で、Repriseからシングルを何枚か出したものの、バンド存命中にアルバムは出しておらず、"Folkrocking Psychedelic Innovation from the Motor City in the mid 60s"という長ったらしい題名の唯一の(?)タイトルは、1965年から1968年までの録音を収録したコンピレーションです。(下の画像リンクはFreak Emporiumへのもの。)

Ivory
プロデュースがJefferson AirplaneのプロデューサーのAl Schmittということで、「本家JAフォロワー」という感じでしょうか。メンバーは西海岸出身で、ギター+オルガン+女性ボーカルのトリオ編成です(ベースとドラムはスタジオ雇いでしょう)。アルバムは1968年に一枚のみを残しています。
女性ボーカルはシグネ時代のJAの"Chauffeur Blues"な感じ。それに良く鳴るオルガンと、かなり歪んだファズギターを足したようなサウンドが主流です。ジャズっぽい色合いとオルガンがハモンド系なこともあって、女性ボーカルを擁する英国プログレ系のオルガンロック的な響きもあります。なんとなくハイソできちんとしてて「上等」な印象で、それほど楽器の音数は多くないのですが、豊かでドラマティックな感じがします。しかし、全編に鳴り響く強力なファズギターがサイケ度を高くしている印象です。アルバムの出来もA級品!

Ivory
Ivory
Haymarket Square
こちらはシカゴ出身の、男性三人(ギター、ベース、ドラム)+女性ボーカルという編成のバンドで、同じく1968年に"Magic Lantern"という一作のみを残しています。しかし、音は前者とは対照的にスカスカでチープなもので、アルバムの曲数が全6曲ということからもわかるように、ほとんどが7~10分という長尺ナンバーです。
"Train Kept a Rolling"をカバーしていて、後期ヤードバーズとかクリームなどの英国プレ・ハードロックをかなり意識している模様です。かなりまったりとしたインプロとかドラムソロなんかが入っていて(しかも稚拙な感じ)、そのへんの大味でスカスカな演奏に素晴らしくフラワーな女性ボーカルが乗っかってくるのが変わっていて、ほかにはあまり無いような強烈な個性になっています。

Haymarket Square
Magic Lantern
このバンドは大好きで一時ハマりまくってたんですが、今見たらAmazonで売ってないみたいで、ちょっとショックです。準基本のアイテムだと思ってたもんで・・・。
音は一見、原初型のフォークロックで、女性ボーカルが入った初期Beau Brummelsといった雰囲気なんですが、どっこい、扉を開けてみたら地下に向かう階段が延々と続いていた・・・という趣きで、曲調は結構フラワーな感じなのに、ちょっとヤバいくらいにアシッド感が強いのが最大の特徴です。
ノリも非常にアシッドロック的まったり感の強いもので、完全にあちらの世界にイッてしまってるようなトリッピーさとか、微妙に音程のズレるボーカルとか、耳に付いて離れない奇妙な中近東風メロディーとか、ベルベットアンダーグラウンドに通じるようなダウナー感覚とか、ハンパでないファズギターの強烈さとか、とにかくコアなサイケファンも涙なしでは聴けないようなツボが満載のお勧め盤です。
デトロイト出身で、Repriseからシングルを何枚か出したものの、バンド存命中にアルバムは出しておらず、"Folkrocking Psychedelic Innovation from the Motor City in the mid 60s"という長ったらしい題名の唯一の(?)タイトルは、1965年から1968年までの録音を収録したコンピレーションです。(下の画像リンクはFreak Emporiumへのもの。)

Ivory
プロデュースがJefferson AirplaneのプロデューサーのAl Schmittということで、「本家JAフォロワー」という感じでしょうか。メンバーは西海岸出身で、ギター+オルガン+女性ボーカルのトリオ編成です(ベースとドラムはスタジオ雇いでしょう)。アルバムは1968年に一枚のみを残しています。
女性ボーカルはシグネ時代のJAの"Chauffeur Blues"な感じ。それに良く鳴るオルガンと、かなり歪んだファズギターを足したようなサウンドが主流です。ジャズっぽい色合いとオルガンがハモンド系なこともあって、女性ボーカルを擁する英国プログレ系のオルガンロック的な響きもあります。なんとなくハイソできちんとしてて「上等」な印象で、それほど楽器の音数は多くないのですが、豊かでドラマティックな感じがします。しかし、全編に鳴り響く強力なファズギターがサイケ度を高くしている印象です。アルバムの出来もA級品!

Ivory
Ivory
Haymarket Square
こちらはシカゴ出身の、男性三人(ギター、ベース、ドラム)+女性ボーカルという編成のバンドで、同じく1968年に"Magic Lantern"という一作のみを残しています。しかし、音は前者とは対照的にスカスカでチープなもので、アルバムの曲数が全6曲ということからもわかるように、ほとんどが7~10分という長尺ナンバーです。
"Train Kept a Rolling"をカバーしていて、後期ヤードバーズとかクリームなどの英国プレ・ハードロックをかなり意識している模様です。かなりまったりとしたインプロとかドラムソロなんかが入っていて(しかも稚拙な感じ)、そのへんの大味でスカスカな演奏に素晴らしくフラワーな女性ボーカルが乗っかってくるのが変わっていて、ほかにはあまり無いような強烈な個性になっています。

Haymarket Square
Magic Lantern
JA共祭 その1

先日の13日はJefferson Airplaneのデビュー40周年記念日(1965年8月13日の金曜日、シスコのMatrixのオープニング・ナイトが初ステージ)だったということで、JAデビュー40周年記念特別企画「JA共祭」を開催したいと思います。
どういう企画かというと、要するにJAフォロワーなバンドの特集をしようということでありまして、それだけだと(すでにいくつか紹介してるし)すぐにネタギレになりそうなので、以前「無人島サイケ」で連載したママス&パパスフォロワーの続編もかねて、単に「女性ボーカルが入っているグループ」というユルいくくりでやっていきたいと思います。
おそらく、千差万別・玉石混交なラインナップになると思いますが、フラワーな女性ボーカルが入ってるというだけで批判能力を失ってしまうタチなので、そのへんはご容赦ください。60s好きの人は、多かれ少なかれ同様の症状があるのではないかと勝手に思っているのですが・・・。
Neighb'rhood Childr'n
JAフォロワーといえば、まず思い浮かぶのがこのネイバーフッド・チルドレン。オレゴン出身のバンドですが、サマー・オブ・ラヴ全盛の1967年にシスコに出て、モロに当地のサイケデリックムーブメントの洗礼を受けたアルバム(1968)を制作します。特にJAからの影響は顕著で、"Long Years in Space"などはJA譲りの東洋風サイケの名曲。
途中、「オズの魔法使い」の"Over the Rainbow"のカバーでズッコケそうになったり、全体的には演奏も曲もアルバム作品も、とてもA級とは言えない感じなんですが、時折抑圧されてない強烈なファズやオルガンが響き渡ったりして、かえってネイティブのシスコサウンドよりナマで純真なサイケ感覚が面白かったりします。
なお、下に挙げたCDは現在入手可能なコンピレーションで、オリジナル・アルバム全曲に、未収録だった多数のボーナストラックを追加したものです。(曲順は私の持ってるオリジナル盤?のCDとは異なりますが。)

The Neighb'rhood Childr'n
Long Years in Space
Bow Street Runners
ノース・カロライナのガレージ・サイケ・バンドで、1970年に発表した唯一のアナログ盤は激レアアイテムだとか。発表当時はほとんど話題にならなかったようですが、1970年の音とは思えないので、録音されたのは1968年ごろかもしれません。
このバンドも曲の質が不均一な感じで、練れてないブルースロック曲やブラス入りのR&Bナンバーなどが渾然としているのですが、最大の魅力はフラワー&イノセントなフォークロック調の曲から一転、ダウナーなサイケチューンで鳴り響く強力なファズギターやチープオルガンにあります。女性ボーカルの声のフラワー度も最高峰!

The Bow Street Runners
The Bow Street Runners
Growing Concern
このバンドは男性五人+女性ボーカル二人という編成で、どちらかというとママス&パパスに近いフラワーポップという趣きなんですが、曲調がメロウサイケ風のマイナーチューンが目立ったり、間奏でアシッドロックぽいインプロが展開されたりして、じゅうぶんサイケデリックと呼べる音です。(JAのカバーで有名なFred Neilの"Other Side of This Life"も入っています。)
ソフトロック風の曲も多く、サイケファン、ソフトロックファン、ポップスファンのいずれも楽しめるような「一粒で二度おいしい」アルバムです。全体に流れるムードや迷いのない溌剌とした演奏も素晴らしく、なによりも、最高にフラワーな女性ボーカルのハーモニーを聴けるだけでOK!でしょう。

Growing Concern
The Growing Concern
Vassar Clements (1928-2005)

昨日(8月16日)、フィドル・プレーヤーのヴァッサー・クレメンツが亡くなりました。享年77歳。ご冥福をお祈りします。(→オフィシャルサイト)
ヴァッサーはブルーグラス界の人ですが、ナッシュビルのセッションミュージシャンとして数多くのロックグループやシンガーソングライターのアルバムに参加しているので、ロックファンでたくさんCD持ってる人は、知らないうちに聴いたことがあるというくらいの大御所の人です。サイケデリック関連ではグレイトフル・デッドのアルバムWake of the Floodなどでバイオリンを弾いているのもこの人です。
ヴァッサー関連のお勧めアルバムは、Jerry Garcia, David Grisman, Peter Rowan, John Kahn, Vassar ClementsというメンバーのOld & in the Wayというバンドで、スタイルはアコースティックな純然たるブルーグラスなんですが、普通のロックファンが聴いても違和感がないくらいノリはロックな感じです。デッド関係のメンツなので、Workingman's DeadやAmerican Beautyの延長としても聴くことができます。

Old & in the Way
Old & in the Way (1975)

Old & In the Way, Jerry Garcia, David Grisman
Breakdown: Live Recordings 1973
第33回 Silver Apples

Silver Apples
Silver Apples/Contact
電子音楽サイケといえばこのユニット。各時代、さまざまなジャンルに巨大な影響を与え続けるパイオニア的存在で、アバンギャルドなのにポップでおバカ、最高にユニークで脳ミソ溶解なサイケデリックミュージックです。
編成はザ・シメオンという謎の電子楽器(オシレーター)を操るシメオン氏と、ドラム担当のダニー・テイラー氏の二人組で、基本的には二人の演奏に二人の歌+適当に散りばめられたサウンドコラージュというスカスカな音。しかし、本質は60sサイケそのもので、デジタルな電子音楽やテクノとは質感の異なる、線の太いアナログ感覚溢れるものです。
私が最も愛好するのは、ベタな歌メロや、チープなリコーダーやバンジョーなどが顔を覗かせる「60sサイケのお約束」的な部分で、実験的な精神とそのへんのおバカっぽいノリが天然に混じり合っているところが良いです。

先頭に挙げたCD(UK盤)は"Silver Apples"(1968)と"Contact"(1969)の全二作を完全収録した2on1で、音質も良好です。
第32回 The United States of America

The United States of America
The United States of America
このタイトルは基本中の基本ですね。サイケデリック・クラシックスみたいな特集では、必ず最初の方に名前が挙がるような名盤です。
リーダーのJoe Byrdは現代音楽を大学で教えてたりしたインテリな人で、このバンド(プロジェクト)の唯一のアルバムである本作(1968年)は、サイケデリックに電子音楽的な実験を盛り込んだ意欲作です。というと、眉をしかめて聴くような小難しい音を想像されるかもしれませんが、まったくそんなことはなくて、チャーミングな女性ボーカルがフロントなので、ジェファーソン・エアプレインみたいな感じで聴けます。
ピヨピヨな電子楽器や実験的なサウンドコラージュなども多用されていますが、あくまでも最大の魅力はDorothy Moskowitzの声と、わかりやすくて耳に残る印象的なメロディにあります。ビートの効いたロックナンバーや、60sサイケ特有の脱力チューンもしっかり収められていて、決して頭でっかちな感じはしません。
アルバム作品としての完成度も高く、明らかに意識していると思われるビートルズのサージェント・ペパーズとか、ザッパの出来のいいスタジオ作を聴いたときのような「傑作感」が漂っています。サイケの世界では、そういうのが必ずしも良いものの基準になるわけではありませんが、この作品に関しては素直に傑作と言えるような内容です。
試聴はこちら。
第31回 ? & the Mysterians
最近ちょっとマニアックな方向に走りがちなので、反省して、「無人島サイケ」テーマでは「基本に帰ろう」ということでやっていきたいと思います。

さて、チープオルガンといえば、このバンドを忘れてはいけません。バンド名の"?"はQuestion Markと読みます。これはリーダーの芸名でありまして、Questionが名前、Markが苗字(またはその逆)です。
音はジャケットそのまんま、ほとんど説明不要な明快さで、60s好きには一曲目の数フレーズを試聴しただけで、「これこれ!」とレジに直行するようなたぐいのものです。66年に"96 Tears"(「96粒の涙」)が全米ナンバーワンの大ヒットを飛ばしているので、むしろポップスファンに有名かもしれません。
リズムギターならぬリズムオルガンの催眠的ビート。いかにもチカーノバンド(*1)的な脳天気さ・いかがわしさ+ガレージパンクなチープ感。パンク(*2)といっても70sパンクのようなノリではなくて、あくまでも60sのもので、Seedsが「フラワーパンク」ならば、こちらはさしずめ「テキーラパンク」という感じのユルさが最高です。(Seedsが気に入ったら、こちらも絶対ハマると思います。)
セカンドアルバムの"Action"(1967)はデビュー作の"96 Tears"(1966)にくらべると評価は低いようですが、チープオルガンフェチにはむしろこちらの方をお勧めしたいくらい、これも強力なオルガンパンクアルバムです。
雰囲気(というか存在そのもの)はチープな印象なんですが、歌は艶っぽくて上手いし、演奏もしっかりしてるので、一般のポップスファンにも違和感なく馴染めるような親しみやすさも、このバンドの魅力のひとつでしょう。なお、バンドは再結成して、新譜の発売や公演ツアーと、現在も活動中です。(→オフィシャルサイト)

? & the Mysterians
The Best of ? & the Mysterians: Cameo Parkway 1966-1967
上記CDのタイトルは"The Best of ~"となっていますが、"96 Tears"と "Action"を完全収録した2on1の末尾にボーナストラックを加えたものです。
*1
チカーノとは(一般に)メキシコ系アメリカ人のこと。最近でいうとロス・ロボスなんかが代表的なチカーノバンド。
*2
レココレ・サイケ特集号によると、「71年の『クリーム』誌におけるライヴ・レヴューで、デイヴ・マーシュが彼らを初めて「パンク・ロック」と形容した」そうです。

さて、チープオルガンといえば、このバンドを忘れてはいけません。バンド名の"?"はQuestion Markと読みます。これはリーダーの芸名でありまして、Questionが名前、Markが苗字(またはその逆)です。
音はジャケットそのまんま、ほとんど説明不要な明快さで、60s好きには一曲目の数フレーズを試聴しただけで、「これこれ!」とレジに直行するようなたぐいのものです。66年に"96 Tears"(「96粒の涙」)が全米ナンバーワンの大ヒットを飛ばしているので、むしろポップスファンに有名かもしれません。
リズムギターならぬリズムオルガンの催眠的ビート。いかにもチカーノバンド(*1)的な脳天気さ・いかがわしさ+ガレージパンクなチープ感。パンク(*2)といっても70sパンクのようなノリではなくて、あくまでも60sのもので、Seedsが「フラワーパンク」ならば、こちらはさしずめ「テキーラパンク」という感じのユルさが最高です。(Seedsが気に入ったら、こちらも絶対ハマると思います。)
セカンドアルバムの"Action"(1967)はデビュー作の"96 Tears"(1966)にくらべると評価は低いようですが、チープオルガンフェチにはむしろこちらの方をお勧めしたいくらい、これも強力なオルガンパンクアルバムです。
雰囲気(というか存在そのもの)はチープな印象なんですが、歌は艶っぽくて上手いし、演奏もしっかりしてるので、一般のポップスファンにも違和感なく馴染めるような親しみやすさも、このバンドの魅力のひとつでしょう。なお、バンドは再結成して、新譜の発売や公演ツアーと、現在も活動中です。(→オフィシャルサイト)

? & the Mysterians
The Best of ? & the Mysterians: Cameo Parkway 1966-1967
上記CDのタイトルは"The Best of ~"となっていますが、
*1
チカーノとは(一般に)メキシコ系アメリカ人のこと。最近でいうとロス・ロボスなんかが代表的なチカーノバンド。
*2
レココレ・サイケ特集号によると、「71年の『クリーム』誌におけるライヴ・レヴューで、デイヴ・マーシュが彼らを初めて「パンク・ロック」と形容した」そうです。
ジェリー・ガルシア没後十周年

今日(8月9日)はジェリー・ガルシアの命日です。ちょうど十年前の1995年8月9日、カリフォルニアのForest Knollsにある薬物リハビリ施設で療養中に心不全で他界。享年53歳でした。この日にあわせてDVD("Jerry Garcia Band / Live at Shoreline 9/1/90")が発売され、記念イベントなども各地で催されるようです。

Live at Shoreline
また、8月23日(予定)には"Jerry Garcia Collection Vol.1"として、Legion of Mary(JGBなどと同様のサイドプロジェクトのひとつ。メンツはJerry Garcia, Merle Saunders, Ron Tutt, Martin Fierro, John Kahn)の初オフィシャルライブ(CD2枚組)が発売されます。

Jerry Garcia
The Jerry Garcia Collection, Vol. 1: Legion of Mary
その他、デッドのDick's Picksシリーズ(現在35巻!)のジェリー版であるPure Jerryシリーズの新譜(オフィシャルサイトより発売中)や、デッド物では"Truckin' Up To Buffalo"のDVD(&CD)の発売、"The End of the Road: A Tribute: The Final Tour '95"と題する1995年のデッドのラストツアーとジェリー追悼セレモニーを収めたDVD、そして極めつきは"Fillmore West 1969 - The Complete Recordings"として、名盤"Live/Dead"の元になった素材(Raw Materials)音源の10枚組(!)CDが秋(11月頃?)に発売されます。と、相変わらず(というか益々旺盛な)デッド関連のリリースラッシュはとどまるところを知りません。

Truckin Up to Buffalo

End of the Road: Final Tour 95
追記:
10枚組の"Fillmore West 1969"はSold Outということで、3枚組の抄録盤?が発売されているようです。

The Grateful Dead
Fillmore West 1969: The Complete Recordings
Bosstown Sound (Part 5)
最後に、Bosstown Soundのコンピに収録されていたりするものの、(私がイメージする)ボスタウン・サウンドの音とは少々感じが違っていて、たまたま時期(1968年)と場所(ボストン)が重なっているだけかも・・・というバンドを挙げておきます。
Ill Wind
このバンドはサイケファンには普通に有名だと思います。私もボスタウン云々のことを知る前から聴いていました。男女混声で、モロにJAな感じのHigh Flying Birdを演ってたりして、わりとわかりやすいジェファーソン・エアプレイン・フォロワーなグループです。
ボーカルの女性(Conny Devanney)の声が凛々しくて、グレース・スリックよりシグネ・アンダーソンに近い感じで、曲調もイノセント系フォークロック風のものが多いので、JAのデビュー作("Takes Off")の雰囲気に共通するものがあります。ファーアウトなサイケチューンもありますが、メロディが明快で、暗い曲調でもフラワーな感じがするので、60s好きには掛け値なしに楽しめると思います。
ただ、アルバムの先頭にはバンドの個性を良く表しているような曲を持ってくるのが普通だと思うのですが、唯一の作品Flashes(1968)の一曲目は、たいていなら中間のつなぎに使われるようなユルいカントリーチューンで始まっているのが変わっています。プロデューサーは大御所のトム・ウィルソンなんですが、そういえば(ウォホールとともに)彼がプロデュースしたベルベット・アンダーグラウンドのデビュー作の一曲目も他の曲とは異質な感じなので、凡人には計りかねるような意図があるのかもしれません。

Ill Wind
Flashes
Earth Opera
このバンドもルーツロック関係筋などにはかなり有名で、これも以前から愛聴していたので、ここに紹介するのは違和感があります。そもそも、このバンドをサイケの仲間だと思ってない人も多いのではないかと思います(私にはじゅうぶんサイケデリックですが・・・)。
いちばん有名なのは、メンバーにDavid GrismanとPeter Rowanがいたことで、このふたりはのちにシスコに移ってグレイトフル・デッド/ジェリー・ガルシアらとコラボすることになります。
音はカントリーやフォークなどのルーツミュージックをロックやジャズやポップミュージックなどで料理したもので、現代のジャムバンドの元祖のような趣きです。なんといってもピーター・ローワンのヘロヘロのボーカルが最高で、ルーツ系サイケファンは必聴という感じです。アルバムはデビュー作(1968)と、もう一枚"The Great American Eagle Tragedy"(1969)が出ています。(CDは2枚をパッケージしたものもあり。)

Earth Opera
Earth Opera

Earth Opera
The Great American Eagle Tragedy
その他のバンド
あと、Tangerine ZooもBosstown騒動に巻き込まれたらしきバンドですが、音はハモンドオルガンをフィーチャーした英国前プログレ風なボスタウン的サウンドという印象です。正式アルバムではなくて、出所不明の謎の抄録コンピでしか聴いていないので断言はできませんが、ボスタウン的冗漫さはあるものの、なかなか悪くない感じでした。
それから、Rockin' Ramrodsの残党が名を変えて、MGM/Alan LorberによってBosstown Soundとして再生されたPuffというバンドもあります。唯一のアルバム(1968)はCD化されていなくて、"The Best of Rockin' Ramrods"というコンピに2曲を除いて収録されているそうですが、残念ながら未聴です。試聴した限りではかなりイイ感じなので、聴けたらまた別の機会に紹介したいと思います。
Ill Wind
このバンドはサイケファンには普通に有名だと思います。私もボスタウン云々のことを知る前から聴いていました。男女混声で、モロにJAな感じのHigh Flying Birdを演ってたりして、わりとわかりやすいジェファーソン・エアプレイン・フォロワーなグループです。
ボーカルの女性(Conny Devanney)の声が凛々しくて、グレース・スリックよりシグネ・アンダーソンに近い感じで、曲調もイノセント系フォークロック風のものが多いので、JAのデビュー作("Takes Off")の雰囲気に共通するものがあります。ファーアウトなサイケチューンもありますが、メロディが明快で、暗い曲調でもフラワーな感じがするので、60s好きには掛け値なしに楽しめると思います。
ただ、アルバムの先頭にはバンドの個性を良く表しているような曲を持ってくるのが普通だと思うのですが、唯一の作品Flashes(1968)の一曲目は、たいていなら中間のつなぎに使われるようなユルいカントリーチューンで始まっているのが変わっています。プロデューサーは大御所のトム・ウィルソンなんですが、そういえば(ウォホールとともに)彼がプロデュースしたベルベット・アンダーグラウンドのデビュー作の一曲目も他の曲とは異質な感じなので、凡人には計りかねるような意図があるのかもしれません。

Ill Wind
Flashes
Earth Opera
このバンドもルーツロック関係筋などにはかなり有名で、これも以前から愛聴していたので、ここに紹介するのは違和感があります。そもそも、このバンドをサイケの仲間だと思ってない人も多いのではないかと思います(私にはじゅうぶんサイケデリックですが・・・)。
いちばん有名なのは、メンバーにDavid GrismanとPeter Rowanがいたことで、このふたりはのちにシスコに移ってグレイトフル・デッド/ジェリー・ガルシアらとコラボすることになります。
音はカントリーやフォークなどのルーツミュージックをロックやジャズやポップミュージックなどで料理したもので、現代のジャムバンドの元祖のような趣きです。なんといってもピーター・ローワンのヘロヘロのボーカルが最高で、ルーツ系サイケファンは必聴という感じです。アルバムはデビュー作(1968)と、もう一枚"The Great American Eagle Tragedy"(1969)が出ています。(CDは2枚をパッケージしたものもあり。)

Earth Opera
Earth Opera

Earth Opera
The Great American Eagle Tragedy
その他のバンド
あと、Tangerine ZooもBosstown騒動に巻き込まれたらしきバンドですが、音はハモンドオルガンをフィーチャーした英国前プログレ風なボスタウン的サウンドという印象です。正式アルバムではなくて、出所不明の謎の抄録コンピでしか聴いていないので断言はできませんが、ボスタウン的冗漫さはあるものの、なかなか悪くない感じでした。
それから、Rockin' Ramrodsの残党が名を変えて、MGM/Alan LorberによってBosstown Soundとして再生されたPuffというバンドもあります。唯一のアルバム(1968)はCD化されていなくて、"The Best of Rockin' Ramrods"というコンピに2曲を除いて収録されているそうですが、残念ながら未聴です。試聴した限りではかなりイイ感じなので、聴けたらまた別の機会に紹介したいと思います。
Bosstown Sound (Part 4)
さて、今回は自信を持ってお勧めするというわけにはいかないけど、個人的にはかなりハマっているというバンドたちです。おそらく、非60sサイケファンには「かったるい」「つまらない」と感じられるような音かもしれません。自分でも、このへんの音にハマるのはかなり病気が進んでるなと思ってしまうのですが・・・。
Front Page Review
このバンドもMGM/Alan Lorber組なのですが、二軍扱いをされて、すでに制作されていた唯一のアルバムの発売が延びるうちにバンドが解散してしまい、1996年に発掘CD化されるまで未発表のままでした。
音は、ドアーズあたりからの影響も見られますが、英国の前プログレ的な香りのするもので、ファズやエフェクトを使っていてもどこか淡白でスカスカ感のある、Bosstown Soundに通底する音です。ほとんど1曲だけですが、Iron Butterflyのような、チープオルガンとファズギターがユニゾンでベタなリフを奏でるという、私の即死ポイントのひとつを攻撃されてしまうので、もうそれだけで降参なんですが・・・。

Front Page Review
Mystic Soldiers
このバンドでギターとボーカルを担当したSteve Cataldoは、1969年にSaint Stevenというバンド(ソロプロジェクト?)のアルバムを制作するのですが、こちらはFront Page Reviewとはかなりニュアンスの違うもので、過剰で分裂気味のエフェクトが散りばめられたSSW風ポップサイケ作品です。それでもやはり英国的な趣きがあるのが面白いところ。
ところで、レココレのサイケ特集号のSaint Stevenの紹介記事の中で、「75年の謎の自主制作盤"One St. Stephen"も、カタルド絡みの音源とか」という解説がありますが、実はこれはまったく関係のないバンド(オハイオ出身)で、レコード会社が似た名前の二つのバンドを混同して、One St. Stephenの音源としてSaint StevenにちなんだFront Page Reviewの音源を発表してしまったことに因ります。というわけで、One St. Stephenの再発盤には、ボーナストラックとして、無関係なFront Page Reviewの"Silver Children"と"Valley of Eyes"の2曲が収録されています。(むちゃくちゃですが・・・。レコード会社からしてこれなので、われわれが同じような名前のバンドを混同してしまうのも無理のないところでしょう。)

One St. Stephen
One St Stephen
Eden's Children
このバンドはABC(Paramount)レコード所属で、たまたま時期と場所がBosstown Soundと重なっただけなのかもしれませんが、音はボスタウンの特徴を濾過して不純物を取り除いたみたいな感じで面白いです。(スカスカ度最高峰!)
リードギターのファズの歪み具合などはボスタウン有数で、USヘヴィーサイケ風の色合いもあるのですが、ペラペラでディストーションされていないリズムギターがジャズっぽいコードを刻んだりして、むしろ「英国ロックの深い森」を散策する人の方が馴染みのあるような音です。よくクリームやエクスペリエンスを引き合いに出して論じられていますが、そんな高級なものではなくて、60~70sの英国マイナー(ハード)ロック(トリオ)のノリに近い感覚です。
CDはドイツのHead Recordsから2枚のアルバム(1968)の2on1(のブート)が出てますが、現在入手困難だと思うので、メジャーな会社から発売されるのを待ちましょう。
Phluph
Verve所属のPhluph(フラッフ)は、ボストンで最初のメジャー(レーベルと契約した)バンドという触れ込みで、やはり誇大広告されたようですが、ボスタウンのサイケ勢の中では最もポップでチャーミングなバンドではないかと思います。
アルバム作品としての出来も上々で、前二者とは違ってこちらは素直にお勧めできるような内容です。しかし、やはりどこか薄幸そうなマイナー感が漂っていて、これも一連のブリティッシュ・ポップサイケと並べて聴いても違和感がないような英国寄りの音がします。なお、CDはイタリアのAkarmaから出ています。

【次回に続く】
Front Page Review
このバンドもMGM/Alan Lorber組なのですが、二軍扱いをされて、すでに制作されていた唯一のアルバムの発売が延びるうちにバンドが解散してしまい、1996年に発掘CD化されるまで未発表のままでした。
音は、ドアーズあたりからの影響も見られますが、英国の前プログレ的な香りのするもので、ファズやエフェクトを使っていてもどこか淡白でスカスカ感のある、Bosstown Soundに通底する音です。ほとんど1曲だけですが、Iron Butterflyのような、チープオルガンとファズギターがユニゾンでベタなリフを奏でるという、私の即死ポイントのひとつを攻撃されてしまうので、もうそれだけで降参なんですが・・・。

Front Page Review
Mystic Soldiers
このバンドでギターとボーカルを担当したSteve Cataldoは、1969年にSaint Stevenというバンド(ソロプロジェクト?)のアルバムを制作するのですが、こちらはFront Page Reviewとはかなりニュアンスの違うもので、過剰で分裂気味のエフェクトが散りばめられたSSW風ポップサイケ作品です。それでもやはり英国的な趣きがあるのが面白いところ。
ところで、レココレのサイケ特集号のSaint Stevenの紹介記事の中で、「75年の謎の自主制作盤"One St. Stephen"も、カタルド絡みの音源とか」という解説がありますが、実はこれはまったく関係のないバンド(オハイオ出身)で、レコード会社が似た名前の二つのバンドを混同して、One St. Stephenの音源としてSaint StevenにちなんだFront Page Reviewの音源を発表してしまったことに因ります。というわけで、One St. Stephenの再発盤には、ボーナストラックとして、無関係なFront Page Reviewの"Silver Children"と"Valley of Eyes"の2曲が収録されています。(むちゃくちゃですが・・・。レコード会社からしてこれなので、われわれが同じような名前のバンドを混同してしまうのも無理のないところでしょう。)

One St. Stephen
One St Stephen
Eden's Children
このバンドはABC(Paramount)レコード所属で、たまたま時期と場所がBosstown Soundと重なっただけなのかもしれませんが、音はボスタウンの特徴を濾過して不純物を取り除いたみたいな感じで面白いです。(スカスカ度最高峰!)
リードギターのファズの歪み具合などはボスタウン有数で、USヘヴィーサイケ風の色合いもあるのですが、ペラペラでディストーションされていないリズムギターがジャズっぽいコードを刻んだりして、むしろ「英国ロックの深い森」を散策する人の方が馴染みのあるような音です。よくクリームやエクスペリエンスを引き合いに出して論じられていますが、そんな高級なものではなくて、60~70sの英国マイナー(ハード)ロック(トリオ)のノリに近い感覚です。
CDはドイツのHead Recordsから2枚のアルバム(1968)の2on1(のブート)が出てますが、現在入手困難だと思うので、メジャーな会社から発売されるのを待ちましょう。
Phluph
Verve所属のPhluph(フラッフ)は、ボストンで最初のメジャー(レーベルと契約した)バンドという触れ込みで、やはり誇大広告されたようですが、ボスタウンのサイケ勢の中では最もポップでチャーミングなバンドではないかと思います。
アルバム作品としての出来も上々で、前二者とは違ってこちらは素直にお勧めできるような内容です。しかし、やはりどこか薄幸そうなマイナー感が漂っていて、これも一連のブリティッシュ・ポップサイケと並べて聴いても違和感がないような英国寄りの音がします。なお、CDはイタリアのAkarmaから出ています。

【次回に続く】